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2026.06.13

最後の舞台を終え「気持ちよく一歩踏み出せた」 引退後の姉妹の距離、そしてこれからの挑戦

今週の「SPORTS BEAT」は、先週に引き続き、スピードスケートのオリンピックメダリスト、髙木美帆さんにお話を伺っていきました。
髙木美帆さんは1994年、北海道のご出身。
5歳からスケートを始め、2010年冬のオリンピック・バンクーバー大会でスピードスケート史上最年少の15歳で日本代表に初選出。
2014年ソチ大会では代表権を逃しますが、2018年平昌大会では、女子団体パシュートで金メダル、1500mで銀メダル、1,000mで銅メダルを獲得。
2022年北京大会では主将を務め、個人種目では初となる1000mの金メダルを含む、4つのメダルを獲得。
ミラノ・コルティナ大会まで、金メダルをはじめ、通算10個のメダルを獲得し、2026年3月に現役を引退されています。
そして、髙木美帆さんの誕生日5月22日、政府は国民栄誉書を授与する方向で検討に入ったことを発表しました。


──引退を決めたタイミングはいつだったんですか?

正式に決めたのは、オリンピックが終わってから、私のSNSで発表させていただいたタイミングまでの間です。

──オリンピックが終わってから引退を決意されたということですか?

“決意”という点ではそうですね。
オリンピックが始まる前に、自分の中で“そろそろアスリートから離れる時かもな”と感じた瞬間があって、その思いを各スポンサーさんなどにお伝えはしていたんですが、そのタイミングでも、「今はそういう気持ちが強くなっているけれど、オリンピックを終えた後にどうなるかはわからない」ということも一応申し添えてはいて、最後に決めたのは、オリンピックが終わってオールラウンド選手権が始まる前のタイミングですね。

──お姉さまやご家族の方に引退について相談は?

相談はしていないですね。ただ、両親にだけは“そういうふうに思っている”ということは伝えました。

──決意する前に、ということですか?

はい。オリンピックとかも最後になる可能性が高くなるので、終わってから“あれが最後だったんだ”と思わせてしまうのも心苦しい部分がありましたし、多分親は気づいていたとは思うんですけど、改めて自分の口から伝えました。

──そのオリンピックを終えまして、先ほどお話にもありましたけれども、美帆さんは現役最後のレースにスピードスケート大国のオランダで開催された世界選手権のオールラウンド部門に出場されました。2日間で500m、3000m、1500m、5000mのレースに臨み、総合3位という結果で締めくくられています。
やっぱり、このオールラウンド選手権が終わった時の感情というのは、オリンピックの時とはだいぶ違っていたわけですよね。

そうですね、やっぱり違っていましたね。
終わった時の感情としては、“私のスケート人生が終わったんだ”というよりは、“やっぱりオールラウンドって楽しいな”という気持ちだったり、最後まで挑みに行くことを貫けたことに対しての嬉しさだったり…。

──純粋に大会に対する競技に対する楽しさを再確認したということですか?

そうですね。すごくスペシャルだったのが、その大会はオランダのヘーレンフェーンにあるティアルフというリンクで開催されたんですが、オランダはすごくオールラウンド選手権が人気で、満員になるような場所なんです。その中で自分の最後の大会をすることができて、最後の5000mは12周滑るんですけど、その最後の最後までたくさんの人たちが応援してくれて、みんな熱狂的なファンなので、叫び声が聞こえる中で滑れたことも、他ではなかなか味わえない経験ですし、“楽しいなぁ〜”と思って滑っていました(笑)。

──オールラウンドは短距離から5000mという長い距離まで2日間で滑らなければいけないので、“大変じゃない?”と素人は思っちゃうんですけれども、オールラウンドは楽しいんですか?

そうですね。すごく大変なんですけれど、やっぱり楽しいですね。
面白いのが、他の長距離の選手は、自分の本命を滑る前に短距離をあまり走ったりしないんですよ。だからこそ、(オールラウンドは短距離も含めて走るので)いつもの感覚で長距離に行くと、思ったより滑れなかったりするので、そこに付け込む隙があったりするんです。

──みんなオールラウンドで滑らなければいけないから、いつもは専門しか滑らない人も出ていると。美帆さんはどちらかというといつもいろんな距離を滑っているから、オールラウンド寄りですよね。

そうですね。あと私は5000mはオールラウンドでしか滑らないので、5000mだけを滑ることがあまりないからこそ、そこに対して勘違いをせずに自分のレースに行けるメリットもあったりしますね(笑)。

──オールラウンドの5000mのペースしか知らないということですよね(笑)。
美帆さんは今回引退されたということで、引退したらやりたいと考えていたことで、実際に引退してからされたことは何かありますか?

そうですね、結構いろいろできているかなと思いますね。

──やっぱり現役中は、“これはやらないでおこう”とか“やれない”ということはいくつもあったりするんですか?

いいえ。(現役中は)特に、オリンピックが終わった後の1ヶ月2ヶ月ぐらいは気持ち的にもフリーなので、旅行に行ったり、やりたいことする、食べたいものを食べるということはできるんですけど、頭の中で常にトレーニングのことを考えたり、“そろそろ体を動かさなきゃいけないかな”とか、“こういうところに行きたいけれど、他のトレーニングの兼ね合いを考えた時に、こういう場所に行ってこういうトレーニングができるから…”とか、いろいろなところを気にしなければいけなかったので、旅行を心から楽しむことができない部分があったんです。
今はそれがなくなって、純粋に新しい土地に行って新しいものを見ることを楽しめているので、そこは最近気づいた変化ではあるかなと思います。

──美帆さんは4月の引退会見の時に、「現役の時からいくつか興味を持っているものがある」「自分の帆を広げていろんなことを経験しながら思うままに進んでいきたい」とおっしゃっていました。その現役の時から興味を持っていたことというのは、例えばどういったことですか?

競技に関わる中で、“自分の集中力や思考力というものをもっと上げていくことができればもっと強みになるのかな”と考えた時があったんです。その流れから、“脳の仕組み”なんて言ったらちょっと研究者寄りの話になってしまうので(笑)、そこまでではないんですけど、そういう“思考のプロセス”とか“集中力のプロセス”みたいなものに興味を持っていて、そこからずっと、そういった方面の分野に興味がありました。
あとは、純粋に健康な体でいることに対する興味とかもあったので。

──やっぱり、極限まで自分を追い込んで、その中でレースをされていたので、美帆さんの思っていること、感覚をさらに研ぎ澄ませていくと何か新しいことがわかるかもしれない。興味深いですね。

ありがとうございます(笑)。深めていけるように活動していけたらなと思っています。

──ちなみに、オリンピック前にお姉さまの髙木菜那さんがこの番組にゲストで来てくださいまして、ちょうど著書「7回転んでも8回起きる」を出版される直前でしたが、実際にお姉さまの本は読まれましたか?

読みました。オリンピックの最後のレースが終わって、姉から直接手渡されたんですけど、そこから次の大会がオランダだったので、移動時間で読みましたね。

──どう思われましたか?

最初の感想は“あ、ちゃんと本になってる”と(笑)。そう思った後に、“人ってここまで全部話せるんだな”と感じましたね。本当に赤裸々に話しているなと感じたので、“こんなことも話しちゃうんだ”と思ったり、姉の立場というか、“この時の私側から見た出来事はこうだと思っていたけれど、姉からするとこういうことを考えていたんだな”という発見があって、結構面白く読ませていただきましたね。

──僕は、“これは美帆さん側からの本も読みたい、すり合わせ、答え合わせしてみたい”とすごく思ったんですよ。

姉の本に対する妹のアンサー本みたいな感じですか。需要あるんですかね(笑)。

──めちゃくちゃありますよ!

もう1回姉の本を読んでみましょう(笑)。

──ぜひ(笑)。
引退後、菜那さんとの関係、もしくはご家族との関係というのも変わったのかな、なんて思ったんですけれども。

そうですね。姉との関係は…“関係性が変わった”というよりは、一緒に過ごす時間の過ごし方が大きく変わっているかもしれないとは感じていますね。
私が東京に来る時は姉の家にお邪魔することが多いんですけど、今まではそれほど長く一緒に過ごしたりというのはなかったんです。同じ屋根の下で過ごすということはあっても、部屋が違ったり、宿舎でも、毎日顔を合わせるけれど寝る場所は違ったりしていた中で、今は、部屋にいる時はずっと一緒。といっても姉も忙しいので、そんなに一緒にはいられないんですけど、そういうことが増えていて、今までの中でも一番“姉妹っぽい”かなと思いますね。

──このあいだ、菜那さんのsnsでお2人がメダルを全部上にかけているのをアップされていましたが、いつ撮られたんですか?

5月の初め頃だったと思います。

──美帆さんは10個メダルを首にかけていたじゃないですか。油断していると前の方に持っていかれちゃうぐらい重たくないですか?

首が持っていかれるのも怖いんですけど、ちょっと体を動かした時にぶつかるメダルの方が怖くて、持っている時は体が“過緊張”みたいな感じになっていて(笑)、「力を抜いて」って言われたんですけど、“力を抜くとは?”みたいな感じで撮影していました(笑)。

──冬季オリンピックで日本のメダル数が通算100個になったということですが、その10分の1が美帆さんだなと。

いやいや(笑)。でも、私は団体種目もあって、自分の持っているメダルの中で3つは団体種目なので、やっぱり一緒に戦う仲間たちがいなければ到達できなかった数だと思っています。

──この番組では毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。髙木美帆さんの心の支えになっている曲を教えてください。

wacciさんの「人生最終日の僕よ」です。
この曲のコンセプトというか、曲を聴いていて、私が次の人生を歩むと考えた時に、“この過ごし方でいいのかな”と悩んだ時に、ちょっと背中を押してくれそうな曲だなと。“今までの”というよりは“これからの自分”を支えてくれる曲になりそうだなと思っています。

──人生一番最後の日、死ぬ日ってわからないじゃないですか。でも、アスリートの方は、競技人生でいう“最後の日”を自分で決められる。だから、アスリートの方はそこが他の仕事と違う。“アスリート人生最終日”というものを決められる。そこが大変でもあり、羨ましい部分でもあるんですけれども。

前に言われたのが、「アスリートが自分で引き際を決められるというのは恵まれているとも言える」と。
怪我でどうすることもできなかったり、“自分の成績が落ちていくからここで辞めよう”と決める人も多い中で、最後、私は「まだできるんじゃないか」と言われていた中で引退を決めた部分があるので、「そうやって自分の引き際を自分の意思で決められたのは幸せでもある」と言われたことがあって、何か深いなとは思ったんですけれども。
でも、アスリートでも自分の引き際がわからず続けてしまうパターンもあるので、難しいですね。

──本当にいろんな価値観があるのでそれは難しいですけど、美帆さんは競技人生、悔いなく終えられたんでしょうか。

そうですね。最後は“自分のスケート人生を引退する”ということを受け入れられた形で決めることができたので、自分の次の人生を歩む上で気持ちよく一歩踏み出せたんじゃないかなと思います。


今回お話を伺った髙木美帆さんのサイン色紙を1名のリスナーにプレゼントします。
ご希望の方は、番組公式Xをフォローして指定の投稿をリポストしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

また、新たにポッドキャストのコンテンツとして始まった『SPORTS BEAT supported by TOYOTA Mixed Zone』。
こちらは、radikoなどの各種ポッドキャストサービスでお楽しみいただけます。
聴き方など詳しくはTOKYO FMのトップページをチェックして、そちらも是非、お聴きください!
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