yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百十九話 失敗という言葉を使わない -【宇宙篇】糸川英夫-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百十九話失敗という言葉を使わない

来年、生誕110年を迎える、「日本の宇宙開発の父」と言われる科学者がいます。
糸川英夫(いとかわ・ひでお)。
糸川の挑戦は、わずか長さ23cm、直径1.8cmのペンシルロケットの打ち上げから始まりました。
何度うまくいかなくても、彼はどこ吹く風。
集まった記者に「糸川さん、今回の失敗の原因は、どこにあると思われますか?」と訊かれると、こう答えた。
「あの、すみませんが、僕は、失敗という言葉を使いません。一生、使わないつもりです。全てが学び。明日への糧です。この世に、失敗はありません」
教え子たちには、消しゴムを使うことを禁じました。
「間違ったところを消しゴムで消すなんて、もったいない! 間違ったところにこそ、成長のヒントがあるんだよ」。
1955年に東京、国分寺で行われたペンシルロケットの打ち上げ。
当時、レーダーが完備されておらず、ロケットを打ち上げても、その行方を追うことは困難でした。
誰もが、ロケットの実験は無理だと諦めたとき、糸川は、こう言ったのです。
「天に向かって打つのがダメなら、どうかな、水平に飛ばしてみれば。そうすれば、どんなふうに飛んだか追えるんじゃないか?」
確かに、空気の抵抗や加速についての検証は、水平に飛ばしても可能です。
その発想に周りのスタッフは驚きました。
みんなが考え付くようで決して考え付かない。
そんな発想力こそ、日々の失敗が生み出した成功の賜物だったのです。
さらに糸川のイメージの源は、音楽にもたずねることができます。
60歳の時、バレエ団に入団。
チェロやヴァイオリンもたしなみ、自身の84歳の誕生日には、ついの棲み処と決めた長野県丸子町の信州国際音楽村でコンサートを企画。
亡くなる直前まで、新しいものへの挑戦をやめませんでした。
「失敗」という言葉を封印した、宇宙工学のレジェンド・糸川英夫が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

「日本の宇宙開発の父」と呼ばれる糸川英夫は、1912年7月20日、東京・西麻布に生まれた。
父は教師で、のちに高校の校長になるが、英夫は伸び伸び育つ。
近くの有栖川宮記念公園が遊び場だった。
鬱蒼(うっそう)とした森で虫をつかまえ、野山を駆け回る。
ある日、不思議な昆虫を見つけた。
じっとしていたかと思うと、いきなりお尻からジェットを吹き出し、逃げ去っていく。
それは、トンボの幼虫、ヤゴだった。
のちに、ロケット開発の最中、幼い日見たヤゴの動きを思い出したという。
4歳の糸川少年に、人生を決定づける一大事が起こる。
父に連れられて行った、青山練兵場。
アメリカのアート・スミスという飛行士が、大勢の観客が見守る中、アクロバット飛行を披露した。
プロペラ機は、何度も宙返りを繰り返す。
聞いたことのない飛行機のうなり声。
興奮した。父に肩車されながら、天に拳をつきあげる。
「お父さん! すごいね! 飛行機って、すごいね!!」
その夜、糸川は寝つけなかった。
陽の光を浴びて、銀色に光る物体。
乗りたい、飛行機に乗ってみたい。
少年の夢は、青空に放たれた。

日本宇宙工学の礎を築いた科学者・糸川英夫が、5歳の時だった。
夕闇迫る中、自宅に戻ると異変に気がつく。
家のガス灯が撤去されていた。
父は、英夫を居間にいざなう。
天井からガラス玉がぶら下がっていた。
母が声をかける、「3、2、1、それ!」
あたりがまぶしく照らされた。
その灯りは、今までとは比べ物にならないくらい明るかった。
部屋の隅々まで、くっきり見える。
いつも父は、手品をやってみせてくれた。
これも、父の手品だと思った。
でも、父は言った。
「電灯、というんだ。これからはもう、ガス灯は必要なくなるんだよ。スイッチひとつで、暗闇が消える」。
英夫は、尋ねた。
「お父さん、これ、いったい、だれがつくったの?」
「トーマス・エジソンという発明王だ」
そのときから、英夫の将来の夢は、エジソンになることになった。
科学に興味を持った彼は、さまざまな実験をしては母に叱られた。
虫眼鏡のレンズで、火を起こす。
磁石のN極とS極が反発することを知り、ものを弾き飛ばす。
学校の勉強などそっちのけで、危険な遊びばかりに明け暮れた。
小学校のテストでは、鉛筆を転がし、答えを書く。
成績はひどく、母は度々、学校に呼び出された。
しかし、母のあるひとことで、英夫の向学心に火がついた。

糸川英夫の母は、ある日、英夫少年にこんな話をした。
「あなたの隣の席の、五郎くん。耳が不自由でしょう。体も弱くてあまり学校に来ることができない。すごく勉強したいのに、学校に来られないのって、どんな気持ちかわかる? あなたが教えてあげなきゃね。五郎くんに、英夫がちゃんと教えてあげなきゃね」
英夫は、涙ぐんだ。
そうか…勉強は自分のためにやるものだと思っていた。
違うんだ。誰かのために、頑張る。
糸川英夫は、一生懸命、勉強に励むようになった。
学校から帰ると、五郎の家に一目散に駆けて行き、今日習ったことを伝えた。
ちゃぶ台で向かい合って勉強するので、字を逆さまに書く練習までした。
いつしか、英夫の成績はあがり、クラスで一番になった。
それでも驕(おご)ることはなく、五郎くんのおかげだと、生涯、感謝の気持ちを忘れなかった。
五郎くんは、何度も間違う。
字がうまく書けない。
そのたびに英夫は、逆さまから直していった。
決して自分からやめようと言わない五郎の心の強さに、教えられた。
間違ってもいい。
うまくできなくてもかまわない。
次があるから。
次、少しでもうまくなっていればいいから。
糸川英夫の心から、「失敗」という文字は消えていった。

【ON AIR LIST】
宇宙のファンタジー / アース・ウインド&ファイアー
モア・ザン・ア・フィーリング(宇宙の彼方へ) / ボストン
チェロ・ソナタ ト短調 第3楽章 ラルゴ / ショパン(作曲)、ジャクリーヌ・デュプレ(チェロ)、ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
宇宙 / スガシカオ

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと冷豚しゃぶのサラダ

今回は、長野で多く生産されている野菜、サニーレタスを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと冷豚しゃぶのサラダ
カロリー
272kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 豚ロース肉(薄切り)
  • 150g
  • サニーレタス
  • 100g
  • トマト
  • 1個
  • しょうが
  • 1片
  • みょうが
  • 1個
  • 【A】酢
  • 大さじ2
  • 【A】しょう油
  • 大さじ2
  • 【A】ごま油
  • 大さじ1
  • 【A】砂糖
  • 小さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。トマトはくし型に、しょうがはみじん切りに、みょうがは小口切りにする。サニーレタスは食べやすい大きさにちぎる。
  • 2.
  • 鍋に湯を沸かし沸騰したら弱火にし、霜降りひらたけを茹で、ザルにあげる。豚肉を広げて全体に色が変わるまでさっと火を通し、常温の水にくぐらせて水気を切る。
  • 3.
  • 具材を彩りよく器に盛り、しょうが、みょうがを散らす。【A】を合わせてまわしかける。
  • recipe LIST

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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