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2025.08.30

日本人選手の海外挑戦「その経験は間違いなくプラスになる」

今週の「SPORTS BEAT」は、男子バレーボール元日本代表、越川優さんのインタビューをお届けしました。
越川優さんは1984年生まれ、石川県のご出身。
両親共に元バレーボール選手という環境で育ち、先にバレーボールを始めていたお姉さんを追いかける形で自身も競技を始めます。
高校時代には、男子では高校生初の日本代表入りを果たし、卒業後はVリーグ「サントリーサンバーズ」へ入団。
2006年にはチームとして初となるプロ契約を結び、チームの優勝に貢献し、個人でもMVPを受賞。
日本代表としても、2008年の北京オリンピックに出場。
2009年からはイタリアのプロリーグで活躍された後、2012年にVリーグに復帰。
また2017年から東京オリンピックを目指してプロビーチバレーボール選手に転向するも、コロナ禍の影響などもありインドアへ復帰。
2022年に現役を引退され、現在はバレーボールの普及や解説、後進の育成などの活動をされています。


──男子バレーボール日本代表は、一時期オリンピック出場がかなわないような時代もありましたけれども、東京オリンピックでは29年ぶりとなるベスト8進出、そして去年2024年、ネーションズリーグでは銀メダルを獲得。目覚ましい躍進を遂げていますけれども、やはり今のバレーボール男子は強くなっていますか?

なっていますね。こんなことを自分で言うのも何ですが、自分はすごく苦しい時代の代表でした。そこからまた最後にキャプテンをやらせていただいて、その後の若い選手たちがすごく頑張っていろんな経験を積んで、今の日本代表に良い影響をもたらしてくれているので、すごく頼もしいチームですね。

──早くからイタリアに渡ってチームのエースとして活躍していた石川祐希選手が日本代表を牽引しているという、その影響力は大きいんでしょうか。

めちゃくちゃ大きいと思います。彼が初めて日本代表に入った年が、私が最後に日本代表のキャプテンをやらせてもらっていた年だったので、彼とも1年、1シーズンだけ一緒にプレーしているんですが、彼がまだイタリアに行く前だったので、(自分の)イタリアでの話とかもよくしていたんです。彼が大学時代から海外挑戦をして今もずっとイタリアリーグでプレーしているというのは、日本人選手にはこれまでいなかった存在ですし、その経験が間違いなく日本代表にプラスになっていると思います。

──石川選手に刺激を受けて海外に挑戦する選手も増えましたよね。

めちゃくちゃ増えましたね。若い選手が経験を積むために、海外リーグへ1年ほどレンタル移籍してプレーできるシステムを、石川選手たちが筆頭になって構築していったということもあって、すごく行きやすい環境ができてきたというところはあると思います。

──やはり海外組が増えると、日本代表に対する影響、変化というのはあるんですか?

間違いなくあると思います。やはり世界戦で戦っていく中で、名前の知られた選手、他国の選手たちが知っている選手が1人でも多くいるということは、それだけ注目を集めますし、警戒もされます。特にイタリアの場合は、一緒に戦っている選手が多くいるので、「この選手はこんなにすごいんだ」という情報がどんどん、特にヨーロッパでは回っていきますし、そういった意味で日本というチーム全体が注目されるようになると思います。

──イタリアのセリエAでは世界的な選手がチームメイトだったりするわけですし、リーグで戦う相手、よく知っている相手と国際大会で日本代表として戦うというと、それまでの戦い方とはまたちょっと違う戦いになるのかもしれませんね。

そうですね。それぞれのチームで戦うのとそれぞれの国の代表で戦うというのはもちろん違いますが、私たちの時代で言うと、日本のリーグは(同時にコートに立てる)外国人枠が1だったんですが、今のSVリーグは増えていますし、そういった意味で日本のリーグのレベルも上がってはいるんです。でもやはり、海外でプレーするというのは常に国際大会のレベルでプレーできるということなので、その経験はすごく大きいと思います。日本のリーグだけでやっていると、国際大会に出た時にすごくレベルの高いものに感じてしまって、そこに慣れるところから始めないといけない。でも、海外組が増えれば普段からの経験値が高くなるので、1年間同じレベルで戦える。そういったところもすごく大きいと思います。


──越川さんも2008年の北京オリンピックの後、イタリアに渡ってプレーされましたけれども、想像通りだったところ、想像と違っていたところはありましたか?

もっと選手の個々の能力で戦っている部分が大きいのかなと思っていましたが、想像よりも、日本より緻密なバレーをしていました。そこに一番驚きましたね。
身体能力は日本人より高い選手が集まってはいるんですけれども、どちらかというと技術力は日本人の方が上なんです。なので、やはり組織をしっかりしていかないとそれぞれの能力を生かせない、というところにたどり着いたのだと思いますが、めちゃくちゃ日本より細かかったです。

──言葉の方はどうでしたか?イタリア語?英語?

イタリア語です。最初1年目は全く喋れなかったですし、英語もそれほど喋れなかったので、結構大変でストレスがたまりましたね。

──でも当然チームメートと交流もしなければいけないでしょうし、試合中の指示も含めて理解しなきゃいけないわけですよね。

そうですね。ミーティングの映像とかを見ていれば言っていることが何となくわかるんですけど、それがなくて監督やチームメイトがひたすら喋っている時は全くわからなかったので、電子辞書を持っていって、言っていることをノートにカタカナでバーっと書いてメモして、それを後で調べるんです。なので、ミーティングの1時間後とかに内容を把握するという時差がありました(笑)。

──海外、イタリアだけではない選手の中でコミュニケーションを取る秘訣みたいなものは見つけられましたか?

最初はやはり、言葉も伝わらないというかわからないし、何と言っていいかもわからない、というところでちょっと引き目なところはあったんですけれども、そうすると使ってもらえないんですよね。戦術もわかっていない、コミュニケーションも取れない。だから、試合で頑張ってプレーはしているんですけど、チームが求めるプレーじゃなかったりしたみたいなんです。そこに気づいてからは、間違ってもいいから自分から発信するということを心がけるようになりました。そうしたら、「それはそうじゃないよ」と教えてくれたり、逆に、「こう思っているんだけど」ということを片言の英語とイタリア語を使って伝えていくことで、相手も“何か言いたいんだろうな”ということに気づいてくれて、説明してくれたり。みんな根はすごく優しいので、そうやって自分からアプローチするといろいろ助けてくれましたね。

──今後、やっぱり海外に挑戦していく選手は増えていくんでしょうか。

間違いなく増えていくと思います。今は北米のリーグやアジアのリーグもすごくレベルが上がっていて、実際にそこに今チャレンジしている選手はたくさんいるんです。なので、そういった選手にもフォーカスが当たるようになればいいなと思いますし、レベルの高い選手たちが、1年、2年という短期間でもいいので海外で挑戦できれば、その経験は間違いなくプラスになると思うので、どんどん行ってほしいなと思います。

──各地域というか、リーグによってバレーボール自体が違ったりするんですか?

全然違いますね。ヨーロッパの中でも、イタリア、フランス、ドイツ、ポーランド、ロシア、トルコとたくさんレベルの高いリーグがあるんですが、それぞれの国のリーグによってバレーのスタイルが全然違うので、その選手に合った、求めているバレーボールを選んで行くこともできますし、いろいろと勉強、経験できるものも違いますので、そこの選択肢は本当に広がっていると思います。

──いろんなバレーボールがあればあるほど日本代表は強くなっていきそうな気もしますし、逆に日本代表自体も、監督が海外の方になったり、日本らしさ、日本のバレーボールというものもどんどん変わっていっているのかもしれませんね。

どんどん変わっていっていると思いますし、日本の選手のタイプも昔と比べて変わってきているなと思います。ただやはり、日本人が世界で勝っていくために必要なもの、中心となるものは変わっていないと思いますし、そこに上乗せされているものは今すごく増えてきている感じはしますので、その大事なもののまわりに何をつけていくか、という選択肢は増えていて、どんどんそれが良くなっていくんだろうなと思います。

──この番組は毎回ゲストの方にCheer up spngを伺っています。越川さんの心の支えになっている曲を教えてください。

いきものがかりさんの「今走り出せば」です。
この曲は、それこそイタリアに行っている時にすごく聴いていた曲で、イタリアにいる時は、50%ぐらいいきものがかりさんの曲、あとの50%は他の方の曲、みたいな感じでした。自分の当時の心の中を表してくれる曲が多くて、そういった中で、「今走り出せば」はすごく気持ちを前向きにさせてくれる曲で、イタリアで頑張るパワーになっていましたね。


来週も越川優さんにお話を伺っていきます。お楽しみに!



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そして今回お送りしたインタビューのディレクターズカット版を、音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
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