yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百六十五話 少しだけ、無理をする -【愛知篇】作家 城山三郎-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百六十五話少しだけ、無理をする

愛知県名古屋市に生まれた、経済小説の草分けともいえる作家がいます。
城山三郎。本名、杉浦英一。
ペンネームの城山という名は、彼が30歳のとき、引っ越した場所に由来しています。
住んだ場所、名古屋市千種区には、城山八幡宮があったのです。
城山八幡宮は、織田信長の父が築城した末森城の敷地です。
いっとき城はすたれましたが、明治になり、復活しました。
原型をとどめる城の敷地は、およそ一万坪。
名古屋の中心街にありながら、そこには静謐な空気が漂っています。
城山八幡宮の雰囲気をそのままに、城山三郎の小説は凛とした香りに包まれ、読むひとの心に明日への希望を授けるのです。
特に逆境にさからうように生きてきた人物を好んで描きました。
NHK大河ドラマの原作にもなった『黄金の日日』。
戦後、A級戦犯として裁かれた第32代総理大臣、広田弘毅の人生を追った『落日燃ゆ』。
東京駅で銃弾を受け、担架で運ばれるとき「男子の本懐である」という名言を残した宰相、濱口雄幸を描いた『男子の本懐』。
渋沢栄一の生涯を丁寧に書いた『雄気堂々』。
自分の利を追うことはなく、国のために義を貫いた先人にも愛を注ぎました。

城山三郎自身、いつも自分を追い詰め、困難な状況を厭いませんでした。
彼は、こんな言葉を残しています。
「人生は、挑まなければ応えてくれない。うつろに叩けば、うつろにしか応えない」。

彼のエッセイに、こんなタイトルのものがあります。
『少しだけ、無理をして生きる』
経済小説の可能性を開いた稀代の小説家・城山三郎が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

作家・城山三郎は、1927年、名古屋市に生まれた。
家は、繁華街、栄でインテリア関連の店を営んでいた。
生粋の名古屋商人。
三郎は、商家の長男として大事に育てられた。
発明好きの父と、短歌や琴を愛する母。
実用的な考え方と芸術的な繊細さを、両親から受け取った。
7歳のとき、一日にして弟と妹を亡くす。
ひとの命のはかなさを感じた。
「死」は、常に自分の傍らにあることを子どもながらに知る。
本を読むのが好きだった。絵を画くのも得意だった。
優秀な成績で小学校を出ると、家業を継ぐべく、商業の学校に入る。
このままいけば、父の跡を継ぐという道を何の疑いもなく歩んでいただろう。
でも、戦争という魔物が彼の人生を襲う。
父も召集され、戦火は激しさを増した。一家で疎開。
名古屋の家は、空襲で焼かれてしまった。
頭のてっぺんからつま先まで、軍国教育にどっぷりつかっていた。
母の反対を押し切り、17歳のとき、自ら海軍に少年兵として志願。
広島の呉に旅立った。
「お国のために、この身を捧げる。それこそ、正しい生き方だ」
この選択が、城山の後の人生に深い影を落とすことになる。
ただ、純粋な少年には、それ以外、自分を生かす道がなかった。

作家・城山三郎は、17歳で海軍に志願。呉の海兵団に入隊した。
毎日毎日、上官に叩かれる。もはや訓練ではない。
戦局は敗戦の色を濃厚に示し、軍隊の雰囲気にも腐敗の匂いが漂った。
焦りと諦め。すぐそこにある「死」。
誰もが耐え難い日々を、ただ耐えていた。
食べるものは粗末だった。
朝も晩も、サツマイモの葉っぱと茎をゆでたもの。痩せていく。
でも、ある日、上官の部屋の近くを通ったとき、驚く。
天ぷらにトンカツ。真っ白なパンが放置され、カビていた。
海軍に志願したことを後悔する暇もなく、特攻隊の訓練基地に送られる。
いよいよ飛び立つ、という前に、戦争は終わった。
ふるさとに戻った城山を待ち受けていたのは、罵詈雑言だった。
「予科練崩れ!特攻崩れ!」
軍国主義を叫んでいた教師は口をつぐみ、自ら志願して入隊した城山は、まわりから責められ、なじられた。
理不尽な価値観の変容に城山は戸惑い、心に大きく深い命題が拡がる。
「人生って、なんだろう」
「社会とか世の中って、いったいなんだろう」

城山三郎は、大学で教鞭をとりながら、小説を書いた。
心に拡がった命題の答えを、小説を書くことで見つけようとしたのかもしれない。
今まで誰も手をつけなかった経済小説というジャンルに挑んだ。
当時の純文学といえば、私小説が多く、恋愛問題、貧困や病気をテーマにしたものがほとんどだった。
『輸出』という作品で文学界新人賞、『総会屋錦城』で直木賞を受賞。
受賞の記者会見の際、「城山さんの師匠は誰ですか?」の問いに、困った。
そもそも文学に徒弟制があるとは思わなかった。
誰も書かなかった小説は、評価が分かれ、酷評もされた。
不眠症になる。

そんなとき、作家の大御所、伊藤整と会う機会があった。
「私はねえ、文学界新人賞の選考会で、あなたの作品には票を入れなかったんだ」
伊藤はそう言った。
「一橋大学の後輩なのに、何もしてやれず、すまない。代わりに、ひとつだけ忠告をしておくよ」
そこで伊藤は城山を見た。
「城山くん、いいかい、あなたはこれからプロの作家としてやっていくのだから、いつも自分を少しだけ無理な状態の中に置くようにしなさい」
この言葉を、城山三郎は生涯、大切に心に留めた。
少しだけ無理、というのがいい。
無理しないのも、無理しすぎるのもよくない。
小説家はインスピレーションが大事。
ぼんやり待っていても、何もやってこない。
日々、少しだけ無理をして、自分に負荷をかけておくということ。
こうして城山三郎は、時代を越えて読み継がれる小説を書き続けることができた。

【ON AIR LIST】
Mr.Bojangles / Sammy Davis Jr.
WAR / Edwin Starr
Dia De Los Muertos(死者の日) / El Haru Kuroi
It Don't Come Easy / Ringo Starr

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと玉ねぎのコンソメ煮

今回は、作家・城山三郎の故郷、愛知県で多く生産されているという、トマトやスナップエンドウを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと玉ねぎのコンソメ煮
カロリー
73kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 玉ねぎ
  • 1個
  • ミニトマト
  • 4個
  • スナップエンドウ
  • 4個
  • 1と1/2カップ
  • 固形コンソメ
  • 1個
  • 適量
  • パセリ
  • 適量
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。玉ねぎは横半分にし、スナップエンドウは筋を取る。
  • 2.
  • ミニトマトは楊枝で穴をあけ、ボウルに入れて熱湯を注いだ後、冷水にとって湯むきする。
  • 3.
  • 鍋に霜降りひらたけ、玉ねぎ、水、コンソメを入れて火にかけ、火が通るまで弱火で10分ほど煮る。
  • 4.
  • ミニトマト、スナップエンドウを入れて、3、4分煮込み、塩で味を調える。
  • 5.
  • 皿に盛りつけ、刻んだパセリを散らす。
  • ※冷やしてもおいしくいただけます。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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