本を通した出会い

青木さやか(タレント、俳優、エッセイスト)×高野秀行(ノンフィクション作家)

2024

01.19

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青木さんは、タレントや女優としてマルチに活躍を続ける一方で、最近では、エッセイストとしての筆力も高く評価されています。一方、高野さんは、「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」をポリシーに、世界各地を取材し、執筆を続けています。

高野さんの青春時代を描いた自伝的作品『ワセダ三畳青春記』



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青木
はじめまして、青木さやかです。

高野
はじめまして、高野です。

青木
私、すごいお会いしたかったので、本当に嬉しいですけど、高野さんは私のこと、知っていますか。

高野
いや、存じ上げてなかったです。

青木
私は「ちょっと、どこ見てんのよ」というギャグがあって、すごい有名で、20年ぐらい前に、紅白歌合戦まで出たんですよ。すごくないですか?

高野
すごいですね。僕はすごく日本のことに疎いんで。

青木
私が、今までで一番、回数を読んだ本が高野さんの『ワセダ三畳青春記』で、よく読んでよく買っています。なぜかというと「何の本が好きなの?」と言われると、この本の話をして、そうするとあげちゃうんですよ。だからまた次に買う。

高野
素晴らしいですね。布教活動されていらっしゃる。

青木
そうです。なぜこの本に出会ったかというと、20年ぐらい前に金沢知樹という友だちがいて、そのときは芸人だったんですけど今は脚本家になって『サンクチュアリ』というドラマを手がけている彼が、「さやかちゃん、この本、面白いから」と言って誕生日にくれたんですよ。私が3年前に『母』という本を出すんですけども、そのとき、執筆に行き詰まるとこんな感じのテイストに書きたいとこの本を読んでいました。特に恋愛の部分は。そしたら近所の人に『ワセダ三畳青春記』にテイスト、温度感がすごい似ているねと言われたんですよ。もちろん書いてあることは違うんですけれども。

高野
僕、青木さんの『母』を拝読したんですけども、

青木
ありがとうございます。

高野
すごく面白かったです。

青木
嬉しいです。

高野
僕の本に似ているとは全く思わなかったんですけど、むしろ違うところが面白いなと思って、やっぱりテレビやラジオ出身なのか、会話でずっと畳み掛けるコント、あれは書いている人間からは、出てこない手法で面白いですよね。突っ込み合っているとか、ちょっとぶつかったり、ずれたりするのが上手いなと思いました。

青木
『ワセダ三畳青春記』は高野さんが主役ですけど、それ以外の人たちが一度は死ぬまでに会ってみたいなと思うような、決して出来がいいというわけではないけど会ってみたいようなキャラクターの人たちで、『母』もそうしたかったんですよ。だから、会話が多くなったのかなと思うんですけどね。


声を出して笑える本



『ワセダ三畳青春記』は、高野さんが22歳から33歳まで暮らしたアパートでのおかしな出来事を描いたちょっと切ない青春物語。ユニークな住民や浮世離れした大家のおばちゃんに翻弄される日々や高野さんが所属していた早稲田大学の探検部の仲間とのエピソードも登場します。青木さんは、この本のどんなところに惹かれたのでしょうか。

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青木
私は、遠い国とか、見たことのない動物とか怪獣にも興味がありますけど、やっぱり恋愛に興味があるかもしれないですね。

高野
それは、自分に直接関係していますからね。

青木
だから『ワセダ三畳青春記』を100回以上、読んでいるんですよ。

高野
さすがに飽きないですか?

青木
それが忘れっぽいので、すごく新鮮に読めて、読む度に、ここに注目していなかったとか思ったり、何回読んでも面白いです。私がお笑いを始める前、すごく貧乏な生活をしていたときに、雀荘に溜まっていたんですけれども、そのときに名前も知らないようなおじさんたちと仲良くなって、人としてはちゃんと生活していないような人なんですけれども、その時間が好きだったんですよね。そのときのことをものすごく思い出すことができる。その空気感がすごい好きだった。あと、この本には恋愛のブロックが出てくるんですけど、海外の女性とのエキセントリックな話が好きです。

高野
そこに注目する人はほとんどいないですね。初めてと言ってもいいぐらい。

青木
私もエキセントリックなところがあるので、当時、主人公と仲の良かった女性が、急に怒り出したり、高野さんが「変わったご飯の食べ方をするね」と言ったら、急に「ふざけないでよ!」と言って怒って泣きながら出て行くところ、でもそれに対してひるむことないところも。

高野
そこに共感した話は初めて聞きましたね。さすが、目の付け所、惹かれるところが全く違いますよね。

青木
人としてすごく駄目な生活をずっとしていて、でも最後にその生活から他の街に行く、それが何か新しい一歩を踏み出すことでもあるし、でも、すごく寂しい感覚。あと、後輩の結婚式で、高野さんがスピーチをお願いされ、その2人のエピソードをお話になりますよね。

高野
男女とも後輩だったので、特に女の子の方はスパイになりたいと言って、南米のマフィアのボスの情婦になってもいいとか、もう理解不能なことをずっと言っているわけですよ。でも、就職して、結婚して、普通の人になる。そこで呼ばれてスピーチをして、そのスパイの話をしたら、親戚の人たちがみんなドン引きしていった、これは本当にリアルな話で今思い出してもちょっと冷や汗が出る。

青木
でも高野さんに頼んだわけですもんね。

高野
そう。その彼女は終わった後に、僕のところに来て、「もう高野さん、何であんなこと言うの!でも高野さんは、昔のままですごく安心しました。いつまでもこのままでいてください」みたいなこと言って2人で去って行くという。

青木
そこも大好きです。

高野
本当に砂場で遊んでいる子供になった気分ですよね。みんな大人になって、家に帰って行く、街に戻っていくのに自分だけ公園の砂場で遊び続けているみたいな。

青木
今はどうですか?

高野
今もずっと遊んでいますけど、一応、結婚もしているし、家庭はあるので、砂場と言っても半分ぐらいですけど。

青木
その話がすごい好きで、本を読みながら声を上げて笑うこと自体、多分初めてだったような気がするんです。いや、その前は「ドラえもん」だったかな。


*青木さんによるヒューマンストーリー『母』は、中央公論新社より発売中です。


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