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2026.08.08

吉崎エイジーニョさんに訊く「なぜ日本サッカーは強くなったのか」

今週の「SPORTS BEAT」は、サッカージャーナリストの吉崎エイジーニョさんにお話を伺っていきました。
吉崎エイジーニョさんは1974年生まれ、北九州市出身。
大阪外国語大学在学中に、韓国・延世大学韓国語学堂へ留学。
スポーツライターとしてサッカー日本代表や韓国代表、欧州クラブなどを精力的に取材・執筆されています。
著書に、今年4月、徳間書店から出版された「なぜ日本サッカーは強くなったのか」などがあります。

──よろしくお願いします。

よろしくお願いします。
先にプロフィールを補完しておいた方がわかりやすいと思うんですけれど、昔「週刊サッカーマガジン」というサッカー専門誌があったんですが、僕はそこで13年間韓国サッカーについて連載をしまして、その後、同時に「Number」というスポーツ誌でも連載を持っていたので、そこの機会を利用して、ドイツに暮らすという。ヨーロッパ、アジア2カ国で生活した経験をもとにいろんな執筆活動をしています。

──吉崎さんは4月に「なぜ日本サッカーは強くなったのか」という著書を出されて、その後実際にワールドカップがありましたが、吉崎さんから見て、日本サッカーは強くなったのか、なっていないのか、どう思われますか?

強くなっていると思います。この本の中でも書かせてもらった“日本代表の欧州化”という現象。“欧州化”というのは、欧州の現地で欧州組が経験してきた思考、考え方、フィロソフィーみたいなものが日本代表のスタンダードになっている。僕らは日本代表を日本の象徴として応援しているようで、実は彼らはもう欧州化していて、欧州化した日本人がプレーしている、という内容を書かせていただいたんですけど、そういった強さは十分に出ていたと思います。

──僕も拝読しましたけれども、“キリスト教が大きな影響を与えているんじゃないか”みたいなこともあって、だから技術だけではなくヨーロッパに行ってそこで生活して一緒にやらないとなかなか身につかない、わからないことがきっとあるんだろうなと思ったんです。

よく「サッカーが強い国は欧州・南米だ」と言われていて、日本も欧州・南米に追いつけということでずっとやってきていると思うんですが、“この強い国々の共通項ってなんだろう”と考えた時に、地理的条件とか人口とか経済力ではなく、キリスト教文化圏ということではないか、と。僕もドイツで暮らしていましたから、そういった経験からそこにたどり着きまして、それを読み解いていくうちに……僕はキリスト教徒でもなく、宗教的に何が良い、良くないという考えはないんですけれども、“一神教”という要素ですね。すごく端的に言うと、神様と個人である自分が直接繋がっていると思っているから、自分のことをめちゃくちゃすごいと思っているんですよ。根本的に自己肯定感が高い。そのことによって、例えばチームとか戦術だとかゲーム、サッカーという試合に関わる、そもそも関与する意識が高い。そしてあとは、神様がそれぞれと繋がっていることによって、年齢による上下関係がない。例えば小さい頃から年上の人にもぶつかっていける、意見を主張できるという環境が根本的な宗教観の違いとしてあるんじゃないか、そこがサッカーにもすごく影響しているんじゃないか、ということを切々と説いた本になっています。

──ワールドカップが終わった後に、“結局、決勝トーナメント1回戦の壁を超えられなかった。もうちょっと個の力を上げなければ“みたいな話になりましたけど、本を読んだり今のお話を聞くと、ヨーロッパなどの選手は“個のレベル”じゃなくそれぞれが個として成り立っていて、“その人が強いか、強くないか”というだけの話なんだと。だから、レベルが上がったら個が強くなる。でも、日本は個じゃなくて組織というか、そういう中で“個で強くなりなさい”というのはまた別ベクトルというか、それが必要になってくるということですよね。

まさにおっしゃる通りで、そういうことを言わなきゃいけない環境だということですよね。なぜなら、僕はこの本の中でもデータとしてエビデンスとして引いたんですけれども、サッカーのワールドカップは今年23回目で96年間続いていて、歴代のベスト8に入った国のうち、96.7%がキリスト教文化圏の国なんです。そういうことを噛み砕いていくと、シンプルに強い国の思想はそういう思想で、日本はそれに倣っている、それを欧州組が吸収しているから強くなっている、ということをこの本で書いたんですけれども、欧州のメンタリティが日本代表のスタンダードになってきている。だから強くなっているんだと思います。

──そしてアジアのサッカーにも目を向けてみたいと思うんですけれども、吉崎さんといえば韓国代表も精力的に取材されていますが、“韓国と日本のサッカーの育成環境の違い”みたいなところはどうですか?

よくぞ聞いてくださいました(笑)。これはもう原稿に書こうかなと思ったというか、あるいはテレビにちょっとお呼びいただいてお話ししようかなと思っていたんですけど、なかなか機会がなくて、今日初めてお話しできます(笑)。

遠回しなところから始まるんですけど、僕は先月、韓国のMBCというテレビ局から、“韓国ではサッカーが負けた後にこれだけ問題になっているけれど、日本の視点からこのことをどう思うのか、日本が良くなった理由は何なのか”ということでインタビューを受けまして。それで先方から最初に質問がいくつか来たんですけど、こういう内容が入っていたんです。
「日本国民にとってのサッカーとは何ですか」(笑)。

──おお、責任重大じゃないですか(笑)。

(笑)。韓国側の予想していた答えが「国家の威厳を背負って、国家の誇りを背負ってやっている」ということは容易に想像できたんですけど、僕はそれを聞いた時にすぐこう返信したんです。「その質問が出たら僕はこう答えますよ、“最高に成功したマニア文化”です」と。要は、(日本は)国民全員誰もがサッカーのことをいつでも、ワールドカップがなくてもずっと好きか、あるいは地上波でずっと(サッカーの試合を)放送しているかというと、それは違う。けれども、マニア層のファンの枠が大きいからみんな注目しているというものである、と説明したら、キョトンとされてしまいました(笑)。

堅いお話になっちゃいますけど、言ってしまうと、日本と韓国の大きな違いというのは、韓国の今の状態は、中央集権型。大統領制度、大統領に権限がある。国の社会体制として、(サッカーも)協会の会長に力があって、それが決めたシステムによっていろんなことが構築されている。逆三角形の形ですよ。日本は地方分権型で、いろんな地方、現場に決定権があって、そこから、自由な発想からいろんな選手が出てくるという形になっている。

韓国で聞くと、今でも、高校生のサッカー選手が首都圏の良い大学へ行くのに、年間7回か8回ある全国大会でベスト8に入らないと行けない、推薦の出願ができないんだそうです。だから、3年生は下手くそでも50%以上公式戦に出ていれば出願できるから、1年生2年生がいくら上手くても3年生がたくさん試合に出て、1、2年生はちょっとだけ出る、みたいなことが繰り返されている。トップダウンだから、上が制度を決めたらそういう風に伝播しちゃって、自由な発想がなくなっちゃっている。

もう1つの軸で言うと、韓国は2012年にスペインのサッカー協会と提携を組んでいるんですけど、そこから、昔みたいに“速くて強くてぶつかっていく”みたいなサッカーじゃなくて、パスを繋ぐサッカーをやっていこうと、一気にその方向に向かっちゃって、別の発想の選手が生まれない。日本は、これは良いことだと思うんですけど、緩やかな決まりしか作らないんです。あまり一般には浸透していないかもしれないですが、「Japan's Way」という(日本サッカーの目指す未来像と、そこへ向かうための道筋、指針が策定され)、“日本らしい選手とは何なのか”という抽象的なビジョンだけを発表して、“多様な状況に対応できる選手になろう”とか“少なくともフィジカルでぶつかるスピードを持っておこう”みたいな緩やかな決まり事だけ作ると。

──日本らしい曖昧さですよね。

そうなんです。そういうところが結局良い形につながっている。ましてやJリーグのクラブユースというアカデミー組織と学校のサッカーという両輪があることによって、そこで失敗した選手ももう1回立ち上がるチャンスがある。そういう良さというものが出てきていますね。今回のワールドカップに出場した中村敬斗、鎌田、堂安、いろんな選手が、行きたかったクラブに行けなかったとか、そこのテストに落ちたとか、ほとんどがそういう経験があるんです。

──成長の速度っていろいろあるじゃないですか。特に子供時代は。それを全部救えるようなシステムというのは、才能を逃さずにキャッチできるということもある。だから、レールがもう決まっていたらそれに乗れなかった人たちはやめてしまったり腐っちゃったりするけれども、そうじゃないんだということがわかっていると、いろんな人のモチベーションにもなりますよね。

今藤木さんがおっしゃっていたように、“日本的な曖昧さ”が良さを生んでいる。大いにそういう面があると思います。韓国はその中央集権的な規則で硬直化している。今そういう状態だと思います。

──だから、日本は欧州化するべきだけれども、日本の良さというものはあるじゃないですか。それはやっぱり失わずに育てていきたいですし、難しいところですよね。

でも、森保さんが示してくれたモデルというのが、意外な答えなんじゃないかと。グローバルスタンダードの上に日本の良さを足すということは、これはもしかして50年100年、我々が持っていける考え方なんじゃないかと。

──これから日本はどうしたら強くなるんでしょうか。

森保さんはすごく結果を残してくださった監督なので、良い花道をうまく作ってお送りして、次の監督に引き継いでいくというのが行く道だと思うんですけれども、僕は徹底してどんどん欧州化していくべきだと思います。なんなら僕は、この本に書いた通り、欧州の監督を呼んできて徹底的に彼らの中で欧州化していった方がいいんじゃないかと思うぐらい、やっていくべきだと思います。

──この番組では毎回ゲストの方にCheer up spngを伺っています。吉崎さんの心の支えになっている曲を教えてください。

韓国のBBGIRLSというグループの「BODY WAVE」という曲なんですけど、僕がたった今ハマってる曲です。“思い入れがずっとある”とか“昔から聴いている”とかじゃなくて、たった今ハマってる曲になります。

──やっぱり韓国のK-POPは相当詳しいんですか?

僕は詳しいですし、好きですし、ずっと聴いていますね。
30代の頃に結婚しそびれる出来事があったんですけど(笑)、その頃、ちょうど2010年ぐらいにK-POPから少女時代とかがわーっと入ってきて、YouTubeを見たら派手にやっているじゃないですか。それで慰めてもらったというところから、何も考えないよりもオタ活した方がいいんじゃないか、みたいな(笑)。それで自分自身もオタ活をしていったということなんです(笑)。


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