yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百三十七話 決して後ろを振り返らない -【京都篇】作曲家 加藤和彦-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百三十七話決して後ろを振り返らない

京都に生まれ、日本の音楽史に多大な影響を与えた、伝説のヒットメーカーがいます。
加藤和彦(かとう・かずひこ)。
始まりは、1960年代後半に加藤が結成したフォークグループ、ザ・フォーク・クルセダーズ。
京都の龍谷大学在学中、雑誌『MEN'S CLUB』に、加藤がこんな投稿をしてメンバーが集まりました。
「フォーク・コーラスを作ろう。当方、バンジョーと12弦ギター有。フォークの好きな方連絡待つ。」
真っ先に自転車で駆け付けたのが、当時、京都府立医科大学の学生だった北山修(きたやま・おさむ)でした。
ザ・フォーク・クルセダーズは、解散記念に北山が親から借金をしてアルバムをつくりました。
その中の一曲が、まさかの大ヒット。
それが、世間をあっと驚かせた『帰って来たヨッパライ』です。
この曲ですでに加藤和彦は、今まで聴いたことのない音楽への挑戦を試みるのです。
自分の声をテープに吹き込んで早回し、北山の語りも取り入れ、斬新なアレンジをほどこす。
ザ・フォーク・クルセダーズ解散後も、加藤は、常に新しい音楽を追い続けます。
『あの素晴しい愛をもう一度』という、音楽の教科書に載る名曲をつくったかと思うと、サディスティック・ミカ・バンドを結成し、『タイムマシンにおねがい』をヒットさせ、ロンドンポップ、グラム・ロック、レゲエなど、あらゆるジャンルを導入したサウンドを構築。
作曲家としてヒット曲を連発し、その活動は世界にもとどろき、映画音楽、スーパー歌舞伎など、多岐にわたっていったのです。
加藤が亡くなる前の貴重なインタビューをもとに編集された、松木直也(まつき・なおや)著『加藤和彦 ラスト・メッセージ』という評伝は、彼の人生が世の中の流行と共にあり、あるときは、彼自ら流行を牽引したことが、精緻な文体で語られています。
加藤の流儀は、ただひとつ。
「後ろは振り返らない」
同じことを繰り返すのを、極端に嫌いました。
新しい、まだ歩いたことのない豊潤な大地に出会うために、前へ前へと進んでいったのです。
唯一無二のアーティスト・加藤和彦が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

作曲家で音楽プロデューサーの加藤和彦は、1947年3月21日、京都市伏見区に生まれた。
父は京都に本社がある、創業1700年の老舗会社のサラリーマン。
母は、生粋の京都人だった。
京都に実家を置いたまま、父の転勤で各地を転々とする。
逗子、鎌倉、日本橋。
住む場所が変わり、転校を繰り返した加藤に、友だちはできなかった。
しかも、ひとりっ子。
自分で自分の時間を埋めるしかない。
彼は、京都に暮らす祖父に会うのが楽しみだった。
祖父は、仏像の彫刻家。
三十三間堂の仏像も修復した名人。
祖父が仏像を彫るのを、傍らで見るのが好きだった。
しなやかで繊細な手つきと、真剣なまなざし。
子ども心に、「なにかすごいことをしている」のがわかった。
そこに妥協はない。
一度、間違ってノミを入れてしまえば、取り返しはつかない。
今、目の前にある木に対峙する。
過去でも未来でもなく、今、ノミを入れる瞬間だけに魂を込める。
のちに加藤は、アーティスト、という言葉を聞くと、必ず祖父の横顔を思い出して、居住まいを正した。
凛とした空気の中、木の香りとノミの音に包まれた世界。
祖父の傍らにいる時間は、たくさんのことを教えてくれた。

日本の音楽シーンを牽引した作曲家・加藤和彦は、小学生時代を鎌倉で過ごす。
終戦から10年あまりの鎌倉には、まだ英語の道路標識が残り、ときおり進駐軍のジープが走っていて、進駐軍払下げの品物がマーケットで売られていた。
ひとりっ子で友だちもいない加藤は、自転車に乗り、ひとりでそのマーケットに立ち寄る。
ある青年に出会った。彼はジーンズを売っていた。
何度も通う加藤を可愛がってくれる。
ラッキーストライクを吸いながら、ファッションについて教えてくれた。
「いいか、リーバイスのジーンズは、裾をこうやって折らなきゃいけない。新品はダメだから、タワシでゴシゴシこするんだ。洗濯しないでずっとはいて体になじませる、それからやっと洗えばいい」
レコードから流れる、ジャズやアメリカンロック。
加藤にとって、そこは、もうひとつの「学校」だった。
父も母も映画が好きで、よく映画館に行った。
母は読書も好きで、イギリスのミステリーにはまり、朝ご飯はパンにスクランブルエッグ。
紅茶を飲んだ。
純日本の京都と、欧米の香りがする鎌倉。
この二つを行き来しながら、吸収していった。

加藤和彦が、中学、高校と進む間に、最も興味を持ったのはファッションだった。
雑誌『MEN'S CLUB』を愛読。
少年の頃の、鎌倉でのアメリカ体験が生きていた。
洗いざらしのボタンダウンのシャツにVANのジャケット。
アイビー・ファッションにはまる。
ファッションの先に、まるでおまけのようにアメリカン・フォークがあった。
ボブ・ディランを聴いて、心にズシンと響く。
それは音楽的な感動というより、ボブ・ディランがまとう、ボヘミアンな空気感だった。
漠然と、サラリーマンにはならない、なりたくないと思っていた。
心のどこかにずっとあったのは、祖父の横顔。
ひとつのものを自分の手で作り上げていく工程を見ていた時間。
大学は、京都に行こう。
仏を彫っていた祖父に近づくため、龍谷大学を選んだ。
大学が決まったとき、12弦ギターとバンジョーを買った。
ずっと友だちがいなかったので、誰かと関わりたいと思うようになり、大好きな雑誌に投稿した。
「フォーク・コーラスを作ろう」
加藤和彦は、幼い頃から孤独と暮らしてきた。
孤独から逃げなかったので、心の引き出しにたくさんの宝物が増えていった。
その宝物をたずさえて、彼は旅に出かけた。
二度とかつての岸には戻らない、唯一無二のアーティストという船に乗って。

【ON AIR LIST】
帰って来たヨッパライ / ザ・フォーク・クルセダーズ
悲しくてやりきれない / ザ・フォーク・クルセダーズ
あの素晴しい愛をもう一度 / 加藤和彦と北山修
タイムマシンにおねがい / サディスティック・ミカ・バンド

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと蕪の薬膳粥

今回は、京都で多く生産されている野菜、かぶを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと蕪の薬膳粥
カロリー
162kcal (1人分)
調理時間
30分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • かぶ
  • 1個(80g)
  • 1/2カップ(85g)
  • 600ml
  • 小さじ1/2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。かぶの根は皮をむき4等分に切り、葉は小口切りにする。米は研いでザルにあげて水を切る。
  • 2.
  • 鍋に水、米、かぶ、霜降りひらたけを入れ加熱し、沸騰後、弱火にしフタを少しずらして15分火にかける。
  • 3.
  • 塩を入れさっと混ぜ、火を止めフタをし10分蒸らす。
  • 4.
  • かぶの葉を加え混ぜる。お好みで最後に塩(分量外)で味を調える。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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