いままでの自分たちを打ち破る

荻上直子さん(映画監督)×桐谷健太さん(俳優)

2017

02.26



荻上監督の最新作「彼らが本気で編むときは、」で、桐谷さんが演じるのは、書店員のマキオ。その恋人で、トランスジェンダーのリンコ、さらには、育児放棄されたマキオの姪、トモ。この3人が、織り成すどこか奇妙な共同生活を描いた人間ドラマになっています。

支えることに徹した


セクシャルマイノリティーに関して、近年、急激に関心が高まっているとは言っても、まだ偏見があったり、演じる側としても初めての役どころ。そこで、桐谷さんは、自分でリサーチをする以外にもリンコ役を演じた生田斗真さんと密にコミュニケーションを取り、お互いを励まし合いながらキャラクターを作り上げ、「必ずいい作品にしよう!」という熱い思いで取り組んでいったそうです。

荻上
マキオくんに関しては、桐谷さんの中で作ってきたものがあったから、私自身も見えた感じがしたので、今回は生田斗真さん演じるリンコさんを支えてあげてねって。

桐谷
そこに徹してくらいの。

荻上
それを「はい!」っておっしゃってくださって、その器の大きさみたいのが出ると思ったんです。

桐谷
監督が大事にしていたのは、リンコが愛されること。そのためにもマキオの支えが必要だし、マキオが側にいるからリンコもやっていける。そこが、プライベートとお芝居を切り離すのではなくて、リンクするように監督がお手伝いしてくれたんです。斗真も最初は立ち方とか座り方、どうしたら手が小さくみえるのかとか、ほんとうにフィジカルな部分で苦労して悩んだ部分もあったと思うんです。そこで、オレは、ただマキオを演じればいいわけではない。演じている中で、本当にリンコさんがキレイだと思ったから、斗真に「大丈夫やで。キレイやで。」と言ったんです。こうやって支えることが、マキオがリンコを支えることに繋がる、一緒だなと。この映画で一番目立とうとか、評価されようといった気持ちでやっていたらその時点でマキオではないので、監督がリンコさんを支えてくださいと言ったことにシンプルに、「そやな」と思えた。

荻上
だから、生田君も頼っていたと思うし、私自身も撮影中に頼っていました。桐谷さんの存在がいろんな人を支えていた気がします。




癒してたまるか!


今までいろんな作品で、様々な顔を見せてきた桐谷さんですが、この作品は、桐谷さんのキャリアにおいてターニングポイントになった作品と言われています。そして、荻上監督にとっても、映画監督としての第2章のスタートとなりました。

桐谷
20代の時には、声がデカい役とか熱い役だったり、自分が目立てればいいというのがあったんですよ。偉そうな感じですけど。でも、今は、じわじわ変わってきて、監督が、初めてお会いした時に「この作品に命を懸けています」とおっしゃったんですよ。「今、オリジナル作品が減ってきて、オリジナルを撮るためには、いいものを作らないと私には後がない」とおっしゃった時にすごく気持ちいい人だなと思ったんですよね。その時に監督と斗真がいい感じになればいいな、自分ももちろん評価してもらえたら嬉しいですけど、自分が目立つというよりも、この人たちのためにといった感覚に初めてなったんですよ。余計な欲がなかったというか、そういう意味でもマキオになっていた。マキオも欲がなくてリンコさんと一緒にいられたらいい、リンコさんみたいな美しい人に出会ったことが自分の人生の宝だと心から思えているような人だから。それにしても監督の映画の撮り方が男勝りで、根性がすごいって言うか。

荻上
5年ぶりだったんですよ。出産したり、1年間アメリカにいたりして、帰って来て、なかなか企画がうまくいかなくて、書いては潰れて、書いては潰れてしまって、一時期スランプにも陥り、でも、また書いて、これでやっと撮れる。映画を撮りたくて、撮りたくてしょうがなかったから、やっと撮れるとなったので、だから失敗できないと思ったし、今回は、生田斗真におっぱいまでつけさせたので。

桐谷
監督が5年も準備をしたんだから、役者もそこの責任を背負う。

荻上
生田さんにも言われたんだけど、すごく前のめりだった。攻めの姿勢で最後まで撮ってやろうと思っていたし、勝負のつもりで今回はやろうとしたし、いままで癒し系とか、ゆるい映画とか言われたことを排除しようと思って、癒してたまるか!それがモットーみたいになって。

桐谷
オレはすごく染みましたよ。5回くらい泣いた。めっちゃいい作品だから、この作品に出られてよかったと思いましたし、こんなに自分が出ている作品で1回目から客観的に見られたのは珍しい。

荻上
天邪鬼なので感動するシーンで泣け!みたいのがイヤなんですよね。

桐谷
監督を見ているとわかります(笑)。そういう感じにはしたくないんですよね。

荻上
カット割って、盛り上がる音楽をつけるのは、自分がはずかしくなってしまう。

桐谷
だから、画力の強さというか空気を撮る人なんだなと思いましたし、カメラマンさんたちの愛もあって。

荻上
そうですね。それも大きかったですね。

桐谷
信頼して、荻上組でやっているんだというのを感じられたし、自分で出演しながら、すばらしい映画だと思いますよ。

荻上
ありがとうございます。よかった。



『彼らが本気で編むときは、』
【公式ホームページ】
生田斗真、柿原りんか、ミムラ、小池栄子、門脇麦、柏原収史、込江海翔、りりィ、田中美佐子、桐谷健太

脚本・監督:荻上直子
2017年2月25日(土)、新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!
配給:スールキートス

© 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会



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