心地いい暮らしを求めて

矢野顕子さん(シンガーソングライター)×伊藤まさこさん(スタイリスト)

2017

11.26

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音楽、そして、お料理の世界で、ご自身の表現を追求するおふたりにとって、”心地いい”とはどういったものなのでしょうか?

おうち料理の良さ


前回の対談で、”矢野さんのお抱え料理人になりたい! “と言う伊藤さん。もし、矢野さんにお料理を作ってあげる機会があるのなら、伊藤さんは何を作ってあげるのでしょうか。

伊藤
 外食も多いと思うし、いろんな国に行かれることもあるので、基本的なお母さんが作るごはんみたいのを毎日、作りたいですね。「ただいま」と帰ってきてくれると、ぷーんと出汁の香りがするような。

矢野
うれしい!すごくうれしい。こっちは主婦業をずっとやってきたじゃない、迎える方をだったから「ただいま」と帰ってきて「ごはんは?」みたいな。自分が作ってもらえた経験はあまりないというか・・・。

伊藤
そうですね。お母さんになるとそうなってしまいますよね。

矢野
よっぽど料理好きなご主人とかいればいいけどね。だから人に作ってもらうのは、ものすごくおいしい。

伊藤
凝った豪華な料理ではなくて、人の作ったおうちのごはんが食べたい時があるんですよね。

矢野
日本に滞在している時でも、親しい友達に「お茶漬けでも食べさせてくれる?」とか言ったりしますね。もうそれでいいの。ミョウガを刻んであるだけで幸せとか。

伊藤
ミョウガがN.Yにないと聞いたのですが?

矢野
ミョウガはあることはあるんですが、ものすごい高いんですよね。

伊藤
聞いたことあります!宝石か!という値段か!

矢野
旬の時期になるとカリフォルニカとかオレゴンから来るんですけど、香りがあんまりね。で、日本は冷凍で来るのよ。

伊藤
冷凍できるんですね。

矢野
わたしがこの前買ったのは、3個入って9ドル。

伊藤
宝石!

矢野
めったなことでは、アメリカ人の友達には出さないです。

伊藤
アメリカ人の友達はあの味をどう思うんですかね。

矢野
わかる人はおいしいというか、他にないから、「うん?これなに?」って感じになるんですね。シソは巻き寿司で食べる機会が多いんですけど、ミョウガがハードルが高いと思いますね。


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気持ちの良さは人それぞれ


伊藤さんは、家事に関するエッセイやお掃除道具なども紹介し、徹底的な掃除好きとしても知られています。

伊藤
こだわりは、ないのかもしれない。気分よく生きたい、お掃除好きですねとか言われるんですけど、掃除が好きなんじゃなくて、気持ち良いのが好き。自分でやるしかないから掃除をするみたいな感じで。

矢野
わたしはきちんと整理整頓がしてあって、猫の毛もないみたいなおうちは、これはこれでいいなと思うんですけど、そうでなくても平気なんですよね。車とか汚れているんですよ。汚れていても平気だし、おかしがボロボロとシートの間に挟まっていても、別にクリーナーをかけなくてもそれはそれで。すごくだらしないのかという見方もあるかもしれないけど本人にその気持ちがないのね。ただ関心がないっていうことなんですね。

伊藤
何が気持ち良いのかは人それぞれですもんね。

矢野
すごく違うと思うよね。

伊藤
わたしはホテルが好きなんですけど、一回外出すると、ぴしっとなっているじゃないですか

矢野
あれ好き?

伊藤
大好きなんです。

矢野
わたし苦手なんですよ。

伊藤
すごくそういう違いがおもしろいなと思って。

矢野
わたしたち結婚しないでよかったね。きっと結婚した当初はみんな好きで結婚するけど、それぞれの生き方がいろんなところに表れるから、それぞれをもっている人は大変だと思いますね。

伊藤
最初は「もうしょうがないわね」とか言ってやってあげても、だんだん、「何さ!」みたいになったりとか。

矢野
「靴下は持ってこいよ!」みたいな

伊藤
どうして片方づつ落ちているのかとか

矢野
クッションの間から出てくるとか、自分でもあって、びっくりしました。最低とか思った。そういう風に何を気持ち良いとするかほんと違いますよね。

伊藤
でも違う人がいて当然だし、仕事でいろんな人の暮らしを見に行くけど、おもしろいなと毎回思いますね。


矢野顕子さんは、11月29日に7年振りソロ弾き語りアルバム「Soft Landing」をリリース。
伊藤まさこの「AERA」での連載が一冊にまとめられた「おいしい時間をあの人と」は朝日新聞出版から発売中です。

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