東京の”今”

野村訓市さん（エディター、ライター）×村上虹郎（俳優）

2018

06.08

現在公開中のウェス・アンダーソン監督最新作「犬ヶ島」で原案やキャスティングなどを手がけた野村さんとボイスキャストで参加した村上さん。この作品の舞台は、近未来の日本。日本を深く愛するアンダーソン監督が、黒澤明監督をはじめとする日本の巨匠から強いインスピレーションを受けて作られました。

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東京のいいところ

村上: 東京は景色が変わるのが早いよね。

野村: それは間違いないかもしれない。

村上: それだけでもおもしろいよね。

野村: うん。

村上

いいか悪いかは置いておいて、おもしろい。人の出入りも変わっていくし。自分は東京で生まれてはいるけど、半分東京ではない人だと思っているから、東京に出稼ぎに来ている感もあるわけ。戦いに来ている感もあるし、戦場だと思っているし、だからどれだけそこで自分がリラックスする瞬間があるのかは仲間にかかっていたりもするから、もちろん自分で自分を保つのもあるけど、仲間を見つけていくのが楽しいよね。

野村: なるほどね。俺は東京のいいところは、東京は、新しいものと古い物が混在していて、それがすごく素敵！って外国人に言われるじゃない、たぶん「ロストイントランスレーション」みたいのを見て、神社があって高層ビルがあって、実際に観光客が喜んだりするのはそういうところだと思うんだけど、クールジャパンと言ってる日本人が古いものどんどん壊して、もっと外国人を呼び込みましょうとか、観光しましょうって言ってる、一番の武器を自分たちで壊していて、その魅力を実はいちばんわかっていないのかなと思っている。だから今回、ウェスが映画作った時、60年代が舞台の近未来なんだけど、十何年前にウェスを連れて、見た東京がすごく印象にあるらしんだけど新宿のゴールデン街みたいのがあって、高層ビルがあって、屋台があってみたいのが、東京のカオスっていうか・・・でも、これから久しぶりに東京を見て、例えば、綺麗になってしまった表参道とか、そういうのを見たらなんて思うのかな？

村上: それはわかる。正直写真とか撮っていて、メカとかiPhoneとか、もちろん高層ビルもきれいなものはかっこいいし、美しいだけどなぜか、そこが抜け殻に感じてしまうから、人もそうだけど、中に何もない人がいくら見た目がかっこよくても、かわいくても写真を撮りたいとは思わなくなってきている、自分ももっと日本のことを学ぼうとよく思うし。

野村: 虹もいろんな地方に行ったり、きれいなところとかおもしろいところたくさんあるからね、みんな東京遊びに来たがるけど東京が日本のすべてじゃないから。

村上: いいと思う。

野村: ね。

村上: おれも最近、奈良の天川村とか

野村: 遊びに行った？

村上: 鍾乳洞とかもあったりして、そういうところ行ったりして

野村: そうだよね。もっとみんなにも見てもらいたいけど、自分たちもいろんなところ出かけるべきだなって思っていますけどね。

理想の空間

野村: 年をとってきたのか、この前もLAとかシスコにいた時に中庭があって街のど真ん中だけど、うまい具合に周囲が見えなくて、陽が落ちてきて、朝、起きた時に庭のバラの木とか見て、ぼーとできるわけ。コーヒーを飲んだり。それがなんて贅沢なんだろうって思って、起きた時にすぐに緑が見えて、だけど、郊外じゃないど真ん中。木の間から陽がさしてくるのを見てだんだん身体が温まってくるのを待つとか。すごく心が疲れているのか欲していて東京で庭のある家に住みたいと言ったら「とうとう訓市も年をとって、趣味がガーデニングとか家庭菜園でもやる気か」って言われて、いや、何もやる気はない。ただ起きた時や家に帰って窓を開けた時に緑が見えたらいいなというのだけが今、欲しい空間かな。