yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百七十七話 絶えず、変わり続ける -【伝記映画篇】ボブ・ディラン-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百七十七話絶えず、変わり続ける

今年1月、世界が注目している若手俳優のひとり、ティモシー・シャラメが、ある有名ミュージシャンの伝記映画に主演するかもしれないというニュースが全米を駆け抜けました。
そのミュージシャンとは、2016年にノーベル文学賞を受賞したアメリカのシンガーソングライター、ボブ・ディラン。
映画の仮のタイトルは、『Going Electric』。
フォークシンガーの旗手として全米にその名をとどろかせた若きディランが、アコースティックギターからエレキギターに持ち替えるところにフォーカスしたストーリー。
ロックシンガーに転向したことで周囲からの揶揄やバッシングを受けるが、それをはねのけ、ロックとは何かを確立していく姿が描かれる予定でした。
しかし、全世界を襲った新型ウィルスの影響で、撮影は無期延期になってしまいました。
これまでボブ・ディランは、存命にも関わらず、ドキュメンタリーを含め、いくつかの伝記映画が作られてきました。
最も有名な作品は、ディランが初めて公認し、2007年に公開された『アイム・ノット・ゼア』。
この映画の脚本は、破格でした。
6人の俳優がそれぞれ、ボブ・ディランを演じたのです。
6人の中には、ケイト・ブランシェットや、リチャード・ギアもいました。
さまざまな時代のディランの苦悩や成功や恋愛が描かれます。
そこから見えてくるのは、世間の風潮や流行に惑わされない、唯一無二のアーティストの姿です。
『アイム・ノット・ゼア』。
私は、そこにいない。
アルチュール・ランボーの「私はひとりの他者である」という一節を想起させるタイトルが、全てを物語っています。
絶えず変わり続けることによって、成長する。
昨日の自分を壊すことでしか、前に進めないときがあることを、彼は教えてくれます。
来年80歳を迎える音楽界のレジェンド、ボブ・ディランが人生でつかんだ明日へのyes!とは?

「アメリカ音楽の伝統に、新たな詩的表現を創造した」という受賞理由で、2016年、ノーベル文学賞を受賞した、ボブ・ディラン。
毎年ノーベル文学賞の候補になる村上春樹は、自身の小説『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で、彼の歌声をこう書いた。
「まるで小さな女の子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような声」。
ボブ・ディランは、1941年5月24日、アメリカ合衆国ミネソタ州デュルースに生まれた。
デュルースという街は、ミネソタ州の北に位置し、スペリオル湖に面した崖の上にあった。
鉄鉱石を運搬する港として栄え、ひとびとの雇用と安定が守られていた。
ボブ・ディランの父は、スタンダード・オイル社のサラリーマン。
出世頭だった。
何不自由ない少年時代。
ボブは、一年中 水が冷たい湖や、カモメの鳴き声、船の汽笛、真夏の深い霧を愛した。
5歳のときに、親戚が集まったリビングで歌を披露する。
ラジオで聴いていたアメリカン・ポップス。
大人は驚いた。よく通る声。バツグンのリズム感。
拍手はいつまでも鳴りやまなかった。
ボブは、言った。
「みんなが静かにして聴いてくれるなら、いつだってボクは歌うよ」
親戚の誰かが、ボブにお金を渡した。
すると彼は、「ママ、このお金は返したほうがいいと思うんだ。ボクはまだ、プロじゃないからね」
と言って、みんなを笑わせた。
しかし、そんな幸せな少年時代は、長くは続かなかった。

ボブ・ディランが6歳になるかならないかの頃、父が病気になった。手足が麻痺するポリオ。
玄関のわずかな階段も、這うようによじ登る父の姿を、ボブは見た。
父は、入院を終えたが、麻痺が残り、会社も解雇されてしまう。
重い後遺症。
一生、痛みと共に過ごすことになった。
家計は一気に苦しくなり、親戚を頼り、引っ越す。
ボブは、デュルースの風景が好きだった。
湖の水面に映る空を眺めるだけで、心が躍った。
生まれた場所を去るのは、哀しい。
家族は、肩を落とし、背中を丸め、ふるさとを後にした。
新しい街で、母はデパートに勤め、ピアノを買った。
母はかつてピアノを弾いていた。
子どもたちの教育に、音楽は欠かせないと思った。
父は気難しく、無口だったが、母は快活で街の人気者になる。
ボブは、母に絶大な信頼を寄せた。
独学でピアノを弾き、やがてギターも買ってもらった。
ボブは、ひとりを好んだ。
ひとりで街を歩き、空を眺め、森の木々に話しかける。
冒険小説を読みふけり、絵を画き、ピアノやギターを弾いた。
誰かに合わせて生きるのは、好きではない。
自分のリズム、自分のスケジュールを守りたかった。
やがて彼は、詩を書き、曲をつくることを覚える。
「ほんとうに聴きたい音楽がないなら、自分でつくるしかない」

寝食を忘れて詩を書いているボブ・ディランに、母は言った。
「まさか、詩人になんかなろうと思っているんじゃないでしょうね。食べていけないわよ。いいから、大学に行きなさい」
親の庇護のもと暮らしている身としては、逆らえない。
仕方なく、ミネソタ大学に入る。
「詩を書くことはやめて、学位をとりなさい、学位を!」
それでも母に隠れて詩を書いた。
やがてバンドを結成し音楽にのめり込み、大学は中退。
単身、ニューヨークに出た。
グリニッジ・ヴィレッジのカフェやクラブで弾き語りをする。
ニューヨークは、刺激的だった。
絵画や文学に傾倒。
ランボーやヴェルレーヌの詩に影響を受けた。
クラブで歌っていると、決まって同じ歌をリクエストされた。
それが嫌でわざと違う曲をやる。
ブーイング。
それでもやめなかった。ボブ・ディランは思う。
「ブーイングは素敵だ。逆に優しさがひとを殺すときがある」
自分の中に「定番」を作らないように決めた。
故郷デュルースの湖を思い出す。
水面に映る風景は、数秒ごとに装いを変えた。
変わり続けることでしか、人生を生き延びることはできない。
マンネリでいちばん損なうのは、自分の心。
ボブ・ディランは今も、歩みをとめない。

【ON AIR LIST】
BLOWIN'IN THE WIND / Bob Dylan
SKYLARK / Bob Dylan
ALL I REALLY WANT TO DO / Bob Dylan
LIKE A ROLLING STONE / Bob Dylan

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと根菜のポトフ

今回は、この時期におすすめの温かい料理をご紹介します。

霜降りひらたけと根菜のポトフ
カロリー
179kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • じゃがいも
  • 小1個
  • かぶ
  • 1個
  • かぶの葉
  • 2本
  • にんじん
  • 1/3本
  • ウィンナー
  • 4本
  • 200ml
  • 顆粒コンソメ
  • 小さじ2
  • 少々
  • こしょう
  • 少々
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。
  • 2.
  • じゃがいも、かぶは半分に切る。かぶの葉は3cm幅にし、にんじんは食べやすい大きさに切る。
  • 3.
  • 鍋に水、コンソメを加え、かぶの葉以外の具材をすべて入れてフタをし、10分ほど煮込む。
  • 4.
  • 具材に火が通れば、かぶの葉を入れて更に3分ほど煮込み、塩、こしょうで味を調える。
  • recipe LIST

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ARCHIVE

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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