木村拓哉 Flow supported by Spotify - TOKYO FM 80.0MHz - 木村拓哉

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2025年11月30日Flow 第三百八十三回目「拓哉キャプテン × 倍賞千恵子」Part4

今月のマンスリーゲストは、現在公開中の映画「TOKYOタクシー」で共演させていただいた、倍賞千恵子さんです。
倍賞さんとのトークも今週が最後! 倍賞さんにとっての「人生の1曲」も伺います!


木村:178本出演された中で70本が、山田監督作品。

倍賞:そうだね。

木村:すごいっすね。「男はつらいよ」っていうシリーズの、いつも大げさなことを言いまくってるお兄ちゃんに対して「お兄ちゃん!」って言うさくらさん。さくらさんがいなかったら、あのお話は成立してないですもんね。

倍賞:そうかな?

木村:誰もツッコミがいないですもんね。

倍賞:そうか。そうね、博さんがきちんと言ったりとか、おいちゃんは頭ごなしに「馬鹿なんだから!」って言ったりとか。

木村:でも他人じゃないですか。

倍賞:そうだね。でも、そうね、ツッコミはやっぱりさくらさんだったね。

木村:血の繋がったツッコミをされてたのってさくらさんだけかなって僕は思ってて。その人がいなかったら、たぶんお兄ちゃんも好き放題できないし、たぶんそのつど叱ってくれる妹がいてくれるから、一瞬、自分がやらかしたことに「あ〜!」って思うんだけど、「思いました。(まる)」で終わらない。だから、次の作品がどんどんできるんでしょうね。

倍賞:そうだね、きっと。

木村:で、綺麗な人見りゃ、すぐ好きなって(笑)。

倍賞:そうそう(笑)。いいよね(笑)。

木村:1970年の「家族」だったり、1972年の「故郷」、あと「遙かなる山の呼び声」、そして、「幸福の黄色いハンカチ」っていう。

倍賞:一時、「家族」とか「遥かなる…」もそうだったな。「男はつらいよ」を撮りながら、撮影してたのね。

木村:並行して?

倍賞:並行して。九州から北海道まで5人の家族が移動していく話だから、夏に行って、冬の雪の解け始めに間に合うように九州を出て、って言うから、ここで夏のシーンを撮って、こっちの雪解けに間に合うように、みたいな。そんなふうにして行ったり来たりしながら、その間に「男はつらいよ」を撮って、「あ、雪が解けるから、東北から行こう」なんて、そういうふうにして撮ってたな、あの頃。

木村:じゃあ、山田監督恒例の“順撮り”っていうのではなく?

倍賞:うん。一応順撮りだから、こっちから夏なんだけども、雪解けに合わせて行くとか。

木村:ゴールを、季節に合わせて。

倍賞:そう。

木村:すげえな。「雪解けに合わせて撮影を開始するよ」っていう。

倍賞:で、真ん中で「男はつらいよ」を撮って。よくやってたわね。

木村:雪解けにはドンピシャで嵌まったんですか?

倍賞:そうそう。嵌まりましたね。
この間の「TOKYOタクシー」は(車窓の景色は)スクリーンが動いてくれたけど、「家族」という映画は汽車の中が多かったの。で、私が子ども2人、乳飲み子と、それからもう1人ヨチヨチ歩きの男の子を抱えて。いつも抱っこしながら手を引っ張って、ずっとウロウロしていて。
それで、岡山か何かで停車が長いっていうんで、子どもたちがむずがったから、赤ちゃんを抱えて、その手を引いて、ホームに出てたの。ホームの端っこの方にいたら、突然山田さんに「帰れ! 戻れ!」って言われて、そしたら「ピー!」って、(山田監督が)もうドアが閉まりそうになったのを必死になって押さえていて。慌てて子どもの手を引いて、抱っこしながら走ってって。
今の話は、山田さんがドアを押さえてくれたから、赤ちゃんも子どもも無事にちゃんと乗れて、また撮影ができたんだけど。
そういうふうにやりながら撮っていったんだけど、汽車の中だから、いつも景色が動いてるわけ。

木村:確かに。

倍賞:その後、「向こう側に海が見えた時を撮りたい」っていうシーンがあって。見ていて、「あ、今だ」と思って、「さ、本番、本番! 行くよ、本番!」っていう時に、「あの船、邪魔だ! どかせ!」って言いながら(笑)。動いてる景色だから戻ってはくれないし、もうすぐに過ぎちゃうし、飛行機なんか飛んでると、「あれ邪魔だ!」って言ったり。
そういうふうにしながら、「TOKYOタクシー」と違って、天候とか、動く景色にも惑わされながら撮影してました。

木村:ある意味、完全なるロードムービーですよね。

倍賞:そう。「TOKYOタクシー」はさ、車の中がゆったりしてたじゃない。「家族」っていう映画は、ちょっと移動する機会があった時、とても小さい車でぎゅうぎゅう詰めに乗れるだけ乗って、カメラマンも乗って。運転手は本職の人がやって、私の肩だけなめて、それで肩なめで後ろに乗ってる前田吟ちゃんの手が入らなきゃいけなかったんです(笑)。
それでみんなぎゅうぎゅう詰めで、「本番行くよ!」って山田さんが言ってる中で、誰もその手を出せないから、山田さんの手が出演して。その“指差す手”っていうのは、山田さんの手が今でも映ってるの。

木村:そうなんですか!

倍賞:うん。景色はそのちっちゃい車のまま、私の肩なめで移動してくっていうの。

木村:今、「家族」っていう作品のお話が出ましたけど、「九州弁を徹底的にマスターして」って監督から言われて、日常会話も九州弁以外は全て禁止にしたんですか?

倍賞:そう。九州弁を教える人がいて。

木村:方言指導の?

倍賞:方言指導の人が常にいて。撮影が終わったから井川比佐志さんとちょっとお茶飲みに行こうかって言っても、いつも(方言指導の方が)いるから、普段でも喋ってると直されるのよ。こういうふうに今話してることでも、「そこのところはアクセントがこうです」って。
なんでそんなことしたか、って言ったら、「隠し撮りをしなきゃいけない時に、もし撮影中に人に話しかけられてしまったら、九州弁で応えてください」って(言われた)。だから普段からこうやってお茶を飲んでても、ここで直す方言指導の人がいるわけ。それで「今のとこ違います。こういうアクセントになります」、「よかったとじゃなかったとやろかね」って。これ一番最初に覚えたんだけど(笑)。
わかる? 「父ちゃん、よかったとじゃなかったとやろかね」っていう。

木村:要はメロディーですよね。

倍賞:これは「まあいいんじゃないの?」っていう意味だけどね。
結構長い期間、そういうふうに九州弁で喋ってたから、九州弁が抜けなくなっちゃったの。本当に、何でも話しかけられたら九州弁で喋ってたし。
ちょうど、前の(大阪)万博をやってたのね。その万博の一番人通りの多いところで、カメラマンは自分のジャンパーの中にカメラを隠して、照明さんもみんなそれぞれが全部隠して。「もし監督が台本を丸めて、上に上げたら、そこに集まって撮りますから」って言われて。

木村:それ、もう今ではあんまり現場では言わないですけど、“ゲリラ”ってやつですよ。

倍賞:そう。
笠智衆さんも自分の荷物を持って、私は赤ちゃんをおんぶして、荷物持って、子どもの手を引いて、井川さんもみんなバラバラのとこにいて。ただ監督が見えるところにだけはいて、それで監督が台本を上げたら、みんながバーって寄って行って、バッとカメラを出して、ワーッと撮って。そんなことやってた。

木村:嘘でしょ? すげえ…。

倍賞:「そういう時に話しかけられたら、九州弁で答えてください」って言われてたの。

木村:うわぁ。

倍賞:でも、九州弁は、私は割と好きだったな。
最後のセリフなんか好きで、何となく今でも覚えてて、話が出た時とか、コンサートでよく九州弁で喋ってみたりするんだけど、だいぶ薄れてきちゃったけどね。そのぐらい身に入っちゃって、なかなかその言葉も抜けていかなかったね。

木村:やっぱり倍賞さんには、方言と言うよりもメロディーが残ってるんでしょうね。音が。

倍賞:そうかもしれない。

木村:たぶん音大生だったら今のフレーズを全部音階で言えると思うんですけど、たぶんそれが入っちゃってるんじゃないかな、って。
だって倍賞さんって、鼻歌が1回も外れたことないんですよ。「TOKYOタクシー」の劇中でも一瞬ふって口ずさむようなシーンもあるんですけど、それこそプライベートでスタッフのおうちにお邪魔して「ちょっと歌う?」みたいな流れになって歌われた時とか。びっくりするぐらい、1回も外れないんですよ。

倍賞:そうかなぁ? そんなことないよ。大体外れてる女だから(笑)。

木村:いや! でも、お話させていただいた、NHKの「のど自慢」でスタートしたっていうところ。“のど自慢荒らし”っていうふうに呼ばれてたらしいんですけど、そこに全部答えがあるんだなって思いましたね。

倍賞:よく車に乗ってて、ふっと何かを見ると、すぐ歌になっちゃうの。北海道なんかに行くと、友達の家にご飯を食べに行った帰りに、北海道は特に空とかよく見るんだけども、月が満月だったり、三日月だったり、星がいっぱいで零れてきそうだったり、っていうと、星の歌が出てきたりとか(笑)。すぐ、何かの拍子に歌になって歌いたくなっちゃう。

木村:それは現存してる歌ですか?

倍賞:そう。自分が作るんじゃなくて。作っちゃう時もあるけど(笑)。

木村:(笑)。
それで、ちょっと表現方法は変化するんですけど、2004年に宮崎駿監督の「ハウルの動く城」でご一緒させていただいてるんですけども。
ソフィーを倍賞さんがやってくださって、ありがとうございました。

倍賞:いや、あの時はほら、ずっと1人でアフレコってやってたでしょ? 私も1人でつまんないなと思って、「なんで1人でやるんだろう?」って。「木村拓哉さんって素敵な人と、初めて仕事をするのに、一度も会わないでこんな1人でアフレコするの?」って(プロデューサーの)鈴木さんに言ったんですよ。それで「わかりました」って言って、1日、2人のシーンを作ってくださって、アフレコさせていただいたんですよね。
その時はどんなお気持ちでした?(笑)

木村:とんでもない気持ちでした。

倍賞:いや私も、ドキドキしてました。

木村:いや嘘ですよ。

倍賞:いや本当よ。「すごいいい声だな」ってすごい思った。

木村:それ、今まで聞いてないっすよ(笑)。

倍賞:(笑)。そうだっけ? 「うわー、すごいいい声」と思って。
「こういう声だったんだっけか」って思った。普段よ。普段何かを喋っている時に、そう思った。お芝居の時にどうの、っていうんじゃないんだけど、普段そうだったし、「わ、いい子だな」と思った。

木村:本当ですか?

倍賞:うん、早く言えばよかったね。

木村:そうですね(笑)。

倍賞:(笑)。

木村:今月は、マンスリーゲストに倍賞千恵子さんをお迎えしてお送りしてきました。山田洋次監督91作目の「TOKYOタクシー」には、 もちろん倍賞さん、そして蒼井優さん、迫田さん、優香ちゃんだったり、中島瑠菜さんだったり、イ・ジュニョンさんだったり(が出演)。
現在公開中ということで、ぜひ皆さんに受け取ってほしいと思います。

倍賞:はい。

木村:この番組、いつもゲストの方に「人生の1曲」っていうものを伺わせてもらってるんですけど、伺っていいですか? 倍賞千恵子さんにとっての「人生の1曲」って何になりますか?

倍賞:やっぱり「下町の太陽」かな。

木村:おお!

倍賞:私のこの、芸能界と言うか、歌ったり演じたりする仕事を決めてくれた、っていう歌なのかな。だから好きとか嫌いとかっていうよりも、やっぱり自分にとって1つの大切なもの、大切な歌なのかな。「これからも歌っていこうかな」とか「これから役者としてやっていこうかな」って思えるようなきっかけを与えてくれた。今まで自分の夢とか何か思わなかったんだけど、「下町の太陽」によって「そうだ、俳優さんってなってみようかな」とかね、そんなふうに思えたのが、この「下町の太陽」なのかな。

木村:なるほど。ありがとうございます。

[OA曲]
M.下町の太陽/倍賞千恵子

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