yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百四十四話 自信と謙虚の間で生きる -【長崎篇】俳優 大滝秀治-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百四十四話自信と謙虚の間で生きる

長崎県北西部に位置する、平戸市。
高倉健最後の主演作品、映画『あなたへ』のラストシーンは、その漁港で撮影されました。
『あなたへ』が最後の映画作品になった、もうひとりの名優がいます。
大滝秀治。
高倉健は、大滝との平戸で撮られたシーンで、心から涙を流したと言います。
高倉健はこう振り返りました。
「あの芝居を間近で見て、あの芝居の相手でいられただけで、この映画に出て良かったと思ったくらい、僕はドキッとしたよ。あの大滝さんのセリフ。『久しぶりに綺麗な海ば見た』の中に、監督の思いも脚本家の思いもみんな入ってるんですよね」。

大滝は、劇団民藝の創設者、宇野重吉に常に言われていたことがありました。
「台本の台詞の活字が見えるうちは、まだまだ『台詞』だ。活字が見えなくなって初めて、台詞が『言葉』になる。つまり舞台は、言葉だ」
大滝は、とにかく台本を読みました。誰よりも、何度も何度も。
それでも、宇野に注意されます。
「おまえの台詞は、活字が見えるんだよ!」
以来、大滝の台本は、いつもボロボロになりました。
役をもらうと、必ず2冊もらうようにしたといいます。
読んで読んで読み込むうちに、やがてセリフが沁み込み、自分の体に同化していく、そんな瞬間をただひらすら待ったのです。
謙虚さを持って、台本に接し、やがて自信に変えていく。
それこそが大滝の演技の原点だったと言えるかもしれません。
謙虚さと自信の間で役者人生を生き抜いた、大滝秀治がつかんだ明日へのyes!とは?

名優・大滝秀治は、1925年6月6日、新潟県で生まれた。
直江津の先の柿崎という駅から、およそ8km山に入った六万部という村が、母のふるさと。
家族は東京に住んでいたが、医者に実家で産むように勧められた。
母は神経痛を患い、強い薬を飲んでいたという。
秀治が生まれたとき、取り上げた産婆が腰を抜かすほど驚いた。
髪が、真っ白だった。日を追うごとに色が濃くなると思われたが、薄い灰色になるくらいで眉まで白い。
東京の文京区根津で育ったが、誰一人、彼の髪が灰色だということを口にしなかった。
小学校で喧嘩をしても、髪の毛のことを言う生徒はいない。
下町特有のなんでも受け入れる優しさがあったのだろう。
そのおかげで、大滝は小学6年まで、自分の髪の毛が他のひとと違うことに気づかなかった。

さらに大滝は、母の大きな愛に包まれて成長した。
小学校を卒業する前に、担任の先生が「クラスみんなで富士山に登ろう!」と提案。
ワクワクした。積み立てをする。楽しみが膨らんでいく。
でも、いよいよ登山という3日前に、麻疹にかかってしまう。
泣いた。「行きたいよう、ボク、富士山、行きたいよう」。
母は、言った。「仕方ないねえ、じゃ、あたしが代わりに行ってあげる」。
子どもたちに交じって、母は登った。帰ってくるなり、大滝に話す。
「秀ちゃん、行かなくてよかったよ、行きも帰りも坂ばっかりだったよ」
大滝は、そのときの母の優しい声を、生涯、大切な思い出として心にしまった。

俳優・大滝秀治にはもうひとつ、大事な母の思い出があった。
小学校を卒業して、板橋にあったある中学を受験する。
筆記試験。一次、二次と合格。あとは面接だった。
母は、面接の前に大滝を便所に連れていき、マッチ箱を取り出し、マッチを数本すり、それで息子の眉を黒くした。
母と2人で面接の部屋に入る。
4、5人の試験官が、ずらっと椅子に座っていた。
その試験官の真ん中には、配属将校が軍刀を手にしながら、肘(ひじ)を張って、大滝親子を睨むように見る。
「おおたき、ひでじ、です」
大滝が言うと、将校は言った。
「キミ、眉、画いてるの?なんで眉、画いてるの?」
母はその言葉を聞くと、いきなり大滝の手をとり、面接の部屋を飛び出した。
長い廊下をただただ無言で歩く。つかまれた手が痛かった。
小学校の担任の先生に電話した。「あの学校、やめました!」
その夜、大滝の隣で眠る母の体は一晩中震え続けた。
母は、泣いていた。
背中合わせに眠る母の震えを、大滝はどうすることもできなかった。
そのときはじめて、自分がひとと違うということに気がついた。
「お母さん、ごめんなさい。僕が普通じゃなくて、ごめんなさい」

大滝秀治は、小学5年生のときに中耳炎になった。
耳の鼓膜を切開。そのときから、右耳は完全に聴こえなくなった。
よく聴こえないから、ひとの顔を見る。ひとの口元に集中する。
その積み重ねが、役者という職業の武器になった。
役者は、自分の演技を見せびらかすものではない。必ず、相手がいる。
独り芝居でも、誰かに語りかける。
誰かに接するとき、謙虚になる。
ただ謙虚なだけだと、舞台で演じるのが怖い。役者には自信が必要だ。
自信の上には、うぬぼれがある。謙虚の下には、卑屈がある。
自信と謙虚のあいだで、一生懸命生きていく。
耳がよく聴こえず、肺を病み、腰に持病を抱えた大滝秀治だからこそ、到達できた境地があった。
舞台に出るということは、借りを返すということ。
死ぬ思いで舞台をやり遂げるたびに、彼は思う。
「ああ、これでまたひとつ、借りを返せた」。感謝があった。
自信をつけるための、たゆまぬ努力があった。
自分はひとと違う。
だからこそ、頭(こうべ)を垂れて台本に向き合う。
ボロボロに擦り切れるまで、台本を読む。
それでようやく、借りを返す。
そして、それは自分の舞台をどこかで見ている母への手紙でもあった。
「お母さん、ごめんね、そして、ありがとう」

【ON AIR LIST】
If I Go, I'm Goin / Gregory Alan Isakov
あい の ひびき / クラムボン
Make You Feel My Love / Adele
She / Charles Aznavour

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとアスパラガスのミラノ風

俳優・大滝秀治の最後の映画作品となった『あなたへ』は、長崎県平戸市で撮影されました。今回は、その平戸の特産野菜、アスパラガスを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとアスパラガスのミラノ風
カロリー
128kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • アスパラガス
  • 1束
  • 1個
  • オリーブオイル
  • 大さじ1強
  • パルメザンチーズ
  • 大さじ1
  • 少々
  • 黒こしょう
  • 少々
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、アスパラガスは硬い部分の皮をむき、2等分の長さに切る。
  • 2.
  • フライパンに少量のオリーブオイル(分量外)を熱し、中火で目玉焼きを作る。
  • 3.
  • 水(1.5カップ・分量外)を沸騰させ、塩(小さじ1・分量外)、アスパラガスを入れ、1分ほど経ったら霜降りひらたけを入れ、30秒程茹でてザルにとる。
  • 4.
  • (3)を器に盛り、(2)の目玉焼きをのせ全体にパルメザンチーズ、塩、黒こしょうをふりオリーブオイルをまわしかける。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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