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2022.05.14

番記者だけが知っている!天才・落合博満が現役時代に行っていた 驚きの打撃練習方法

今週の「SPORTS BEAT」は、先週に引き続き、現在ベストセラーとなっている『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』の著者、鈴木忠平さんをゲストにお迎えしました。
鈴木忠平(すずき・ただひら)さんは、 1977年生まれ。日刊スポーツ新聞社でプロ野球の担当記者を16年間経験後、2016年に独立し、2019年までNumber編集部に所属。
現在はフリーライターとして活動。
著書には『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』『清原和博 告白』などを発表されています。
さらに、昨年発売された中日ドラゴンズの落合博満元監督の実像を描いたノンフィクション『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』が12万部を超える大ベストセラーとなっています。



──(本には)落合博満さんとの様々なエピソードがありましたけれども、休日に練習を見ている時に(落合さんが)隣に来て「ずっと同じところから見続けろ」と言った、というエピソード。いきなりぐっと近寄って来て言われた時には、驚いたんじゃないですか?

そうですね。会社でもそういう方がいらっしゃると思いますが、“その人が来ると社内がちょっとシーンとする”みたいな(笑)。落合さんも当時はそういう雰囲気の方で、特にメディアにはちょっと一線を引いているような雰囲気があったんです。
でも、(その時は)自分が1人でいるところにちょうどカメラマンの方が写真を撮るような場所があって、そこで練習を見ていたんですけど、そこに落合さんが歩いてきて、僕の隣に座って、「ここからずっと見ておけ」みたいな話をされて。その話も、“皆まで言わない”というか、「これはどういう意味なのか」ということは仰らない方なので、“なぜ僕のところへ来てなぜこれを言ったのか?”ということは、その後色々考えましたね。

──作家の浅田次郎さんが競馬がお好きで、「パドックは必ず同じところから見ろ。そうすると馬の状態がわかる」と仰ったエピソードを思い出しました。

“定点観測”ですよね。
落合さんがある時、自分の現役時代のエピソードとして、「自分は、現役の時はカメラマンを利用していた」と。「カメラマンというのはいつも同じ場所からバッターを撮っているから、自分の信頼できるカメラマンを掴まえてずっと撮らせる。それで連続写真を見て、自分のバッティングのポイントがずれているかどうかを確認したりする」と言っていたんです。
これは僕がいた日刊スポーツの先輩のカメラマンの話なんですが、落合さんって、(現役時代は)メディアをシャットアウトして室内でバッティング練習をするんですよ。それが、あるキャンプの時にそのカメラマンだけ中に入れて、キャッチャーのところでカメラを構えさせたんですって。で、「お前、ここ(キャッチャーの位置)から撮れ」と。さすがにそのカメラマンの方も「それはできません」と言ったんですが、そうしたら落合さんが「絶対に大丈夫だから、俺を信頼してここから撮れ」と言って(写真を撮らせた)。
だから、キャッチャーの位置にカメラマンがいる状態で、落合さんはバッティング練習をしたんです。

──空振りをしたらカメラに当たっちゃうってことですよね。

命の危険もあって危ないですよね(笑)。ただし、「絶対に大丈夫だし、撮ってくれたお礼に、この写真を明日の新聞の一面で使っていいぞ」と。それでそのカメラマンは、一面にその写真をバーっと出した。
そういうエピソードを落合さんが僕ら番記者に話したことがあって、“定点観測というのは落合さんが昔からやっていた方法なんだな”と思いましたね。

──本のタイトルが「嫌われた監督」と言いつつも、落合さんにまたユニフォームを来てほしいなと思っている人も多いと思うんですけれども、再び監督をする可能性はあるんでしょうか。

これは、落合さんにオファーする球団があるかどうかなんですよ。

──球団にとったら、ある意味“劇薬”になるわけじゃないですか。だから、「成績が良くなる可能性もあるけれども、体制も含めて色々と変わるんだろう、振り回されるんだろう」と覚悟の上で(オファー)するかどうか、ということですよね。

そうですね。だから、そういう球団があるかどうか、ということだと思うんですよね。そういう球団がもし出現すれば、見ている人も、もちろん書き手も、何かちょっとまたかき立てられるものがあるな、と思っています。

──落合さんはやっぱりすごく論理的な、理詰めの方だな思いましたし、第2回のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の時に、ドラゴンズの選手がみんな辞退したり、(落合さんが)監督を断ったりしたことがありましたが、そこも“ご自身の中にルールみたいなものがすごくある方なんだな”と思いました。

そうですね。あれは「国民が一丸となって」というムードだったんですけど、僕らは落合さんの周りにいたので、いざ落合さんの理屈を訊いてみると、“確かにそうだよな”という(笑)。
そういうところもあるんですよ。感情的にはやっぱり、“みんな犠牲を払って国に貢献しようとしてるんだから、選手を出しましょうよ”って思うんですけど、でも、“落合さんの言い分も理屈としては通っているよな”と。
僕らもすごく価値観を揺さぶられたというか、“今まではこう思っていたけど、実は世の中ってこうなんじゃないか”ということを思わされましたね。

──日本人の場合は“犠牲になる”というか“一つになって戦う”ということが美徳とされるところもありますけど、メジャーリーグの場合、自分たちの契約、チームの方が強いから、WBCなどに有力選手が出づらいというのは仕方がない面もありますよね。自分たちがお金を払って集めた戦力をそこで無駄に使われたら困るし、ましてや故障なんてされたら論外だ、という。 そこの補償も含めて、トータルで体制を整備してくれたら、もちろん落合さんも(WBC日本代表の)監督をしたかもしれないし、中日ドラゴンズの選手も参加したかもしれない。それは理にかなっているというか、そういう考え方もあるということですよね。

だから、(落合さんは)“一石を投じる”と。既存のものに一石を投じる。
あの後、侍ジャパンも色々と整備されたんですよね。振り返ってみると、(落合さんの言動は)そのきっかけにはなったんですよね。



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そして今回お送りしたインタビュー、ディレクターズカット版は音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
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