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2024.04.20

ラグビー界のレジェンド登場!「ラグビーは社会の縮図」

今週の「SPORTS BEAT」は、日本ラグビー界のレジェンド・松尾雄治さんをゲストにお迎えし、お話を伺っていきました。
松尾雄治さんは1954年、東京都のご出身。
お父様がラグビーをされていたこともあり、子供の頃からラグビーと親しみ、明治大学では4年生の時に司令塔として初の日本一に輝きます。
大学卒業後は新日鉄に入社。1979年から選手、主将、監督兼選手として社会人選手権、日本選手権7連覇を含む8度の日本一を達成。
日本代表としても24キャップを重ね、「日本ラグビー史上最高のスタンドオフ」と呼ばれていらっしゃいます。



──輝かしい経歴の持ち主。本当にレジェンドですよね。

ラグビーをやっていた人が聞いたら本当に恥ずかしいんですけれども、ラグビーは1人じゃ何もできないんです。みんなでやっていくものなんですね。
ラグビーというのは、1人を評価する場面というのは本当に少ないんです。フィールドの15人、1人1人役割が違って、それをしっかりやって初めていいプレーが生まれるんですね。
それがなぜか、「どこどこのチームの〇〇選手がすごい」とか言われてしまって…特にバックスの選手は1人でボールを持ったりする時間も長かったので、そういう風に見られがちなんですよ。
だから、かわいそうなのはフォワードの選手ですよね。(試合の)翌日の新聞なんかを見ると、「FW」で終わりですから。「FWみんな頑張った!」みたいなね(笑)。バックスは、「大畑君、独走トライ!」とか。

──今は時代が変わってきて、「FWがジャッカルを決めた!」とか?

(時代が)良くなりましたよね。安心しております。

──松尾さんの時代のラグビー人気はすごかったですよね。

まあ、僕が大学に入った頃から、なんとなく観客の方が集まるようになってきたということは事実ですね。

──それまでは大学ラグビーもそこまでは盛り上がっていなかった?

あまり盛り上がってはいなかったと記憶しています。
僕が(大学)1年、2年、3年、4年になっていくにつれて、秩父宮ラグビー場では(観客が)入りきらなくなって、国立競技場に移るわけです。
ですから、その辺から(ラグビーが)すごく人気になってきたということは言えると思います。

──また現在、ラグビー熱、人気がすごく上がってきました。
先月(3月)16日に開催されたリーグワン第10節トヨタヴェルブリッツ対東京サントリーサンゴリアスで、リーグワンのリーグ戦1試合最多入場者数記録となる34,568人が来場。また今月7日には、ジャパンラグビー リーグワンの今季総入場者数が過去最高を更新し、合計79万6928人に到達しています。今、改めて、日本のラグビー人気の理由というのは?

外国の選手たちも少しずつ入ってきて、日本では見たことのないようなプレーが随所に見られるようになって、“やっぱり外国の選手は上手いな”、“外国の選手はすごいな”と思うようなところもありましたね。

──他の競技だと、帰化選手はいますが、ラグビーほど海外出身の選手がプレーしているスポーツはないですよね。

そうなんですよね。逆に言うと、子どもの頃からずっと(ラグビーを)やってきて、大人になって“社会人でもっとやろう!”と思ったところに、同じポジションの外国選手がたくさん入ってきてしまう、というような、(日本人選手にとっては)ちょっと残念なところもあります。
もちろんそれにも勝たなければいけないんですが、やっぱり外国の選手は身体が大きいですし、今のラグビーのルールは、(身体が)大きくてパワーがある選手たちのぶつかり合いのスポーツになってきてしまったので…。僕みたいな小さい選手は、今はあまりいませんよ。だから、早く引退してよかったなと思います(笑)。

──松尾さんの時でも、大きな選手にぶつかっていくというのは嫌だった?

嫌でしたよ。ただ、当時のルールは、ぶつかって選手が倒れたら、倒れた瞬間すぐにボールを離さなきゃいけなかったけれども、今は倒れても、ワンプレー、(ボールを)持っていられるんです。いわゆる“ノット・リリース・ザ・ボール”(を取られるまで)が(以前よりは)長くなった。その時間の猶予があって、タックルしても、ワンプレー味方の方へボールを送れるという。だから、いくらタックルしてもボールがつながるんですね。


──フェーズ(連続して攻撃している回数)がつながっていくとお客さんは盛り上がるんですよね。

そうなんですけど、やっぱりラグビーというのは、フォワードの大きな選手がぶつかり合って、痛い思いをして、ボールを取るでしょう? そのボールが全員の手をまわって、最後にウィングの選手がトライをする。
みんなの痛い思いが1つのラグビーボールを伝わって、「あとは頼むよ! 俺はここまでしか行けないけど、次、頼むよ!」と。ラグビーというものには、そういう精神があるんですね。それで最後にトライをする。
ラグビーの試合は80分間あって、今のルールでは、1人がボールを持っている時間は、(平均で)1分45秒とか、2分ぐらいなんです。そうすると、“あと80分弱は何をしてるの?”ということなんですよ。あと80分弱は、ダミーランというか、味方をフォローするために走って、何もなくて戻ってきて、また走って、を繰り返す。味方のフォローのために走って走って走って。
だから、それだけを見ていると、“俺は今日何をやったんだろう”という感じの選手もいますよ。でも、「俺が横についているぞ!」と走ってくれるから、そのまま抜けることもあるんです。誰もついていなかったら、たった1人だったら、どんな選手も、ペチャン!と終わりですよ。
昔は英語がわからないから、“無駄走り”なんてことを言われました。ほとんどは無駄走りなんですよ。

──それが実るか実らないかわからなくても、常に走っている?

常に走り続けている。そうすると何かがあるんですよ。

──ラグビーは、大きな選手が、フィジカルも鍛え、さらに速く走るということを両立をさせなくてはいけないんですよね。

そういうことなんです。今のラグビーは本当に、大きな選手もバックスのプレイヤーのようにハンドリングがとても良くなった。昔は、ボールを持ったらただ真っ直ぐ行く、だけみたいなね。

──ラグビーの技術はどんどん進化していっているんですか?

本当に進化していますよ。特にフォワードプレイヤーなどは。

──ワールドカップ2015年イングランド大会で、あの南アフリカ相手に、ジャイアントキリング。あれで一気に、世界からの評価も、国内での注目度も変わりましたよね。

やっぱりワールドカップになると、“どうしても、どうやっても勝ちたい!”という気分になりますよ。でもやっぱり、「最後まで一生懸命戦おうぜ」という気持ちが大事じゃないですか。勝っているからダラッとするとか、“もう点差が開いているからどうでもいいや”とか、そう思った瞬間にどんどん点を取られてしまうことがあるんです。
やっぱりスポーツというのは最後の最後まで諦めないということが大事で、オリンピックであれば、金メダルに手が届かなかったら次は銀メダル、銀メダルに手が届かなかったら銅メダルだと、そういう気持ちを持っていかなければいけないと思うんですよね。“金メダルでなきゃいらないや”、なんて気持ちになってしまうのもわからないではないけれども、そうではいけないと思います。
…なんかいい話になっちゃったな、今日(笑)。

──(笑)。最後まで諦めず、最善を目指す姿に心打たれますよね。

そうでしょう? ラグビーというのは、社会の縮図だと言われているんです。
ラグビーの選手たちは、みんなそうやって、“俺ができないことは誰かがやってくれる”、やってくれたことに対して“俺もこうやらなきゃいけない!”、そういうことを考えて生きているんです。

──ラグビーほど極端に役割が違うスポーツは他にないですもんね。

そうですよね。だけど、僕は昔、王貞治さんと少しだけ話をしたことがあったんですが、王さんが「僕がいくらホームランを打っても1点だよ。けれど、いい状況を作ってくれるのは味方なんだ。塁に滑り込んで行って、それからバントをして、相手のピッチャーにプレッシャーを与える。そうするとやっぱり(相手のピッチャーは)変なボールは投げられない。例えば、ランナーが3塁にいたら(相手は)フォークボールとかは投げられないから、そういう時に僕が打ったら何点にもなる。これもひとつのチームワークなんじゃないかな」ということを言われた時に、やっぱり王さんという人もそういうことを考えているんだなと思いました。
1人でやっていることというのは、本当にちょっとなんですよね。その積み重ねですから。


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