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2022.04.23

姉妹でありライバル。引退する姉への想い

今週の「SPORTS BEAT」は、先週に引き続き、北京オリンピックで4つのメダルに輝いた、スピードスケートの髙木美帆選手をゲストにお迎えしました。
髙木美帆(たかぎ・みほ)さんは、1994年、北海道中川郡幕別町生まれ。
3人兄弟の末っ子で、姉はスピードスケートで金メダリストの髙木菜那さん。
美帆さんは5歳でスケートを始めると、2010年、中学3年でバンクーバー五輪に出場。
2014年ソチ五輪には惜しくも出場を逃しますが、2018年の平昌五輪では個人で銀と銅2つのメダルを獲得。
さらに女子団体パシュートでは姉の菜那さんと共に金メダルを獲得されます。
そして今年2月に開催された北京五輪では、1500m、パシュート、500mで銀メダルを獲得、1000mでは五輪新記録で金メダルに輝き、通算7個目のメダルは夏冬の日本女子最多記録を更新となりました。


──北京オリンピック団体のパシュートでは決勝まで進みましたが、最終コーナーでお姉さんの菜那さんの転倒があって、惜しくも銀メダル。転倒に気がついたのはいつ頃ですか?

姉のお尻が氷についたあたりぐらいでは、多分転倒に気付いていると思います。

──あの時は先頭で引っ張っていましたよね。2人後ろでも視界に入るものなんですか?

視界には入らないんですけど、やっぱり聞こえてくる音が変わるので。
カメラマンさんが撮った写真の中に、姉が転んで滑っている最中に私と佐藤(綾乃)が同じタイミングで振り向いている写真が残っていて、“そこ(転倒した直後)ですぐに気づいていたんだな”って自分でも思いました。そこも(佐藤選手と)シンクロしてましたね(笑)。

──見ている僕たち以上に出場されている選手の方が悔しいのは当然ですが、髙木選手はどう感じられましたか?

なかなか言葉に出すのは難しいところはあるんですけども、いろんな気持ちはありましたね。
“あともうちょっとだったな”と思うところもあれば、姉に対して“心配”というか、私がもしその立場だったら、「気にしなくていい、あなたのせいじゃない」って言われてもどうしてもそうは思えないと思うので、それをこれから背負っていく必要はないと思いつつも、そうなってしまう姉に対して“どうしたらいいんだろうな”と思ったり…。
瞬時にいろんな情報が入ってきたので、何もできなかったんですけど、そんな感じだったと思います。


──菜那さんはその後にマススタートもあって、そこでも転倒があったんですけれども、妹として見ていてどう思われましたか?

姉は、周りから見ても感情が豊かで天真爛漫で、なんでも素直な表現をするタイプの性格だと思うんですけど、でもやっぱり“外に出さないところ”があったり、見せられないものがあったり、うまく甘えられない部分があったんだなと。
大会が終わっていくつか取材を受けたり会話をしてるうちに、そうだったんだな、やっぱり1人で抱えいるところもあったんだなと感じることはあったので、周りと会話をしたりして気持ちを紛らわすことあっても、なかなか受け入れることはできていなかったのかなと、最近感じています。

──表彰式の後に3人で撮った写真。「泣き笑いの写真」と言われてますけれども、それがすごく話題になりました。
僕は中継を見ていて、表彰式が終わった後に立ち止まってまた泣かれている感じだったので、“何が起こってるのかな、観客席に誰かいらっしゃるのかな”ってすごく気になったんですが、その後にカメラマンさんの書かれた記事を読んで、“この話だったんだ”とすごく感動しました。

そうですね。表彰式の時に、例えば金メダルだったら「華やかな、喜ばしい感じで写真を撮らせてください」って言われるんですけど、(その時は)私たちもやっぱりちょっと気持ちが沈んでいる状態で、それでも「撮らせてください」ということだったので、「じゃあ3人で撮ろうか」ということで構えていたら、(カメラマンが)急に泣き出されたんで、私たちも「え!?」思って(笑)。
でもその瞬間、カメラを持っている手がすごく震えていて。それまでは姉が涙を流していても佐藤と私は涙を流すことはなかったんですけど、その瞬間に、もらい泣きというか、“見ている人たちも感じているものがたくさんあるんだな”ということを強く感じて、急に“来ちゃった”ところがあったんですよね。
すごく不思議な、普段は感じられないような気持ちを感じることができました。

──そして先日、お姉さまの菜那さんが引退を発表されましたけれども、「引退する」という話は事前に聞かされていたんですか?

引退を決めてからは話は聞いていました。やっぱり私たちぐらいの年齢になってくるといつ引退を決断してもおかしくないので、そこに対してあまり驚きというのはなくて、“次の道に進むんだな”と、素直に受け止めることはできましたね。

──姉妹でありながら同じ競技をしていて、「ライバル」という部分もある。美帆さんにとって、菜那さんというのどういう存在でしたか?

難しいですね。私の中では、姉はずっと姉であることには変わりがなくて。でもライバルでもありますし、競わなきゃいけない相手でもあって、逆に言うと向こうからも(自分は)そういう対象、勝ちたい相手にもなっていたので。
でもやっぱり、いざ姉の引退会見を見て、その後に私も記者会見があったんですけれども、(姉の引退について)気持ちを聞かれた時に、“寂しい気持ち”というのは確かにあるんだろうなと。その実感は、多分、スケートの練習とかが始まってから感じるのだろうなと思うんですけど、それと同時に、“もう同じ舞台で競わなくてもいいんだな”ということも改めて感じました。
そういう葛藤みたいな思いは見ないようにしていたんですけど、やっぱり(葛藤を)感じている部分もあったんだなと思いました。


──そして引退といえば、小平奈緒選手も今年の10月の距離別選手権大会をもって引退すると発表されました。小平選手は髙木選手とってどのような存在ですか?

小平選手は、最初は私が背中を追う選手で、私が世界で戦う上で手本となるような選手だったんですけれども、それが次第に一緒に世界で戦う選手になって、ライバル同士になって。バンクーバーから12年経った上で感じるのは、すごく特別な感覚を持っている選手だなと感じていますね。

──パシュートの決勝が終わった後に小平選手から声をかけられたとか。

そうなんです。選手村に帰るバスが一緒で、バスを降りて歩いている時に声をかけられて、少したわいもない話をしてたんですけど、パシュートに対して「日本の女子が強くなって先を走ったことによって、世界のレベルも上がっていったんだと思うよ」と声をかけていただいて、金メダルというものは残せなくても何か“認められた”というか、“自分たちでも認められる部分というのはあるのかもしれない”と思えるような言葉をいただきました。

──さあ、この番組では、毎回ゲストの方にcheer up songを伺っています。今週も、心の支えになっている曲を教えてください。

家入レオさんの「あおぞら」です。

──家入さんと交流があるんですよね?

そうですね。そんなに頻繁ではないんですけど、たまに連絡を取り合ったりご飯に行ったりしています。
きっかけは、レオちゃんが地元にツアーで来られている時に楽屋に挨拶に行ったんですけど、それが平昌オリンピック前の話で、その当時のことを覚えてくださっていたみたいで、平昌オリンピックの時に連絡をいただいたんですよ。姉の方に「ぜひ応援したい」みたいな感じで連絡をくださって、出発前に会うことができて。交流が始まったのはそこからですね。

──この「あおぞら」という曲の歌詞がまた良いですよね。

そうなんですよ。北京のパシュートが終わった後に姉が聴いていて、「この曲にすごく感動して…」という話をしていたんですけど、よくよく聴くと、歌詞に“ラブソング”というフレーズが入ってるんですよ。「これ、ラブソングなんだね」って言って2人で笑ってたんですけど、途中までの歌詞がすごく良くて、全体的にこの曲に励まされたというか、救われた部分もありました。

──そして今は休養中ということでなかなか考えられないかもしれないですけれども、次なる目標は何でしょうか?

“具体的な”とか“競技に対する”とかそういう目標ははまだ持っていないんですけど、ただ、「自分のこの先をどういう風に過ごしていきたいか」というところでは少し目標があって。
今までは、(周りから)いろいろ良い環境を与えてもらって、その中で自分なりに工夫して過ごした時間が多かったので、もうちょっと、自分の人生やスケートに対して、“積極的に”というか、責任を持って、自分で決めたり行動したりしていきたいなと思っています。

──素晴らしいですね。よりアクティブに。

そうですね。あまりアクティブではないので、そういう風になれたらいいなと思っています。


今回お話しを伺った、髙木美帆さんのサイン入り色紙を抽選で1名の方にプレゼントします。 ご希望の方は、番組公式ツイッターをフォローして指定のツイートをリツイートしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビュー、ディレクターズカット版は音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
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