日常に溢れる「言葉」に向き合う

最果タヒさん(詩人)×石井裕也さん(映画監督)

2017

05.14

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1986年生まれの最果さんは、当時、女性では最年少の21歳で中原中也賞を受賞した詩人。昨年、発表した詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」は、重版を重ね、詩集としては異例の、27,000部というベストセラーに。現代詩の枠を超えて、彼女の生み出す言葉が注目を集めています。

一方、1983年生まれの石井さんは、『川の底からこんにちは』や『舟を編む』などで知られている映画監督。『舟を編む』では、日本アカデミー賞で、最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞。さらに、アメリカ・アカデミー賞の外国語映画賞、日本代表に史上最年少で選出されました。

ともに”若手”の表現者として、注目を集めるおふたりに、“詩人” 、“監督”という立場から、日常に溢れる「言葉」について語っていただきました。

詩の世界を映像化する


5月13日から公開となった『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』は、最果さんの詩が原作で、メガホンを取ったのが石井監督です。

石井
今回、最果さんの詩を映画化したんですけど、詩を読んだ感想としては、自分と無関係ではないなと思いましたね。

最果
嬉しいです。

石井
どうしてもモヤモヤした感情はあって、それは言葉にできないというか、名前がつけられないもので、そういうものに触れようとしてくれていると感じました。

最果
ありがとうございます。詩は読んだ人が、その詩を自分の生活や状況に溶け込ませて、自分のものとして読んでもらうのが理想だと思っているので、映画化するとなった時にどんな感じになるかなと思いました。私は今だから書いている言葉があるので、今の東京を舞台にして詩が映画化されたのを見て、自分が今を原点にして出て来た言葉がまた今に戻ってきた感じがします。いろんな人の心を通じて戻ってきた感じは、すごく嬉しいですね。


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詩は不意打ちで出会うもの



石井
僕は小さい頃から手書きで書いているのですが

最果
今もですか?

石井
今はパソコンですが、たまに手で書いたりすると、思考するのと言葉が出てくるタイミングにズレがでてくるんですよね。要するにパソコンや携帯は、ほとんど、映像でデリートができてしまう。消したり、コピペもできますし、そうすると言葉をひとつの映像として把握しているような気分で。

最果
監督っぽいですね。

石井
だからこの一文をこっちに移すみたいな思考の流れになっていくような気がして、でも手書きだとどうしても書く時に手に伝えておかないといけないので、思考するリズムや言葉がでてくるタイミングが手書きと打つのでは違うことに最近気づきました。

最果
私も最近そのことを思って、何かに書きました。

石井
ほんとですか!

最果
誰だったかな?宮沢賢治か萩原朔太郎か、どっちかの詩の手書き原稿があったんですよ。原稿には、取り消し線を引いて、すごい大量の書き足しをして、その書き足しをさらに消して、さらに足してっていうのが全部残っていて、だから作品ができるまでの思考過程が残っていて、思考を漆塗りみたいに重ね塗りして作品を作っていたんだなというのがなんとなくわかったんですよね。私は最初から言葉をパソコンで書いていたんですよ。だから常にその時点での完成系が目の前にあって何も残っていかないんですよね。でもそれが私にはぴったり合うんですよ。

石井
うーん。

最果
読んでいる人もそういう感覚で読んでいるからなのかな。最近の人は、みんなそうじゃないですか。スマホで文章を書いて、手書きは見なくなった。そうなると、思考の過程が残っているというより、思考した後で出したものになるから結果ばかりしゃべるようになる。でもその状況で詩を書くのはおもしろいなと思っていたんですよね。Twitterで詩を投稿すると、みんなが考えに考えた末に書かれた文章が並んだりとか、あとお腹空いたとか直観的な言葉が並んでいる中に詩の言葉は、どっちでもなんですよね。曖昧だけどボールが大きいみたいな、それがボンと不意打ちでくる。詩は、不意打ちで出会うべきもので、不意打ちでの出会いは、いいなって思っているんですよ。

石井
なるほど、詩の不意打ちは、いいですよね。

最果
不意打ちいいですよね。


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■『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
新宿ピカデリー、 ユーロスペースにて先行公開中、
5月27日(土)からは、全国の劇場で公開されます。

映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」公式ホームページ

■最果さんの詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」は、リトルモアから発売中です。

「リトルモアブックス | 『夜空はいつでも最高密度の青色だ』 最果タヒ」公式ホームページ

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