柿谷曜一朗さんは、1990年、大阪府出身。
Jリーグのセレッソ大阪下部組織で育ち、16歳でクラブ史上最年少プロ契約を結び「ジーニアス」と称されるプレーヤー。
2014年のブラジルW杯メンバーで、2025年1月に現役を引退。
現在は解説者やアンバサダーとして活動されています。
──さあ、柿谷さんといえば、高いテクニック、そして創造性で得点に絡むプレーが注目され、2014年のワールドカップブラジル大会に出場されていますが、やはりサッカー選手にとってワールドカップというのは大事な大会なんでしょうか。
そうですね。とにかく雰囲気に飲まれてしまったことが一番後悔しているといいますか、準備不足だったなと思いますけど、子供の時から憧れていた舞台に立った瞬間はすごく特別な思いもありました。
ただ、状況が状況だったので、“何とかしてやろう”という気持ちはありましたが、なかなか僕が入ることでどうこうはできなかったですし、やっぱりこのワールドカップという舞台で自分が活躍するイメージをもっと持っておけばよかったなと思いましたね。
──ブラジルといえばサッカーの王国ですから。
雰囲気もやっぱりワールドカップはすごくて、今まで経験した試合の中でも、なんだろう…試合中のことが全然思い出せないぐらいあっという間に試合が終わってしまったという感覚です。
──そして、そのワールドカップが今年の6月11日からカナダ、メキシコ、アメリカ合衆国の3カ国で開催されます。 日本代表は世界に先駆けて出場権を獲得しましたが、今の日本代表は、柿谷さんからご覧になってどうですか?
選手自身が「優勝」を目指して戦っている上で、今までだと、“いやいや優勝なんて…”とみなさんは思っていたと思うんですけど、あながち(優勝を目指すことが)嘘じゃないなといいますか、強豪国にしっかり勝てるようになりましたし、1人1人のプレーしている環境もそうですが、基本的にはヨーロッパでプレーしている選手たちばかりなので、史上最強と言ってもおかしくないと思っています。さらに、森保さんが8年かけて準備してきているので、そこの強みは他の国とは少し違うんじゃないかなと思います。
──長期政権の良さも見えている?
そうですね。選手が変わったというよりは、既存のメンバーたちがどんどん成長していく中でチームを強くしていっているので、今回のワールドカップはかなり選手自身も期待しているんじゃないかと思います。
──“やってやろう”というか、“世界を驚かすことができるんじゃないか”と選手自身も手応えを感じている?
はい。“俺らだったらできるんじゃないか”という、気持ちもそうですし、僕はプレーでそう感じています。
──前回のワールドカップカタールの前でしたか、選手から“チームとして約束事が少ない” という話が少しあって、“森保監督はモチベーターとしては良いけれど、戦術面はどうなんだ”みたいな声もちらほら聞こえてはいましたけれども…。
そうですね。しかもスペインとドイツが同じ組でどうなるんだろう、みたいな空気の中で、やっぱりサッカーIQが高い選手ばかりなので、ピッチの中で自分たちで相手に合わせてポジションも取れますし、プレーも変えていけたんじゃないかなと思います。
だから、森安さんが“こうしよう、ああしよう”というよりは、ピッチレベルで選手たちがどう感じるか、というところがあったと思うんです。それが、スペインにもドイツにも勝てた。でも、対コスタリカでは引いた相手に崩しきれなかった。そこを4年間、選手がすごく意識するようになった。
前回のイングランド戦の前のスコットランドとの試合で、急遽フォーメーションを攻撃的にした中で、選手たちが1人1人そういう意識をもって試合に臨んで点を獲れたということはまた自信になったと思いますし、戦術やフォーメーションはもちろん監督が提示しますけれども、その上で彼らが相手をどう超えていくか。そこは選手1人1人ができるようになったんじゃないかなと思うので、あとはもう、(監督が)モチベーターとしてどれだけ選手のコンディションとやる気を出せるか、というところかなと思います。
──やはり、世界の強豪国と戦う時には守備の時間が長くなるというか、カウンターを狙うことになってくるんでしょうか。
くると思います。ただイングランドとの試合で、ボールポゼッション率がおそらく7対3ぐらいだったので、最悪6対4ぐらいに持っていければ、あんなにセットプレーを取られることもなかったと思います。
──やはり失点のリスクが高まってしまう。
“守る”というよりは“自分たちがボールを握って相手の攻撃の時間を減らす”という作業は必要かもしれないですね。
──さて、前回2022年のカタール大会はシーズン中ということもありまして、いわゆる事前合宿の期間がほとんど取れずにいましたが、今回は日本で集まり、5月31日にアイスランド代表と東京で壮行試合を行い、その後、メキシコのモンテレイでの事前合宿を経て、ベースキャンプ地のナッシュビルで本大会に備えることになっております。 今Jリーグも大きく変わろうとしていて、ヨーロッパと同じ時期に開催すると。それで今回は事前合宿が海外リーグの休み期間中になるということで、日本で集まることができるということですか?
そうですね。まず日本で10日間ぐらいかな、しっかり準備期間があります。
やっぱり、“準備できたから良い結果が出る”とか“準備できなかったから駄目だった”というのは、言い訳だと思うんです。中2日で試合しているメンバーもいますし、長い距離を移動して試合しても良いプレーができるメンバーもいます。そういう選手はそれまでの準備が良いので、そこを言い訳にしないとは思いますが、でもやっぱりこれだけ準備ができる時間があることで、例えばセットプレーとか、試合を分けるちょっとした瞬間のところをうまくかみ合わせることができると思うので、そういった意味ではこういう時間はかなり大事だと思います。
──柿谷さんが合宿に行かれていた頃も、セットプレーの練習はしていましたか?
そうですね。こういう大きい大会になればなるほど先制点で一気に勢いづくので、基本的にセットプレーがその最初のプレーになったりしますし、かなり準備はしていました。方法や約束事というのは多すぎても覚えきれないので、自分たちが“これでいこう”と決めたものを何回も何回も反復で練習していましたね。
──何種類ぐらい用意するものなんですか?
多くて5ぐらいじゃないですかね。でも基本的には2か3だと思います。
あと、一番最初のコーナーキックとか一番最初のフリーキックは“これをやろう”というものを必ず決めると思います。
──その方が迷いがなくなるということですか?
そうです。1回目か2回目まではちゃんと決まっているんですけど、3回目4回目以降は結構選手のフィーリングといいますか、その場の感覚でやってしまったりするので、そうじゃなくて、3回目4回目もしっかり自分たちの準備したようにやろう、というところをしっかり練れると思うんです。その時間は大事にしないといけないなとは思っています。
──事前に戦う相手の情報はあると思いますが、いざピッチに立って対面した時に、“あれ、やっぱり違う”みたいなことは?
めちゃくちゃあります(笑)。コーナーキックを蹴る時にバツをするとか、“何かやめとこう”みたいなジェスチャーをしているところ、見たことはないですか?
──“戦術を変える”みたいなことですか?
“やろう”と思っていたところに人を立たせた時に、相手が(こちらの戦術を)理解して、そこに人を立たせてきたりするんですよ。
練習している時は、基本的には仲間内でやるじゃないですか。相手チームもチームメイトじゃないですか。それを試す時に、ある程度(あまり妨害せず作戦通りに)やらせるんですよ。
──わかっているけど、逆にわかっているからこそ潰しに行ったら練習にならないということですよね。
だから、それは監督も「わかってるからそこに行けるんだろ」とめちゃくちゃ怒るので(笑)。
でも、相手チームはそれを読み取ってくる選手もいるので。
──もうバレちゃっている場合があるということ。
その時はバツとかして、とにかく違うものにしたり、そういう時の“ノーマルで行く時はこういうふうにやりましょう”というところも多分準備していると思うので、状況によって(戦術を)変えることはやっぱり必要ですね。
──どんなセットプレーを練習するのか。
日本代表の今回のワールドカップのセットプレーはめちゃくちゃ楽しみです。特にオランダ戦はめちゃくちゃ鍵になると思うので。
──逆に、柿谷さん的に、どんなセットプレーを仕掛けてくるのかというところはどうですか?キッカーとしては久保選手とかになる?
そうですね。久保選手になると思いますし、やっぱり背が大きい選手が多いので、シンプルに競り合いをしても勝てないと思うんですよ。あと、オランダの弱点じゃないですけど、ちょっと揺さぶられた時に、クロス対応がよくない。ファン・ダイクも、もちろんその場のヘディングは強いですけど、後ろから来られたりすると結構マークは外しがちなので、少しボールを動かして、選手もどんどん動いて、高いボールというよりはオランダの選手の前に入っていくような…そのまま蹴るとしてもニアに蹴って、みんなが前に行ったところで、1人一番最初に動いた選手がちょっと後ろにフリックする。となると、多分、オランダの選手はなかなかついてこれないと思うので、そういうところは準備しているんじゃないかなと思います。
──ワールドカップ本大会で日本代表は日本時間6月15日にオランダ、21日にチュニジア、26日にスウェーデンとグループステージで戦うことが決まっています。 さあ、この番組は毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。柿谷さんの心の支えになっている曲を教えてください。
サスケの「青いベンチ」です。
──こちらの曲を選ばれた理由というのは?
“青春”といえばこの曲で、一番聴いたんじゃないかなと。中学校の時ですね。おそらくまだMDの時ですよね。「青いベンチ」が入っているMDをみんなで取り合いしていたイメージもありますし、「青いベンチ」が聴けるMDを持っている人がモテてたぐらいまであるので(笑)。
──この曲を知るきっかけは?
僕が中学1年生の時だったと思いますけど、中学3年生のお兄ちゃんたちとサッカーをしていたんです。やっぱりお兄ちゃんたちは音楽とかに敏感で、僕はまだ小学校から上がりたてであまり音楽を聴くということをしていなかったんですけど、ヘッドホンやイヤホンをつけて聴いているお兄ちゃんたちがかっこいいなと思ったので、一緒に聴かせてもらう中で、みんなこの曲を聴いていて。
──サッカー選手必聴の曲だったんですね。
これはもう本当に青春。学校でももちろんみんな聴いていましたし、とにかく聴いていない人がいなかったぐらい。カラオケに行ってもこの曲が最初。これ歌われへんかったらもうカラオケに連れてってもらえへん、ぐらいの(笑)。
──柿谷さんもこの曲はカラオケで歌ったんですか?
みんなで取り合いなんですよ。カラオケで同じ曲を入れるってあまりないじゃないですか。だから、“この曲を最初に誰が入れるか”みたいな。もうドアを開けて入った瞬間にみんなこれを入れるという(笑)。
来週も柿谷曜一朗さんにお話を伺っていきます。 お楽しみに! 今回お話を伺った柿谷曜一朗さんのサイン入り色紙を1名のリスナーにプレゼントします。 ご希望の方は、番組公式X をフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。 また、4月から新たにポッドキャストのコンテンツとして始まった『SPORTS BEAT supported by TOYOTA Mixed Zone 』。 こちらは、radikoなどの各種ポッドキャストサービスでお楽しみいただけます。 聴き方など詳しくはTOKYO FMのトップページ をチェックして、そちらも是非、お聴きください!