吉井理人監督は、1965年、和歌山県ご出身。
現役時代は投手として、近鉄バファローズとヤクルトスワローズで3度のリーグ優勝、2度の日本一を獲得。
メジャーリーグでも3球団でプレーし、現役を引退してからは3球団でコーチを歴任し、日本代表の投手コーチとしては2023年のWBC優勝に大きく貢献。
2023年から千葉ロッテマリーンズの監督として現在も活躍されています。
──吉井監督といえば音楽がお好きと伺ったんですけれども、ただ聴くだけではなく、ご自身がプレーされる?
そうですね。高校生までですけれども。
──楽器はちなみに何を弾かれるんですか?
ギターを弾いています。ギターと、バンドではみんなチェンジしてやっていたので、ベースもドラムも一通りできます。一応ですよ(笑)。
──2023年のシーズンに、小島(和哉)投手に「音楽に例えるなら楽譜を綺麗に弾いているだけの投球に感じる」というアドバイスをなさったと。
小島は性格的に結構きっちりやりたいタイプなんです。ちょっとの失敗、ミスも嫌な選手なので、それは多分、ゲームになったらマイナスの方に行ってしまう。だから、「そこはもうノリで、少々外れてもいいから勢いで行った方が結果が良くなるよ」というアドバイスだったんですけれども、例えが悪かったので、もしかしたら彼には響かなかったかもしれない(笑)。
──(笑)。吉井監督は、以前この番組にゲストで来てくださった工藤公康さんらと一緒に(2014年に)筑波大の大学院に入られましたが、これはいわゆるコーチングの勉強をされたということですか?
そうですね。コーチになった時に、本当に何をしていいかわからなかったんです。コーチや監督にされて良かったこと、悪かったとことを書き出したら、良かったことがほとんどない、悪かったことばかり出てきたでんすよね(笑)。
それで“コーチングって何だろう”ということをずっと考えていて、ファイターズに5年いたのかな? いい感じでキリが良かったので、ちょっと1回勉強しようと思って(筑波大大学院に)行きました。
──そこで習ったことで、「コーチングとはこういうことだ」と腑に落ちた部分はあったんですか?
ありました。“大体こうだろうな”とは思っていたんですけれども、それを確信するようなところはありました。
やっぱり選手は個人個人で感じるものも考え方も違うので、コーチ発信でコーチングするにも、選手がどう思っているのかはしっかり聞いて、それに合わせてコーチングするのが本当のコーチングだなと、そこで確信しましたね。
──監督の出されている『最高のコーチは教えない』という本がありますが、僕、びっくりして思わずアマゾンでポチっと買ったんです(笑)。
ありがとうございます(笑)。
コーチが持っている技術を選手に伝えるのも1つの手ではあると思うんですが、その選手が“やりたい”と思うように持っていくことですよね。選手自身が決定して“これをやるぞ”となれば選手のモチベーションにも繋がってきますし、そうなると、こちらが教えても選手の中に(指導が)入ってくるんです。頭ごなしに言っても何も入ってこない。そういう意味で「教えない」ということで、結局教えてはいるんですけれども(笑)。
──(笑)。そして2021年からは野球の日本代表・侍ジャパンの投手コーチもされていました。感動的な世界一になったあの時(2023年)は、ロッテの監督としての初年度でもありましたよね。いわゆる“二刀流”といいますか、大変だったんじゃないですか?
楽しかった方が多いかな。(ロッテの)監督をお願いされる前に侍ジャパンのコーチをお願いされていたので、“これは絶対にやりたい”と思ったので、球団に「(侍ジャパンのコーチを)やらせてください」と無理を言って。そうしたら、「いいよ」と言ってくれたんです。選手たちのおかげですごく楽しい経験をさせてもらいました。
──やっぱりピッチャー陣がものすごく充実していたし、日本のピッチャーが世界に通用するんだということを知らしめた大会になったと思うんですけれども。
まず、選手を選ぶところから楽しかったですね。栗山監督に「選ぶのを任せるよ」と言われてリストを上げたんですが、その時に“メジャーで通用するだろうな”という選手をいろんな角度から調べて選んだんです。
──日本の中でベストというよりは、“対アメリカ”や“対世界”で通用するだろうということに重きを置いて、選手を選ばれた?
そうですね。最終的に決めたのは栗山監督なんですけれども、リストを作ったのは僕だったので、“これなら世界一になるな”というのは、メンバーが決まった時にもう確信がありました。
──とはいえ、予選は圧勝しましたけれども、もう負けられない決勝トーナメントで、メキシコ戦とかしびれる試合がありましたよね。
そうですね。あの時、当時マリーンズにいた佐々木朗希が先発で打たれてしまったのでちょっとやばいなと思ったんですけれども、メキシコチームのリリーバーもだんだん悪くなっていくのはわかっていたので、多分、侍ジャパンのバッターたちならひっくり返すだろうと思っていました。
──そして決勝がアメリカ相手でしたが、今永昇太投手が先発するという。昨シーズン、シカゴで本当に素晴らしい活躍を見せましたけれども、その今永投手がその時ブルペンで1球もストライクが入らなかったという状況は、吉井監督は知っていたんですよね。心配はありませんでしたか?
もちろん知っていました。ピッチャーはそういうことはよくあるので、全然大丈夫でした。彼らはもういろんな経験をしているので、マウンドに立つと違うものが出るんですよ。
──最後8回がダルビッシュ投手、そして9回が大谷翔平選手が登板という。まさに夢のような継投策でしたよね。
あれは栗山監督が「こうしたい!」と現場に言ってきたので、監督がプロデュースした演出だと思います。
──そして、ロッテの監督に就任されたわけですけれども、それまでピッチングコーチとして、そしてピッチングコーディネーターとしてロッテと関わっていましたが、監督になられてからこれまでとの違いはありましたか?
ありました。やっぱり全体を見なきゃいけないので、ピッチングコーチとは仕事の内容も全然違いますし、勝敗の責任も全部かぶらなきゃいけないので、もうこれは大変な仕事だなと思いました。
──今、アメリカの野球が先に科学的に変わっていっていますが、日本のプロ野球もデータ重視と言いますか、科学的なものに変わっていっているんですか?
今ちょうどそれをやっているところなんです。ただ、アメリカも、科学に偏りすぎるとうまくいかないということがわかってきて、昔ながらの技術とうまくミックスしてやるというやり方に変わってきているんです。
だから、日本も失敗しないように、そこはうまく、昔ながらの方法と今の科学をしっかり(組み合わせてやっていく)。まあ、野生の勘と科学ですよね(笑)。これをうまくミックスさせたいなと考えています。
──監督の著書の中で、今シーズンからメジャーに移籍しましたけれども、「佐々木朗希投手はあまり筋肉をつけることに積極的ではない」というような描写がありました。
そうですね。彼の一番の武器が関節の柔らかさ。可動域がすごく広いので、筋肉をつけるとそれが狭くなっちゃうんじゃないかと彼は思ったみたいで。ただ、プロで生活していくうちに筋量も大事だということがわかってきて、トレーニングをして、(今は)ああ見えても結構筋量があるんです。
やっぱり、上半身にはあまり積極的には(筋肉を)つけたくないというピッチャーは多いんですよね。
──去年のファン感謝デーですか、佐々木朗希選手の移籍に関していろいろな意見がある中、ものすごく温かい言葉でファンの前で発言する機会を与えていて、“ああ、監督は優しい方だな”と思いました。
自分がやっぱり若くして(メジャーに)行きたかったので…。メジャーに行ったのが33歳になる年だったんですかね。なので、プライムタイムで一番脂が乗った時期にメジャーで投げていないので、“チャンスがあるならやらせてあげたい”ということはどの選手にも対しても思っています。
──吉井監督がピッチングコーチとして行かれたドジャースに入ったということで、“安心して預けられる”みたいな思いはありますか?
そうですね。ドジャースも育成のシステムがしっかりしているので大丈夫だと思います。故障は多分するとは思うんですけれども、故障したとしても、ちゃんと復帰させるプランも持っていますし、大丈夫だと思います。
──今シーズンは日本で開幕戦がありますが、そこで早速投げさせるとロバーツ監督が言っていましたけれども、どんな投球をしてくれるのか。
そうですね。楽しみです。
──監督は「選手の主体性を伸ばしたい」と本に書かれていましたけれども、その“主体性”は選手の中で浸透してきていると感じていますか?
この2年間でかなり自分で考えてできるようになってきているかなとは思っていますが、まだそうではない選手もいるので、引き続き…特にコーチ陣ですね。さっきも言いましたけど、口を出さずに選手の考えを引き出すというのは難しいので、コーチ陣にもしっかりスキルアップしてもらって、引き続きやっていきたいなと思っています。
──さあ、この番組は毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。吉井監督の心の支えになっている曲を教えてください。
ビートルズの「Hey Bulldog」。
これは大好きな曲で、ジョン・レノンがリードボーカルをやっているんですけれども、イントロがカッコいいんですよ。
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