今月ご乗船していただいているのは、手がけられたヒット曲の数は1000曲以上という日本が誇る作曲家・プロデューサーの、都倉俊一さんにご乗船いただいています。
都倉さんといえば、ピンクレディーや山口百恵さんなど、多くのヒット曲を生み出した方。
小学生時代・高校時代をドイツで過ごし、80年代からは海外でミュージカルを手がけるなど、ワールドワイドにご活躍されています。
現在では、東京、ロンドン、ニューヨークを拠点にして、ミュージカルを中心に創作活動をしている都倉さん、
ラストのご登場となる本日は、アメリカのエンターテインメントについて、おうかがいしました。
都倉「アメリカの一番すごいと思うのは、広大な国土と多様な人種が歴史的に、色々な文化を持ち寄っている事だと思います。21世紀に大きかったのは、黒人の力でしょうね。19世紀の音楽の中心はなんと言ってもヨーロッパですよね、20世紀はアメリカの世紀なんですよ。人種で軋轢もあったけど、その融合みたいなものがあったんですよね」
干場「色々なものが、重なっていった感じがありますよね」
都倉「伝統的な、重厚な芸術が育つ環境がありますよね。例えばナッシュビルに行くと、カントリー&ウェスタンとか、レコード会社が一番多く集まってる場所です。あとは、ニューオーリンズジャズからミシシッピ川を上って行くと、いわゆる黒人のブルースになっていく」
干場「ルーツという事ですね」
都倉「そこで白人の繊細な感覚が混ざって、ゴスペルからブルース、ジャズへと流れていく。セントルイス辺りから、シカゴ、ニューヨークと、これが世界に冠たるアメリカのジャズが完成したわけですよね。ニューオーリンズジャズとね、シカゴ、ニューヨークでやってるソフィスティケイトされた現代ジャズとは、また全然違う感覚ですよね。それはルーツですから、大きな流れがあったわけなんですよね。かたや西部開拓で、カリフォルニアに辿り着くと何も無いわけですよ」
干場「気候もまた、全然違いますよね」
都倉「そこに街をドンと作ったわけですよ。それが何を隠そう、ロサンゼルス。ずっと熱いし、雨は降らないし、あの渇いた空気でピアノを弾くと、抜群の音がするんですよ。同じピアノを東京のスタジオで弾くと、何で?っていうくらい違うんですよね」
干場「それは、何が違うんですか?」
都倉「やっぱり空気が乾いてるんですよ。写真も映画も、やっぱり違うじゃないですか。映画が一番ですね、何の束縛も無く、ただ映画を作ろうと、20世紀初頭にハリウッドが出来たわけですから。そういう自由奔放な雰囲気のある、西部開拓魂。歴史も伝統も何もないけど、とにかく新しい事をするならウェルカム!という、そういう場所があるのは幸せだなと思いますね」
干場「最近の若い世代では、海外旅行に行く人が減っているという話もありますが、若いからこそ出来る旅というのもあると思います。都倉さんから若い世代にアドバイスをするなら何ですか?」
都倉「言葉の生涯を克服する事、いつも言ってるけど、言葉なんていらないんですよ。最低限のボキャブラリーを持っていれば大丈夫だと思います。日本人に一番足りないのは、コミュニケーション能力なんですよね、ボディランゲージでも何でもいいんですよ。「You」とか「Have」とか、10個くらいの言葉を駆使すれば通じるんですよ(笑)」
干場「経験をされてきてますもんね」
都倉「それが克服出来たら、お金は置いておいて、アメリカ、ヨーロッパは貧乏旅行が出来る方法がいくらでもありますよ。泊まり方、交通手段、これを研究すると、後は自分が行きたいか行きたくないかですよ。目的があったら、行くべきだし、自信が付きますから。一つのプロジェクトを成し遂げたみたいなね。そういう目的意識があれば、楽しいもんですよ」
干場「最後に、1ヶ月にわたって旅のお話をおうかがいしてきましたが、「旅」とは、都倉さんの人生において、どんなインスピレーションを与えてくれるものでしょうか?」
都倉「僕は、どこに行っても適応出来るタイプの人間だと思うんですよ。まず食べ物に苦手意識が無いんですよ。アメリカに行って、ピザとジャンクフードしかなくても生きていけるんですよ。どちらかというと肉食なので(笑)。僕の理想は、一年間を4つに分けて移り住む事が出来ればね、それがすごく理想だなと思うくらい、定住型の人間じゃないと思う。逆に、日本に一年間ずーっといると、ちょっと本能的に、どこか出たくなってしまうんですよね」
干場「刺激を求めていくんですかね(笑)」
都倉「最近ね、いい歳になってきたので、もうちょっと日本を開拓したいなという気になっているんですよ。子供の頃に外国で育っているので、あまり外国に行く事に違和感がない、スター誕生で12年間、毎月旅してたけど、ホテルと公会堂とゴルフ場以外、俺はどこを見たんだと(笑)。47都道府県ほとんど行ったんですよ。それは一つ、僕の「旅」というテーマで日本を旅するというのはあるんですよ」
干場「改めて、日本を見つめ直したいということですね。では、旅を一言で言うとすると何ですか?」
都倉「やっぱり旅=イマジネーションですね。知らないとこに行く前も、過ごして帰って来てもイマジネーションはどんどん広がりますよね。僕の想像力を大きくしてくれてるというのはあると思います。
