yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百四十六話 野心に忠実であれ! -【長崎篇】商人 トーマス・ブレイク・グラバー-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百四十六話野心に忠実であれ!

潜伏キリシタン関連での世界遺産登録で注目を集める、長崎。
世界遺産に含まれる大浦天主堂の隣に、長崎の観光スポットの定番のひとつ、「グラバー園」があります。
長崎港を見下ろす高台にある、優雅な庭園。その広さは、三万平方メートル。
あたりには季節の花々が咲き誇り、さっと吹き抜ける風が心地よく頬をなでていきます。
ここは、かつて長崎に暮らしたある外国人の敷地でした。
その外国人とは、日本の近代化の礎を築いた、トーマス・ブレイク・グラバー。
スコットランド出身の商人だったグラバーの身辺には、さまざまな風評が渦巻いています。
「金の亡者、冷酷無比の武器商人」「日本の夜明けのために尽力した文明開化の功労者」「秘密結社のスパイ」「坂本龍馬の後ろ盾になった人情派」
それらを全て差し引いても、グラバーの功績は歴史が証明しています。
日本で初めて蒸気機関車を走らせた男、長崎を造船の街として知らしめるために造った西洋式ドック。
炭鉱の経営に、お茶の貿易や国産ビールの開発。
150年前の日本になくてはならない「挑戦」という二文字を、計画、実践したのです。
彼は日本人の女性と結婚、外国人としては異例の勲章を受け取り、文字通り、日本に骨をうずめたのです。
弱冠21歳で日本にやってきた異国の若者が、なにゆえそこまで日本にのめり込んだのか…。
そこには、彼の野心がありました。
幼い頃、いつも眺めていた、海。
「あの海の向こうには、いったいどんな世界があるんだろう。たった一回の人生、ボクはここから飛びだして、全部知りたい」
野心を持ち続けることができた、幕末の偉人、グラバーが人生でつかんだ明日へのyes!とは?

幕末の偉人、トーマス・ブレイク・グラバーは、1838年6月6日、スコットランドに生まれた。
父は沿岸警備隊の一等航海士。グラバーは、父が大好きだった。
いつも威厳をもって子どもと接する姿を見て、幼いながらに「このひとに認められたい」という思いを強く持った。
グラバーが生まれたフレーザーバラ(Fraserburgh)という漁村は、厳しい自然環境だった。
1年のうち半分は、いつも冷たい風が吹き荒れる。北海の身を切るような風は、一瞬で体温を奪った。
よそ者がやってきても、1か月ももたない。みんな風にやられて去っていく。
でも、グラバーは海を見るのが好きだった。
吹きすさぶ風を一身に受けながら、いつまでも海を眺める彼の姿を、村人たちは不思議そうに見ていた。

「あの先には、ボクが知らない世界がある」
それを空想するだけで、ワクワクした。
海や港は彼にとって、野心という種を育てる最上の畑になった。
兄弟の中で群を抜いていた、グラバーの卓越した鑑識眼や知能に父もまた、驚いていた。
「この子はもしかしたら、とんでもなくでかいことをやってのけるかもしれない」……密かに思っていたという。
ただ、その「とんでもなくでかいこと」が何なのか、想像はつかなかった。

長崎の観光スポット、グラバー園のトーマス・ブレイク・グラバー。彼の父は海軍大尉で沿岸警備隊の司令官だった。
転勤が多く、港々を転々とした。
そのたびに、子どもたちは転校。
あるとき、グラバーは父に初めて反抗した。
「ボク、今の学校を移りたくない!」珍しく、大声を出してあばれた。
理由は簡単だ。好きなクラスメートがいた。名前はエリザベート。初恋だった。
「あの子に逢えなくなるなんて、考えられない!」
でも、父は諭した。
「それでも、家族は移る。トーマス、いいか、それが人生だ」

翌日、グラバーは父に言った。
「パパ、昨日は取り乱してごめんなさい。わかりました。ボクは転校します。きっと大人の世界では、こんな理不尽なことが当たり前なんだよね。いま、ボクはそれを学んでいるんだ。この世は、道理が通らないことがまかりとおる。早くに学べてよかったよ。ありがとう」
父は驚いた。10歳ほどの子どもが言うセリフではなかった。
そのとき、グラバーの心にある思いがしっかり刻まれた。
「人生がそもそも理不尽なら、ボクは、道理を越える生き方をする!」

日本の近代化の礎を築いた、トーマス・ブレイク・グラバー。子どもの頃、引っ越した先のアバディーンという港町が、たいそう気に入った。
小さな造船所がいくつもある。
漁船や蒸気船、貨物船など、さまざまな船が停泊していた。活気があった。
船から降りてくる船乗りが話す異国の物語に高揚した。
港に通う。学校で習った旋盤技術で、造船所を手伝ったりした。
一方で、海難事故も目撃。無残に座礁して、めちゃくちゃになった船を見て、自然の脅威に身震いした。
港は最大にして最良の学校だった。
そして、いつも思った。
「この海の先の異国に、行ってみたい。そこでボクは、生きる。一生、ここに帰ってこなくてもいい」。

ギムナジウムを卒業すると、兄たちが営む商社に就職。
念願かなって海を越え、上海に赴任した。でも、肌が合わない。仕事も雑務ばかり。
そんなとき、上海店の上司がこんな話をした。
「グラバー君、日本という国を知ってるかい?これから、間違いなく発展する国になるよ。ウチの会社が今度長崎に進出するんだが、どうだろう、長崎に人生を賭けてみないか?」
フツウであれば、断ったに違いない。
でも、グラバーは、二つ返事でOKした。
「行かせてください!ボクは、もっともっと異国を知りたい。港を見るたびに、ボクの心がうずくんです。ボクの野心が頭をもたげるんです」。
トーマス・ブレイク・グラバーは、幼い頃、体で浴びていた北海の冷たい風を常に忘れなかった。
この先には何があるだろう、この海の向こうで父に褒められるような仕事がしたい。
彼の野心の始まりには、邪念がなかった。
だから続く。
心に港を持った人間は、いつでも船出できる。

【ON AIR LIST】
遠い空 響く声 / カーネーション
ドック・オブ・ザ・ベイ / Sergio Mendes & Brasil '66
High Hopes / Paolo Nutini
The Whole of the Moon / The Waterboys

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの大和芋がけ

今回は、幕末の偉人、トーマス・ブレイク・グラバーがかつて暮らしていた長崎の特産野菜、ほうれん草を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけの大和芋がけ
カロリー
213kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • ほうれん草
  • 1/2束
  • 大和芋
  • 200g
  • 出汁
  • 1カップ
  • しょう油
  • 大さじ2
  • みりん
  • 大さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。
  • 2.
  • (1)を出汁でさっと煮る。
  • 3.
  • 霜降りひらたけを取り出した(2)にしょう油・みりんを加え、合わせ出汁をつくり、冷ましておく。
  • 4.
  • ほうれん草は軽く湯がいて、食べやすい大きさに切っておく。
  • 5.
  • 大和芋をすりおろし、(3)と合わせる。
  • 6.
  • 霜降りひらたけとほうれん草を器に盛り、(5)をかける。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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