世界に通用する日本ならではのオペラ

井上道義さん(指揮者)×森山開次さん(ダンサー、振付家)

2019

01.11

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歌劇「ドン・ジョヴァンニ」でタッグを組む井上さんと森山さん。最強のプレイボーイ、ドン・ジョヴァンニの華麗なる恋の遍歴と衝撃的な最期を描くモーツァルトの代表作です。井上さんの信頼を受け、今回、はじめてオペラ演出を手掛けることになった森山さん。本職がダンサー、振付家とあって、身体表現を取り入れた演出になっています。

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オペラとダンスの関係



井上
森山さんが思いっきり身体表現性でオペラをやってくれると、僕は日本のこれからのオペラの一つの強い宝物になると思うんですよね。やっぱり、ヨーロッパ人やアメリカ人たちは、体が大きいし、胸の厚さ、唇の大きさも大きいワケよね。そして大きい声で、持久力もあって、なかなか疲れないんですよね。例えば、日本のオーケストラの練習は、1時間とか1時間か15分ぐらいで休憩になるんだけど、ヨーロッパのオーケストラは1時間半休憩なし、場合によっては、3時間くらいぶっ通しでやることもあります。そういう体力の強さは、全然太刀打ちできないんで、それではない身の軽さで勝負するという点では、モーツァルトのオペラはひとつの突破口があると思いますね。

森山
それは今回、僕がチャレンジしたいことのひとつで、何かが見つかればいいなと思っています。

井上
歌手の人たちも、今回はみんなオーディションだったので、本当にみんなやる気になっていて。

森山
僕がダンスをやっているので、女性ダンサー10人に入ってもらうことになります。

井上
ダンス好きな人にはオペラを初めて見に来てほしいね。

森山
本当にそう思います。日本語でやるのもそうですし、身体を使ってオペラは、こういうもんだと思い込んでいる人は多いと思います、僕もその一人だったかもしれないので。

井上
僕もそのひとり。

森山
いろんな挑戦をしていると思いますけど、すべきですし、その中でまだ若いこれからを背負ったオペラ歌手といろいろトライしていきたいですね。バク転とか宙返りはいきすぎているとは思いますけど、単に踊るというだけではなくて、身体の仕草とか芝居に出てくる動きも含めて、いろんなことの動きが、踊りに通じているものなので、動くこと自体はダンスとして捉えてもらえればと思います。


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日本にこだわりすぎるな


今までの慣習にとらわれない、新たな視点で世界に通用するオペラに挑むおふたり。森山さんの発想により、子宮の中をイメージした舞台装置やオペラにダンサーが登場するという斬新な演出で上演されます。さらには新たな挑戦として、今回は、英語字幕付きでの日本語上演となります。

井上
今回、森山さんに思いっきり自由に演出してもらうために、日本語でやることにしたんだ。もともとモーツァルトのオペラのほとんどがイタリア語ですから、歌手たちはイタリア語を自由にするためにずっと勉強するんだけど、さすがに今からイタリア語は無理だろうし。

森山
すいません。僕からお願いしました。

井上
イギリスであれ、オーストリアであれ、ドイツであれ、やっぱり、自国語で、翻訳をしてオペラをやることは、今でもやっていますから、それをやれるところまでやってみようと。でも日本語とアクセントが違いすぎてね、今回は思いっきり冒険して、ドン・ジョバンニ役をロシア人がやりまして、ドン・ジョバンニに殺されるお父さん役をウクライナ人がやるという、プーチンに聞きに来て欲しいくらいですね。

森山
ほんとですね(笑)。

井上
「よくやったな」というかもしれないけど、これから日本語が話せる外国人が増えてくる時代でしょ、だから、僕は、時代を先取りしようとしています。今回は変な意味での読み替えは、やりたくないんです。あの時代に起こっていることとして見えるようにしたいなとは思っています。それは森山さんにお願いしていて、衣装も森山さんは大体自分で絵が描けたりして、舞台装置も基本、自分で描いてくるし、とてもプロフェッショナルな演出家になれると思うんです。踊り手は、やっぱり男性の場合は、45歳以上は無理だろう?

森山
もうすぐ45歳なんですけど。

井上
早いとこ、思いっきり夢を大きくして、世界的になってほしい。僕なんかとやってないで。

森山
がんばります。

井上
日本人の見るモーツァルトとかそういうことを考えなくて、自分がやりたいことをやれば、必ず日本のものになるんだから。日本人は日本にこだわりすぎていて、それは劣等感の裏返しじゃないのかしら。自分を見つけるほうが大事だと思います。すぐ隣には台湾だって韓国だって中国だってみんな同じような顔をした人がたくさんいるわけで、あとは日本人である違いというのは、繊細なことに非常にこだわるとか、レストランに行っても並ぶとか、バス停でもちゃんと並ぶとかそういう文化的なことはあるのかもしれないけど、芸術的なことでいえば、それは危険なことで、形だけ整えれば、芸術だと思うことも世の中にはよくあるので、花鳥風月にならないで思いっきりドラマティックなオペラを作っていかないと世界的にはあまり意味がないことになっちゃうからね。


モーツァルト 歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全幕 東京公演は、東京芸術劇場コンサートホールで2019年1月26日(土)と 27日(日)に上演されます。

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