福田正博さんは1966年生まれ。
日本人初のJリーグ得点王となるなど活躍され、J リーグ通算228試合出場93得点、日本代表では45試合出場で9ゴールを記録。1993年にはワールドカップアジア地区最終予選も経験されています。
2002年に現役を退かれた後は、サッカー解説者としてメディアで活躍するとともに、講演会やサッカー教室など、自身の経験を活かしながら様々なジャンルで活動されています。
──先週もちょっと伺いましたが、日本代表は決勝トーナメントに進みましたが、ベスト32で敗退でした。改めて振り返ってどうですか?
森保監督が一番大切にしているのは、チームのまとまり。これが日本の一番の強みだと思っていたと思うんです。
森保監督に関して言うと、カタールのワールドカップの前から指揮を取って、多分、8年9年やっているんですが、やっぱり“東京オリンピック世代”が中心なんですよ。27、8歳くらいで、一番良い、サッカー選手として一番中心になる世代。だからこそ、今回の大会が一番良い時期だっただけにチャンスだったと思うんですが、そういう意味では、結果ベスト32というのは少し残念な結果に終わってしまったなと思いますね。
──決勝トーナメントの相手がブラジルに決まりましたけれども、選手のインタビューの中で塩貝選手の言葉が切り取られて話題になったというか、ブラジルにちょっと火をつけてしまった部分もあるのかなと思ったんですが。
そうですね。塩貝選手に悪意はなかったと思いますし、そういう気持ちで言ったわけではなく、素直に自分の気持ちを言っただけなんですが、それをブラジルサイドがうまく切り取って、彼らにモチベーションを与えるような形になってしまったので、それはあまり良くなかったかなと。
日本とブラジルの力関係を考えると、やっぱりブラジルの方が上なんですよ。これは間違いない。その時に日本サイドとして考えなきゃいけないことは、ブラジルに油断してもらうことなんです。隙を見せてもらうということが重要なんですね。
去年、親善試合で2-0から3点獲って日本がブラジルに勝っているんです。これは、実はワールドカップのことだけ考えれば大敗しておいた方が良かったという考え方があるんですよ(笑)。(W杯で)ブラジルは日本と対戦する時に“(対戦相手が)オランダじゃなくて良かった”と思っていた。ということは、日本ということで少し油断してくれれば、一番日本にとっては得なんです。ブラジルの監督の立場にしてみると、油断するのは一番危険なんですよ。では油断させないためにどうするかと言ったら、「去年の親善試合で2-0から逆転されているんだ、メンバーは違うかもしれないけれど日本は力があるんだぞ」と言って、油断しないように警戒させる。もう1つ、塩貝選手のコメントを「お前ら、(日本選手が)こんなことを言ってるぞ」と言って(起爆剤として)使うことが可能なんですよ。そういうふうに利用されてしまうものを提供しない方が良かったなとは僕は思っています。
塩貝選手とワールドカップが終わった時にちょっと違うところでお会いしましたけど、本当に純粋なんですよ。全然悪気がないんです。ただ、プロの選手として、そこは少し考えてコメントをするべきだったのかなとは思います。ただ、まだ若いですから、これを力に変えて、“リバウンドメンタリティ”という言葉を森保監督はよく使いますけど、何かうまくいかなかった後のリアクションはすごく重要で、そこを塩谷選手は試されるのかなと思いますし、その期待に応えるだけのものを持っている選手だと思いますから、良いエネルギーに変えてもらいたいなと思いますね。
──ただ、そのブラジルが次にノルウェーに負けて、そのノルウェーが次にイングランドに負けて、そのイングランドがアルゼンチンに負けて、アルゼンチンがスペインに負けたということで、日本の山は全部負けたという。やっぱり世界のレベルは高いのかなと。
そうですね。アルゼンチンはメッシがあそこまで活躍するとは思わなかったですけれども、あそこまで点を獲って、チームの中で違いを出していく。体力的には衰えても技術的な部分は衰えないし、やっぱりああいう厳しい中でどうできるかが技術なんだと思うんですよね。
例えば日本の場合だと、コーンを置いてドリブルの練習をする。あれはボールをうまく扱うという意味では技術とかテクニックということになるかもしれませんけど、試合の時は(相手が)激しく来ますから、その中で出せる技術が本物の技術なんだと思うんです。それはメッシがピッチの中で証明しているし、そういうものをもっともっと高めていかなきゃいけないのかなと思いますね。
──だから、育成をどのようにしていくかという、日本の組織としての課題なわけですよね。
そうですね。ワールドカップが終わるたびにそういう課題が出てきて、それを指導者で共有して、日本全体で共有して、そしてまた次に向かっていく。それはずっと繰り返しやっているんですが、育成に力を入れなければ未来はないですから。
その育成をしっかりするためには、指導者をしっかり養成していかないといけないんですね。指導者が世界目線で、世界基準で物事を見て判断していく、評価していく。それを多くの指導者が共有していく。これは非常に重要なことだと思います。
簡単じゃないんですよ。そういうことを積み重ねてきているからこそ、日本が成長して8大会連続出場して、なおかつアジアでは中心の国になっているわけですよね。それは間違いなく育成、指導者の養成というところにしっかり取り組んできているからなので。ただ、もっとワールドカップで上に行くためには、もっともっと指導者の目線というものを世界基準に合わせていくということですね。これが非常に重要になってくるかなと思います。
──ブラジル戦で、前半は佐野海舟選手の素晴らしいインターセプトからのゴールがありましたし、前半の終了間際には日本がボールを持つ時間もあったにも関わらず、後半ブラジルが戦略を変えてきたわけじゃないですか。それで日本が一方的に押し込まれてしまって、その中で具体的な戦術というものが出せなかったんじゃないか、みたいな話を考えると、監督である必要はないですけれども、もう少し具体的な戦略を示す人、ブレーンが必要なのかなと素人は思ってしまうんですが…。
そういう見方も当然ありますし、そうできれば一番いいと思うんですが、森保監督が帰国した会見で「戦術は後出しジャンケンだ」と言っていたんです。どういうことかというと、自分たちがこう変えてきたら相手がこう変えてくる、またそれに対して変えていかなきゃいけない。ベンチでいちいち何か言っても、それは向こうが変えてきたらまたその変化に対して変化しなきゃいけないんです。
サッカーってそういうものなんですね。こういうやり方をします、だからこうやって対応します、そうすると今度対応された側がまた変えてくるんですよ。試合中に変えてくるんです。
ベンチからある程度戦術とか戦略は言えますけど、ピッチの中で選手たちがそれを感じて対応していく能力を高めていくのがサッカーにおいて一番重要なんですよ。
守ろうという気持ちはなくても、ブラジルは1点負けているので前に出てくるんです。そのエネルギーってすごいんですね。それを食い止めたり押し返すためには、前半のエネルギーよりももっとエネルギーを使わなきゃいけない。なぜならば、ブラジルはすごい勢いで前に出てきている。その勢いにやっぱり押されてしまった、飲まれてしまった。これは日本だけではなくて、イングランドもアルゼンチンとの試合はそういう展開になったんですよ。サッカーってそういうスポーツなんですよね。だから日本はそれでいいと言っているんじゃなくて、その時にベンチから何か言って変えられるほど簡単なスポーツではないんです。なぜならば、相手がそれに対してまた変化をしてくるから、それに対してまた変化して対応しなきゃいけない。後出しジャンケンなんですね。だから、その部分で言うと、“個”の力を高めて時間を作れる選手を作らなきゃいけないということですね。
──でも今回、日本代表は怪我人が続出して、それでもあの戦いができたということは、相当選手層も厚くなったのでは?
そうですね。選手層は厚くなっているし、森保監督は誰が出ても同じような戦いができる準備をしてきたということが、あのグループステージでは証明できたと思うんですね。でもそこから上に行くためにはやっぱり“個”の力というものが必要だったかなと感じています。
世界を見た時に、日本だけではなく主力の選手が怪我することは多々あって、それでもやっぱり勝ち上がっていく力が必要なのがワールドカップなんです。そういう意味では、確かに選手層は厚くなったけれども、もっともっと選手層を厚くしていかなきゃいけない。“個”の力をもっと高めながら選手層をもっと厚くしなきゃいけない。
今回、今までになく日本代表は選手層が厚くなったのは事実だけれども、じゃあベスト16、8へ行く国と比べた時にそこまでの選手層があったのかというと、まだまだもっと厚くしていかないとダメなんじゃないかということなんだと思います。
ただ、あれだけ怪我人が出て、誰が出ても同じようなサッカーができて、そしてグループステージをああいう形で抜けるというのは今までなかったことですし、やっぱり力をつけてきたのは事実ですね。
──そして、その日本代表の次なる大きなステップとして、半年後にはサウジアラビアでのアジアカップが控えています。このアジアカップはどういうメンバーで臨むんでしょうか?
スケジュール的に1月なので、ヨーロッパのリーグの問題もあってどれだけの選手が招集できるかちょっとわかりませんけれども、今まで森保監督が就任してから2大会、アジアカップでは勝てていないんです。そういう意味ではやっぱり獲りたいという思いがあるので、できる限りメンバーを招集すること。サッカー協会としてはこの大会をワールドカップの次に大きな大会と位置づけているので、できる限りメンバーを揃えて、今までの継続した流れで戦っていくのかなとは思います。
サウジアラビアでアウェーなので難しい大会になると思いますけど、しっかりとメンバーを揃えて、今まで継続してきたことを、あと、ワールドカップの悔しさというものをしっかりとピッチの中で表現してもらいたいなと思いますし、それだけの力のあるチームですから。
──ひょっとしたら森保監督の集大成になるかもしれないですし。
そうですね。森保監督は2つ下なんですけど、日本代表で一緒にやっていた仲間なので、良い形で日本代表を終わってもらいたいし、しっかり結果を残してほしいなと思っています。
森保監督の評価って難しいんですよ。アジアカップは2回負けている。これは評価はやっぱり低いわけです。ワールドカップも、前回ドイツ、スペインに勝って番狂せを起こしたけれど、じゃあベスト16以上に行けたのかというと、結局はクロアチアにPKで負けていると。今回もオランダに引き分けて、これはすごいことなんですけれども、良い形で1勝2分けでグループ2位抜けでベスト32に行って、ブラジル相手とは言ってもベスト32で負けている。これなかなか評価が難しいなと。僕個人としては評価していますけど、結果だけ見たら変わらないじゃないかという話になるので、評価が本当に難しいんですよ。
──何をもって評価するか。やっているサッカーなのかとか、選手のモチベーションなのかも含めて。
そうです。だから、評価はいろいろ賛否あると思うんですよ。結果が出ていないからそういう賛否になってしまうので、この最後のアジアカップでしっかりと結果を残して…勝つことが当たり前なので、勝ってもなかなか評価は上がらないかもしれないけれども、ただ結果を残すということは絶対的に必要な条件かなと思っていますし、良い監督だと僕は思っているので、ぜひとも結果でいろんなものを黙らせてもらいたいなと思います。
──僕たちも応援したいなと思います。
さあ、この番組では毎回ゲストの方にCheer up songを伺っています。今週も福田さんの心の支えになっている曲を教えてください。
ORANGE RANGEさんの「1000%」ですね。
──これもDAZNのサッカーの曲ですね。スポーツの世界に100%はないですけれども、1000%優勝できる日本をいつか見てみたいですよね。
そうですね。そのぐらい力をつけていく。ただ、30年近く経ってアジアの中でもトップに立ち、ワールドカップでも優勝経験のある国に勝つようになって、ブラジルもあそこまで苦しめるような力がついてきた。他の国は100年近く歴史があって今があるわけで、この差はなかなか埋められないけれど、少しずつだけれどそこに近づいてるということは今回の大会で証明できたと思うので、これから10年、20年、30年このまま続けていけば、十分可能性はあるのかなと。もっとやらなきゃいけないことはたくさんありますけど、それをクリアしていけば、そう言えるようなチームにはなっていくのかなと思いますね。
──優勝できるならなるべく早くしてくれないと。生きているうちにトロフィーを掲げる姿が見たいですよね(笑)。
僕も今年で60なんですけど、時間に優位はないですからね。ちょっともっと頑張ってもらわないといけないかなと思いますけど(笑)。
でも、なかなかそんなに一足飛びにはいかないんですよ。本当にステップバイステップで、2歩進んで1歩下がっていく。これを繰り返していく。ずっと右肩上がりならいいですけど、そうではなくて上がったり下がったりするので。でもそれでも、少しずつ長いスパンで見た時には前に進んでるな、というのがスポーツの世界。どの世界もそうだと思いますけど、特にワールドカップに関して言うとそういうものなのかなと思います。
今回お話を伺った福田正博さんのサイン入り色紙を1名のリスナーにプレゼントします。
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また、新たにポッドキャストのコンテンツとして始まった『SPORTS BEAT supported by TOYOTA Mixed Zone』。
こちらは、radikoなどの各種ポッドキャストサービスでお楽しみいただけます。
聴き方など詳しくはTOKYO FMのトップページをチェックして、そちらも是非、お聴きください!