大人の恋

松本隆さん(作詞家)×クミコさん(歌手)

2017

12.17

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昨年、「クミコ with 風街レビュー」というプロジェクトをスタートさせたおふたり。松本さんが、J-POPシーンを代表する気鋭のソングライターを迎えて、大人のラブソングを作りあげ、それをクミコさんが歌い上げるというものです。9月にリリースされたニューアルバム「デラシネ déraciné」は、収録曲10曲、全ての作詞を松本さんが担当。大人の恋は、楽しいだけではなく、時にきわどかったり、濃厚だったり、ほろ苦かったり・・・。さまざまな大人の恋愛が詰まったアルバムを作り上げたお二人に、大人の恋愛の魅力についてうかがいました。


歌詞の中で恋愛しています



松本
詩的には10種類書いておきましたから。どれか当たるかもしれない。

クミコ
パターン10個あります、みたいな。

松本
「AURA」のときは10人の日陰の女性に光をあてたけど、今回は1人が10種類の恋。長い一生だよね。これだけあると、ひとりで恋愛するのはかなり波乱万丈で無理だと思うけど、おそらくひとつかふたつは経験するであろう感じはしますね。あと、もうひとつは日本のメディアはどうしても子供向けなのね。いつの時代も。70年代、80年代、90年代、0年代、今に至るまで子供に向かって発信しているんだけど、実は人口は一番多いのは46歳とか書いてあったかな、平均年齢。本当は今、ヒットを狙うとしたら40代に向けて商品を売らないといけない。そのへんが今の日本の不景気の原因かもね。ターゲットを間違えていると思うのね。

クミコ
若い頃は発情期ですからね。発情期はやっぱり恋をするでしょ。生物学的にも。だけど年を取ってからの恋は、またいろんな複雑なことも入っていて、より複雑になってきますよね。残り時間のことも考えたり、姿、形、気持ちの衰えとかいろんなものと戦っていかないといけないので、それで恋をしたらどんなに素敵でしょうねとわたしはいつも思っているんですが、なかなか気力がもたないですね。ダメですね?松本さんはどうですか?

松本
僕は詩を書く時だけですから。

クミコ
何を言っているんですか!

松本
詩の中でいっぱいいろんな恋愛できるので。

クミコ
いいですよね。わたしたちは詩を書くとか、歌を歌うとか、その中で少しそういう気持ちにもなれるけど、音楽はそういうもので、聞いている人たちもそれを聞くことで、満たされたり、現実にあればあったでもちろんいいですけど。

松本
僕のせいにしないでね。松本さんの詩を読んで、恋に走りましたとかやばいですから。


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幸せになるためには


様々な恋の形を歌詞に綴ってきた松本さんとラブソング歌い続けてきたクミコさん。そんなお二人が思う、素敵な大人とは?

クミコ
素敵な人は、つるんでない人というか、ひとりで一生懸命、自分の中で考えたり、自分で自分のことを一生懸命生きている人は素敵だなと思うんですね。ひとりで立っているような。それが迷っていたり、泣いていたり、そういう人がすくっと立って生きてるっていうのが男でも女でもすごく素敵で、いくつになっても色っぽくて素敵だなぁと思うのね。自分もそういう風になりたいと思いますね。そういう人同士の恋愛は素敵ですよね。

松本
僕は逆でね。自分が自分がと押し出しがちだけど、そうではなくて、相手がどう思っているかとか、相手の心が読めると、幸せになれるような気がする。

クミコ
それでわたし、幸せになれないんですかね(笑)

松本
ちゃんと読めてないんじゃないですか(笑)

クミコ
読み間違いってやつですか?

松本
相手はどう考えているのかとか、今どう思っているのかとかそういう自分を一回、消していいんじゃないかなと思うんですね。生き方はそんなに簡単に変えられないし、みんなそれぞれ生きているわけで。でも、繋がりのこと考えると、相手のことを考えると、幸せになりやすいような気がする。難しいけど。

クミコ
でもそれがいいですよね。わくわくしますよね。

松本
決して自分の思っていることしゃべる人じゃなくて、どっちかというと聞いてあげられる人、相手が何を言うのか、それに返してあげるほうが、ほんとうに話が上手な気がしますけどね。


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