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2022.05.21

北京五輪・スキージャンプ混合団体の裏側「チームで一丸となって飛ぶ」

今週の「SPORTS BEAT」は、3大会連続オリンピック出場を果たした、スキージャンプの伊藤有希選手にリモートでお話を伺っていきました。
伊藤有希(いとう ゆうき)選手は、1994年北海道生まれ。
2009年、14歳の若さで世界選手権に初出場。
2017年には、ワールドカップで初優勝を果たします。
女子・ノーマルヒルが正式種目となった2014年のソチから、平昌、北京と、3大会連続でオリンピックに出場。
北京オリンピックでは2種目に出場し、個人ノーマルヒルでは13位に。
小林陵侑選手、佐藤幸椰選手、高梨沙羅選手らと出場した混合団体では、4位に入賞されました。


──3度目の出場となった北京オリンピック。振り返っていかがですか?

シーズンの初めは「今までで一番」というくらい苦しいスタートになってしまって、前半戦はかなり厳しい状態が続いたんですけれども、何とかオリンピックの出場権を得ることができて、そして、オリンピックまでは自分ができる準備は全てして臨めたと思いますし、それをシーズン後半にも繋げることができて、4年ぶりにワールドカップの総合ランキングもトップ10以内に入って終わることができたので、どん底からのスタートにはなったんですけれども、1シーズン5ヶ月ぐらいの短いシーズンだったんですが、たくさんの経験をさせていただきました。

──日本中、そして世界中で話題になった、オリンピックで初めて採用された混合団体。あの時の状況というのは、選手側ではどうでしたか?

過去2大会のオリンピックは、女子は個人戦1試合しかなかったんですね。でも今回から混合団体が採用されて、各国とても気合も入っていたと思いますし、今までワールドカップなどでは同じ種目はありましたけれども、オリンピックの舞台では初めてだったので、また違った雰囲気で試合ができたと思います。

──高梨沙羅選手が1本目を飛んでから失格という、ちょっと衝撃的な出来事があったんですけれども、あの時、チームとしてはどういう状況だったんですか?

1本目の上位8チームが2本目に残ることができるんですが、2本目に行けるかどうかは最後の選手が飛ぶまでわからなかったんですけれども、でもなんとか2本目に残ることができたので、「2本目もチームで一丸となって飛ぼう」ということで、決心して飛びました。

──高梨選手がちょっと泣き崩れてしまって、2回目に飛べるのかちょっと心配だったんですけれども、伊藤選手は高梨選手に声をかけたりされたんですか?

はい。本当に絶対に無理はしてほしくなくて。もし2本目を飛んで怪我をしてしまったら…それが一番怖いことだったので、「絶対に無理はしないで」と声をかけたんですけれども、高梨選手自身が「飛ぶ」ということで、飛んでくれて。本当に素晴らしいジャンプをしてくれたなと思っています。

──あの状況の中で2回目のジャンプも見事なジャンプでしたし、最終ジャンプの小林陵侑選手が飛ぶ時には“メダルも届くのかな”というぐらい(の大きなジャンプで)、日本チームのチームワーク、実力というものを見せられたんじゃないかなと思いました。

他の3選手はもうこれ以上ないくらい距離を伸ばしてくれて、本当にベストなジャンプをしてくれたと思うんですけれども、私があと5m飛んでいればメダルを獲ることができたので、本当に申し訳ない気持ちと悔しい気持ちでいっぱいになりました。

──やっぱり、スーツの膨らみ、余白というのは、ちょっと変わっただけでも飛距離にかなり影響するものなんですか?

台の大きさやその選手のジャンプのスタイルにもよるので一概には言えないんですが、空気抵抗との勝負の競技なので、逆に大きすぎても空中でバタバタしてしまって、空気抵抗になって距離が伸びない。空中でスピード減速させてしまう要因にもなるので、一概に「大きければいい」というものでもないんですよね。なので、その辺の調整が難しいですし、いつもギリギリまでやりますね。

──ジャンプスーツ以外にも、僕達が知らないような細かいルールがあるんですか?

実は、私たちが身につけている道具全てにルールがあります。スキージャンプって、体重が少なすぎると失格になってしまうんですよ。自分の身長の高さで最大限履けるスキーの長さが決まっていて、身長でスキーの長さは決まるんですが、そのスキーの長さに見合った体重も設定されてるんですよね。
体重が指定のスキーの長さより少ないと、スキーも短くしないといけない。なので、体重が少ないとそれに合わせてスキーを短くして、検査員の方に呼ばれたら、コントロールルームではまずスキーの長さを聞かれて、自分の身長とスキーの長さで「あなたの体重はこれですね」という表があるので、体重を測って、その(規定の)体重以上あればいいんですけど、少ないと失格になってしまう。

──それは競技をしている時点で、ということですよね。

そうです。飛び終わって呼ばれた時に(チェックされる)。

──そうなると、いつ何を食べるかによって、ちょっとお腹が減って(体重が)少なくなってしまう場合もあるんじゃないですか?

そうなんですよ。なので、常に体重計は持ち歩いて、チェックしながら飛んでいます(笑)。

──そして、金メダルにも輝いた小林陵侑選手。本当に素晴らしい活躍をされていますけれども、小林選手はどんな方なんですか?

私自身はあまり運動も得意じゃないですし、あまり感覚で競技ができるタイプではないんです。初めてやる競技とかも全然できないですし、ジャンプに関しても、“感覚だけで飛ぶ”というのは難しいタイプなんですが、小林選手は、初めての動作や初めての競技でも、目で見てすぐにできちゃうんですよね。
ジャンプに関しても、もちろん小林選手自身すごく考えて飛んでいるんですけれども、自分が良かった時の感覚をすぐにフィードバックして飛べたりするので、私にないところばかり持っていて、一緒にいてとても勉強になりますね。

──さあ、この番組ではゲストの方にcheer up songを伺っています。伊藤選手の心の支えになっている曲を教えてください。

札幌出身の歌手の方で、福原美穂さんの「恋はリズム〜Believe My Way〜」という曲です。
私が初めての国際大会に出場したのが小学校6年生の冬だったんですけれども、その直前に、現地で札幌の世界選手権の団体戦を観戦しまして、そこで日本チームが銅メダルを獲ったんですよね。その時に会場で流れていた曲で、小学校6年生ながらとても感動したのを覚えていて。その曲を聴くと、いつもその時の興奮、感動、そして元気をもらえる感じがしています。

──最後に、これからの目標を聞かせてください。

オリンピックのメダルを目指して小さい時から飛んできましたので、もちろんオリンピックのメダルというのは絶対的な目標なんですけれども…でも、(それとは別に)フレッシュな目標があって。
まだ誰にも言ったことがないんですけれども、「フライングヒル」というのはご存知ですか?

──大きなジャンプ台ですよね。

そうです。小林選手が銀メダルを獲ったラージヒルでもK点が120mほどのジャンプ台なんですけれども、世界には200m以上飛べる大きなジャンプ台があって、今まで女子の選手はそれを飛ぶのが許されていなかったんです。試合もなかったですし、飛んだことがある(女子)選手も、現役では多分1人くらいしかいないくらいのジャンプ台で、すごくそれを飛んでみたくて。ずっと機会を伺って早く飛べるようにならないかなと思っていたんですが、来シーズン、女子にも試合ができたんですよ!
でも、やっぱり条件があって、全員が飛べるわけではないんです。その試合までの時点で、世界ランキングトップ15までに入っている選手しか(試合に出場することが)許されないんですよ。
なので、まずはその時点でランキング15位以内にちゃんと入って、フライングヒルを飛んで、230m以上飛びたいなと思っています! それが私の今一番フレッシュな目標です。

──意外と近い、具体的な目標ですから、ぜひ頑張ってその出場権を獲得してください。応援してます!

ありがとうございます!


今回お話を伺った伊藤有希選手のサイン入り色紙を、抽選で1名の方にプレゼントします。 ご希望の方は、番組公式ツイッターをフォローして指定のツイートをリツイートしてください。当選者には番組スタッフからご連絡を差し上げます。

そして今回お送りしたインタビュー、ディレクターズカット版は音声コンテンツアプリ『AuDee』で聴くことができます。
放送できなかったトークが盛りだくさん! ぜひ聴いてください!

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