yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百四十七話 感謝の心で生きる -【愛媛篇】俳人 種田山頭火-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百四十七話感謝の心で生きる

愛媛県の松山を終の棲家に選んだ、自由律俳句の俳人がいます。
種田山頭火(たねだ・さんとうか)。
今年、没後80年。
放浪の果てに広島から船に乗った山頭火は、瀬戸内海の夕陽を浴び、四国の地、松山を目にしてこう思いました。
「僕の死に場所は、ここしかない」
『酒飲めば 涙ながるゝ おろかな秋ぞ』
そう詠んだ山頭火は、広島で医者にみてもらいます。
病状はかんばしくありません。
心臓の衰弱。
聴診器からは木枯らしのようにヒューヒューと弁膜の悲鳴が聞こえます。
「僕の病は、申し分ないのですね」
山頭火が言うと、医者はこう返しました。
「あんたは、これまで旅を続け、酒をあおり、句を詠み、好き勝手に生きてきたんだから、いつ死んでも後悔はなかろう」
「はい、後悔はありません。ただ、これ以上ひとさまに迷惑はかけたくないので、ころり往生を願うばかりです」
愛媛の松山では友人たちが、山頭火が棲む庵を探してくれました。
御幸寺山の麓、寺の山門の近くの一軒家。
山頭火はここを、ひとつの草の庵、「一草庵」と名付けました。
『おちついて 死ねさうな草枯るる』
『おもひでがそれからそれへ 酒のこぼれて』
彼は亡くなる前、心が澄んでいくのを感じました。
何も持たず生まれてきて、何も持たず死んでいく。
そして、日記にこう記しました。
「芸術は、誠であり、信である。誠であり、信であるものの最高峰である感謝の心から生れた芸術であり句でなければ本当に人を動かすことは出来ないであらう」
孤高の俳人、種田山頭火が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

放浪の俳人、種田山頭火は、1882年12月3日、現在の山口県防府市に生まれた。
父は地主。大柄で大きな瞳、優しい性格でひとに好かれた。
酒は飲まなかったが、外に女性を囲う。
それも一人や二人ではなかった。
役場の助役になり、ますます地方政治にのめり込んでいく父。
家に近寄らず、別宅ばかりに帰るようになった。
山頭火が10歳を過ぎたころ、母は、自宅の古い井戸に身を投げた。
5人の子どもを残して。
まだ33歳だった。
山頭火は美しい母が自慢だった。
母に頭をなでられると、天にも昇る気持ちになった。
その母が、突然いなくなる。
その喪失感は、のちの人生観を決定づけた。
父はますます家に帰らなくなり、山頭火は祖母の家に預けられることになる。
学校での成績は、常に一番。
同級生が父や母のことで陰口をたたいたり、あざけりの言葉を投げても、淡々とやりすごす。
祖母の口癖は、こうだった。
「いいかい、人間にはねえ、業っていうもんがあるんだよ。誰もが自分の業から逃げることはできないんだよ」

種田山頭火にとって、母は己の全てだった。
絶対的な愛で全てを受け入れてくれる。
その母が、自ら命を絶った。
そのとき、父は温泉で芸者と遊び、すぐに駆け付けることもなかった。
心底、父を憎む。と同時に、母が不憫でならなかった。
幼くして、毎晩同じ夢を見た。
白い着物を着た母が、古井戸に腰掛けている。
白い顔。
濡れた黒髪が頬にまとわりつく。
山頭火を見て、はかなく微笑んだあと、後ろ向きに井戸に落ちていった。
大きな音がする。
ボッチャーーン。
その音は、目覚めてもなお耳の奥で響き続けた。
寂寥感にさいなまれ、夜、眠れなくなる。
中学に入り、俳句を知った。
歌を詠むと、すっと心が楽になった。
『大きな蝶を殺したり 真夜中』
自分のさみしさ、哀しさ、そして、業と向き合うことができた。
ただ、彼を最も苦しめたのは、早稲田大学に進学しても、その学費や生活費を父に払ってもらわなくてはならないこと。
20歳を過ぎ、酒を覚えた山頭火。酒におぼれた。
やがて、父が事業に失敗。
仕送りがなくなるころ、山頭火も神経衰弱でふるさとに戻らざるをえなくなった。

種田山頭火は、再起をかけて父が始めた酒造業を手伝う。
ふるさとの村人は、冷たかった。
女遊びが激しい父と、アルコール依存症で大学を辞めさせられた息子。
そんなレッテルがついてまわる。
早稲田大学では、小川未明か山頭火か、と言われるほど文才を認められていた。
もう一度、俳句をやろう。
句を詠み、ノートに記した。
定型の五七五ではない。自由律俳句。
詠めば詠むほど、傍らに母を感じた。
父と始めた酒造業はあっけなく、廃業。
山頭火は神経衰弱を悪化させ、父は行方不明になった。
「出家しかない」
山頭火は思った。
母を想いながらの巡礼の旅に出かけよう。
思えば、誰かに望まれた命ではない。
母はいなくなり、自分の存在理由を失った。
その日暮らしをしながら、施しの酒をあおり、句を詠んだ。
ある日、気がつく。
「こんな自分が、なぜ生き永らえ、句を詠めているのか」
そこには、誰かの優しさがあった。
誰かの思いやりが、彼の命を救っていた。
そのことに気がついたとき、山頭火は泣いた。
暗闇の境内で、大声をあげて泣いた。
「お母さん、僕はまだ生きていていいんだろうか。僕が詠む句は、誰かを幸せにするんだろうか」
感謝する。
それは放浪の果てに山頭火がたどり着いた新しい境地だった。
今、自分がここにいるのは、自分だけの力ではない。
その事実が、彼の背中を押した。
『この旅 果てもない旅の つくつくぼうし』
『どうしようもない 私が歩いている』

【ON AIR LIST】
BE THANKFUL / The Notations
I NEVER THOUGHT YOU'D LEAVE ME / Ralfi Pagan
LOSING ALL CONTROL / Tevin Campbell
HEART OF GOLD(孤独の旅路) / Neil Young

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの焼きびたし

今回も、松山市の特産野菜、なすを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけの焼きびたし
カロリー
327kcal (1人分)
調理時間
20分 ※冷蔵庫で冷やす時間を除く
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 100g
  • 長なす
  • 2本
  • オクラ
  • 2本
  • ズッキーニ
  • 1/3本
  • サラダ油
  • 適量
  • おろししょうが
  • お好み
  • 【合わせ出汁】
  • 出汁
  • 350cc
  • 薄口しょうゆ
  • 70cc
  • みりん
  • 70cc
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、長なす、オクラ、ズッキーニは食べやすい大きさに切る。
  • 2.
  • フライパンに(1)がひたるくらいの油を入れ、(1)を中火で揚げ焼きにする。
  • 3.
  • (2)を【合わせ出汁】に浸し、冷蔵庫で30分冷やす。
  • 4.
  • 器に盛り、おろししょうがをのせる。
  • recipe LIST

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ARCHIVE

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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