小澤酒造株式会社
小澤酒造[青梅市]

豊かな湧き水が生んだ
世界に誇る一流の酒
古くは江戸時代初期から、都の水源として重宝されてきた多摩川。上流部では、清らかな水流が時には飛沫を上げながら、山間を縫うように走っています。
中でも青梅市にある「御岳渓谷」周辺の渓流は、日本の名水百選にも指定されているほどの美しく澄んだ水域です。
この渓谷のすぐそばで、美味しい水を生かした酒造りに励んでいる蔵元が『小澤酒造株式会社』さんです。
1702年(元禄15年)にはすでに酒造業を営んでいたという老舗蔵で、代表銘柄はサワガニのマークが目印の地酒『澤乃井』になります。
広報担当の吉﨑真之介さんにお話を伺いました。

「当蔵は、江戸と甲州を結ぶ青梅街道筋沿いに位置し、最寄りはJR青梅線の沢井駅になります。
こちらは創業当時、武蔵の国、澤井村と呼ばれる地域で‶豊かな水が沢となって流れていること〟が地名の由来でした。
そこから『澤乃井』と命名したのです。現在は、常時30種類ほどの商品を取り揃えています」(以下、吉崎さん)
酒にとっては命ともいえる水。澤乃井は、まさに恵まれた水環境から生み出されたお酒なんですね。現在は、2種類の湧き水をお酒によって使い分けているそうです。
「ひとつは‶蔵の井戸〟から汲まれる湧き水です。蔵のすぐ裏手にある井戸で創業当時から使っているんです。そして、もう一方の湧き水が、多摩川の対岸にある‶山の井戸〟から汲まれたものです。実はそれぞれ水質が異なり、蔵が硬水、山が軟水となっています。
ただ、両方に共通するのが、風味や色合いに影響する鉄分やマンガンといった成分がほぼ検出されないこと。これは酒造りにとって、大変重要な要素でして、仕込み水としての要件を高いレベルで満たしています」
酒造りに適した水が安定的に確保できることが、蔵が長く続いてきた理由のひとつでもあると話す、吉崎さん。さっそく、こだわりの水を使ったイチオシの銘柄を教えて頂きました。
「いま一番オススメしたいのは、澤乃井の『純米大吟醸』です。こちらは酒造りに適した米の中でも最高と謳われている山田錦を50%まで精米して贅沢に使っています。
さらに、‶寒仕込み〟という寒い時期に仕込む製法で、丁寧に作り上げているんです。なので、とても香り豊かですし、コクもあるお酒です。
そして、こちらの純米大吟醸は、今年フランスの日本酒品評会『Kura Master 2021』で、最高賞となるプレジデント賞を受賞させて頂いたんです」

『Kura Master』とは、パリで開催される日本酒のコンクールで、現地の有名ソムリエやホテル関係者など、本場の食のプロたち72名によってテイスティング審査される品評会。
今回は312蔵から960銘柄がエントリーされ、その中で澤乃井純米大吟醸は、栄えある№1を獲得したのだとか! つまり、世界に認められた一流の日本酒なのです。
それでは、その日本酒界の頂に立った一杯を味わわせてもらいましょう…!
まずグラスに注ぎ入れてみると、清涼で優雅な吟醸香がスッと香ってきます。マスカットのような爽やかな甘みも含んだフレーバーです。
口に含むと、こだわりの米が生んだふくよかな味わいと旨味を感じることができ、キリッとしたスパイス感も微かに舌に響きます。湧き水が生んだ滑らかな舌触りも絶妙。柔らかな余韻も残して、最後の最後まで楽しめる、まさに至高の一杯でした。
「香りが特徴的ですので、それを楽しむという意味では、軽い味付けの料理がいいかもしれません。
また、魚介の旨味との相性が良いので鮎の塩焼きや白身のムニエル、アサリの酒蒸しなどがマッチしやすいかと思います。和食だけでなく洋食にも合う味わいかと思います」

ちなみに『Kura Master』の評価基準には「食中酒」としての役割も審査されているそうなので、料理に寄りそう味わいであることも認められているんですね。ぜひ特別な食事の際に飲み合わせてみたいですね。
また、小澤酒造さんの魅力は酒蔵自体にもあります。都心から1時間半ほどでアクセスできる現地の蔵では、酒蔵見学ができるのはもちろんのこと、敷地内に利き酒処やレストラン、庭園や美術館、バーベキュー場まであり、テーマパークのごとく丸一日楽しめる観光スポットになっているんです。

「蔵見学では、創業の時代に建てられた元禄蔵などをご覧になって頂き、その歴史を感じて頂きたいですね。見学の後には、利き酒処で常時10種類ほどのお酒を飲み比べできます。
また、庭園内の茶屋で蒸したての酒饅頭が食べれたり、お酒造りと同じ水を使ったお豆腐や湯葉も作っております。お土産では、酒粕を使ったわさび漬けもオススメです。
酒粕のコクと奥多摩名産の香高いわさびの組み合わせが、おつまみにぴったりです」

お酒好きにとっては楽園のような場所ですね! 実際に足を運んでもらうことよって、お酒の味わいもより感じることができる、と吉崎さんは言います。
「現在、周囲の方々とも協力しつつ、より多くの方が観光に来ていただけるよう工夫しています。御岳渓谷には遊歩道がありますので、そちらの終着地としてお酒を楽しみに散歩してくる方などもいらっしゃるんですよ」
清流を眺めながら、至極の一杯を楽しんでみては?
