小谷真弥さんは、1983年、大阪生まれ、埼玉県東松山市育ち。
明治大学付属明治高等学校、明治大学の野球部を経て報知新聞社に入社。
2009年からプロ野球を担当するようになり、千葉ロッテ、横浜ベイスターズ、ジャイアンツなどを歴任し、2015年から北海道日本ハムファイターズ、そして2017年からメジャーを担当。
現在は、野球専門Webメディア「Full-Count」に所属し、大谷翔平選手の番記者として最新情報を届けてくださっています。
──2015年から大谷翔平選手を見ている小谷さんには、大谷選手の成長はどのように見えていらっしゃいますか?
本当に年々進化していますが、最近は進化の度合いがすごいというか、出来過ぎじゃないかなと思います。
──この番組でも、2016年にキャンプ取材で大谷選手にインタビューをさせてもらったことがあるんですが、その時に、「ダルビッシュ選手とトレーニングをして10キロ体重を増やした」みたいなお話を伺ったんです。今から考えたら、エンゼルスに入った時でさえ、まだ細いじゃないですか。“人間の体ってどこまで成長できるんだろう?”みたいな気持ちになりますよね。
当時の写真を見るとちょっと驚くぐらいですね。
囲み取材で結構近くに寄る機会があるんですが、今は“肩にメロンが入ってるんじゃないか”と思うくらい大きいですね(笑)。
──日ハム時代から、そういうフィジカルのトレーニングを積極的にやっていたんですか?
やっていましたね。大谷選手は一貫してフィジカル強化というものを頭に入れていて、10年先を見据えてトレーニングをしていました。
──大谷選手は、シアトルにあるドライブライン(ドライブライン・ベースボール)という運動能力を向上させるトレーニング施設には、いつごろから行っていたんですか?
おそらく、2021年くらいからですかね。やはりバッティングもかなり変わっていったので、そのあたりからかなと思います。
──大谷選手の発言からも、バッティングに対する考えというかアプローチの仕方は変わっていったんですか?
元々、ホームランバッターというか、長打を打てるタイプであることが持ち味なんですけれども、その確率をしっかり上げていっているなという印象はあります。
去年はリーグ打率2位で、三冠王まであと少しだったんですが、最初にホームラン王争いをしていた2021年の時は打率がかなり低かったんです。ただ、確実性をどんどん上げているので、バッティングの進化というのはそこかなと思いますね。
──アメリカのデータ分析はものすごく進んでいて、“打ったらすぐにタブレットを見て確認する”みたいになっていますが、大谷選手はインタビューで「数字は追わない」というようなお話をされていますよね。
そうですね。やっぱり感覚というものをかなり大事にしているところはあるみたいですね。
──より打球速度が速くなったり?
やっぱり打球速度が速いと内野の間を抜ける確率は高くなると思うので、そのあたりのことを頭に入れてのフィジカル強化や筋肉トレーニングなのかなとは思います。
──今年はピッチャーとして復活するわけじゃないですか。そうすると、そこに割かなくてはいけない時間もあるでしょうし、把握しなければいけないデータ分析もあるでしょうから、やはりバッティングの成績は昨シーズンほどの数字は残せないんでしょうか。
やはり盗塁数に関しては減るとは思うんですけれども、そのあたりについて大谷選手に聞いたら、「投手をやる中でもチームの勝利が一番大事なので、走れる場面はしっかり走りたい」という話をしていました。“ピッチャーをやったから成績が下がった”ということには絶対にしたくないだろうなと思います。
──日ハム時代は、育成的な観点からピッチングの前後はあまり試合に出なかったりしましたよね。それが、アメリカに渡って体ができて、ということもあるでしょうが、ここまで投げて打っての大活躍を想像できていましたか?
できなかったです。日本ハム時代は登板日の前後は休みにしたりしていたので、今まで通算成績、例えば通算100本塁打、200本塁打、300本塁打などを考えるようなことはあまりなかったんですが、(メジャーへ移籍して)登板日前後の試合に出るようになって、見ている側としてはそういう記録も楽しめるので、今後も記憶だけじゃなく記録でも楽しませてくれる選手だと思います。
──すごく気になっているのが、日本はいま“大谷ブーム”じゃないですか。だから大谷選手の情報がほしくて、ありとあらゆる選手や関係者に「大谷選手はどうだい?」と聞くと思うんですけれど、(相手側は)“この質問を何百回も聞かれているんだろうな”と。取材をされていてこの質問をしなければいけない時はいかがですか?
「すみません、日本のメディアなんですけど」というようなことは伝えますね。例えば(ヤンキースの)ジャッジ選手は本当に人格者というか、(大谷選手のことを)聞いてくることはわかってくれていると思うんですが、日本のメディアにも丁寧に応じてくれるので、1回取材すると大ファンになっちゃいます。
ジャッジ選手は人格者ですね。“さすがヤンキースのキャプテンはこうなんだな”と。
大谷選手がすごいのは、大谷選手について話す選手みんなが嬉しそうなんですよね。誰もが想像できないような成績を残しているので、みんな大谷選手について(積極的に)話してくれるんです。だから、質問が重なっても、大谷選手に関してはそこまで嫌な顔をされることはないかなと思います。
──今後、二刀流の選手が増えるのかもしれないですけれども、あそこまで投打両方で活躍ができる選手はなかなか現れないだろうなと思います。
毎年毎年、メジャーの中でも二刀流で指名を受ける選手はいるんですが、結局今年も、キャンプではどちらかに専念ということになっていたりするので、逆に大谷選手がハードル上げているのかなという感じもします。
──あとは、(メジャー挑戦を表明していた)大谷選手をドラフトで日ハムが強行で指名したけれども、そこで初めて日ハム側から「二刀流でどうだ」という提案がなされて、日ハムがその道(二刀流)へ導いてあげたということもとてつもなく大きいことだと思います。
大きいことだと思います。日本ハムがなかったら、おそらく高卒でドジャースにピッチャーとして入っていたと思うんです。当時のドジャースの評価はピッチャーとしてでしたので。
ただ現在、バッターとしてもとんでもないので(笑)。「次にもし手術することになったら打者に専念かもしれない」という話を大谷選手もしているぐらい、バッターとしてもすごい才能があります。
──でも、ピッチャーとしてサイ・ヤング賞を獲る姿をやっぱり見たいです。
やってくれると思います。大谷選手は花巻東高校の時からずっと「目標設定シート」というものを書いていて、そこに「サイ・ヤング賞」とはっきり書いてあるので、今シーズンはちょっと難しいかもしれないですけど、そこを目指していくと思います。
──今シーズンは肩の手術もあったので、デーブ・ロバーツ監督が「3月時点でピッチャーとして復活は難しい。あるとしても5月以降だ」みたいなコメントをしていましたね。
来シーズン以降、必ずそこが目標になってくるのかなと思いますね。
──楽しみがどんどん続いていきますよね。シーズンの話が出てきましたけれども、2025年のMLBレギュラーシーズンが、日本時間3月18日に日本で行われる『MLB東京シリーズ』で開幕します。このシリーズでは、大谷翔平選手のロサンゼルス・ドジャースとシカゴ・カブスが、他球団に先駆けて開幕戦を行います。夢のカード!今永昇太投手が1年目で、ものすごいピッチングでしたよね。
今永昇太投手もすごいですし、鈴木誠也選手もリーグを代表するぐらいの成績なので、大谷選手がいなかったらもっと大きく報じられてもおかしくないですよね。
──小谷さんは取材をされるんでしょうか?
取材に行く予定ではあります。
──ドジャースは山本由伸投手も加わりましたけれども、シーズン途中で怪我での離脱がありましたよね。現在の山本選手の状態というのは?
現在は良い状態なのかなと思います。大谷選手は、今年は投球イニングが短いのでないかもしれませんが、山本投手に関しては、昨年のポストシーズンにあれだけのピッチングを見せてくれたので、今年はサイ・ヤング賞を狙えるようなシーズンになるかと思います。
──楽しみですね。大谷選手ですが、ドジャースと10年間の契約を結んでいるわけじゃないですか。(小谷さんも)あと9年は日本に帰って来れませんね(笑)。
できれば私も頑張りたいなとは思っているんですけど、そればかりは何とも言えないので(笑)。
──やっぱり大谷選手の活躍は最後まで見続けていたいでしょうね。
本当に、毎日が歴史なので毎日楽しいです。本当に“幸せだな”と思いながら仕事をさせてもらっています。
──この番組では、ゲストの方にCheer Up Songを伺っています。今週も、小谷さんの心の支えになっている曲を教えてください。
米津玄師さんの「アイネクライネ」。
2022年当時、エンゼルスのレギュラーシーズン最終戦だったと思いますが、その試合前に大谷選手が聴いていた曲です。
オークランドの球場で、我々が取材を終えてエレベーターを待っている間に、ちょうどトレーニングルームが目の前にあって、そこから日本の曲が聴こえてきたんです。“何だ?”と思って覗いたら、そこで大谷選手がすごい表情をしながら試合前の準備をしていて、その表情もカッコいいなと思いましたし、でもそれでも聴いているのはバラードなんだと思って(笑)。普通、試合前だったらもっとテンションを上げる曲を聴くだろうなと、勝手にそんなイメージを持っていたんですが、こういう曲を聴いているというのはかなり意外で印象に残っていたので選びました。
──その表情は、“鬼気迫る”という感じですか?
大谷選手はいつも「バッターの時は緊張しない」と言うんですよ。ただ、ピッチャーの時は、試合前にかなり(気持ちが)入り込むんですね。やはりチームの勝敗の責任はピッチャーが一番大きいと思うので。
ただ、その時の表情が本当にカッコよくて、“野球っていいな”と思う瞬間でもありました。試合開始50分前ぐらいだったと思いますが、本当に貴重な瞬間でしたね。

今回お話を伺った小谷真弥さんから、ロサンゼルスのお土産として、ロサンゼルス・ドジャースの大谷選手記念グッズ MLB史上初50/50達成記念、3度目のMVP受賞記念ボールを、抽選で1名の方にプレゼントします。ご希望の方は、番組公式X(旧ツイッター)をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひお聴きください!