幸せとは?

黒沢清(映画監督)×蒼井優(女優)

2020

10.16

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10月16日から公開になる映画「スパイの妻」でタッグを組んだおふたり。作品の舞台は、戦前の時代設定ですが、現代においても「夫婦の絆」を考えさせられる作品でもあります。

夫婦について



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黒沢
あまり男女の差については僕は考えていませんが、自分が男だからなのか、そこはわからないですけど、仕事や社会には男が出て行って、女性はもう少し内側のことをやるみたいなのは、この映画の1940年代とかは、今よりもっと目に見える形で強かったと思います。ただ僕は今と大きくそんなに極端に違ってるとは思わないですね。今だって、目に見えない形で男女差があるといえばあるし、1940年代は、もっと露骨にいろいろあったとはいえ、心の中ではそんなの馬鹿げてるよ、そんなの考えずに先に進もうよと思う人がいくらでもいた。でも言ってはけない、言わなかったかもしれないけど、心の中は、もっと自由な面も当時の人もあったと思うので、男女の差は一言では言いづらいですけども、何か差はあるんだろうと思うんですけども、乗り越えていけるものだと信じています。男だから楽天的なのかしら。

蒼井
セリフにもあったんですけど、聡子の中でやっと優作さんと一緒に生きてるっていう感覚があるって、確かにそれまではきっと優作さんが働いていて、自分は家庭にいて、もちろんそこに愛情はあったんだろうけど、共同で何か成し遂げる、そこに興奮を覚えたんでしょうし、一緒に何かをしていくことの幸せを知ったんだろうなという気がしてました。でも本当にそれが聡子の幸せだったか聡子はあの後ずっと考え続けたでしょう。私もこの映画を見終わってからずっと何が幸せだったんだろうなって思いますね。最後は幸せなのか?とか自分たちにとって幸せって何なんだろう?とか、自分が思う幸せになるためにはあのふたりは、どこで何をしていれば幸せだったんだろうとか、それをずっと考えて、結果、答えが出ないんですけど。

黒沢
そういう映画だったみたいですね(笑)。幸せとは何か?僕は、最終的には今回描いた夫婦は、二転三転大変な目にあいますが、最終的には理想的な何かを乗り越えて、それこそ戦争まで乗り越えて、幸せを掴んだはずだと信じてるんです。この時代を元にして作り上げられたフィクションですけども僕の中では、大げさなことでなくても、男と女、特に夫婦ではいろんな局面で全然違う方向を向いていたり、全く違う価値観を持っていたりするわけですね。もともとは他人ですから。ただ不思議に全ての夫婦とは言えませんけども、ある種の夫婦は、愛から始まって、ある種の信頼関係ができていて、絶対に大丈夫という何かが生まれている。今回の聡子と優作ほど派手なことはなくても、信頼し合ってる夫婦が、世界中にはたくさんいると思います。


ステイホームの過ごし方



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黒沢
僕自身、毎日会社に出勤してる仕事ではなく、たまたまこの「スパイの妻」のいろんな作業がほぼ終わって、次への準備期間だったので、大体そういう時は、普段もステイホーム状態なんですね。ですから家にいることがそんなに特殊なこととは感じませんでしたが、それでもいつも買い物とか行くんですけども、妻と二人、いつもと違う、少し遠いスーパーまで買い物に行くと意外といいものがあったりして、小さな冒険でもないですけどね、少し探ってみると意外に面白いもの売ってたとか発見があったりはしました。

蒼井
わたしは編み物が好きなんですけど、靴下、帽子、ヘアバンドとか小物を編んでたんですけど、いよいよ家にいる時間が長くなったのでセーターを編みました。いろんな編み方を調整して、どの編み方が自分が好きかを勉強してました。わたしはもともと半引きこもりみたいな時期が学生時代にあったので、スーパー行くかレンタルビデオ屋さんいくかしか外に出ないような生活をしていたので、家の中で趣味をやるのは全く苦じゃないです。

黒沢
僕もそうですね。多少のストレスはありましたが、人と会えないことにものすごいストレスは感じませんでした。ただ、やっぱり時間がいくらでもあって、蒼井さんみたいに編み物でもできればいいですけど、何かしようと思うのですが、意外にできないですね。良い機会だからいろいろ映画でも見るかとか、あれもしようかとか思ってたんですけど、ニュースが気になるんですよ。本当に休暇だったらいいんですけど。あと数ヶ月したら何事もなかったように前に戻るのか、もういくつかのことは前に戻らないのか分かりませんね。何が嫌って自分では何も判断できないこと。全て、テレビ、新聞、ネット等を通じて、政府が発表したことや専門家が言ったことを、とりあえず信じる以外に自分ではどうしようもないのがはがゆいんですが、信じるしかない。やっぱり、落ち着かない。そういう意味ではなかなかいろいろなものに手がつけないステイホームだったなと思います。


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映画「スパイの妻」は、新宿ピカデリーほか全国ロードショー中です。


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