今月ご乗船いただいているのは、小説家の平野啓一郎さんです。

取材旅行や、ブックフェアなどで、海外に行かれる機会も多い平野さんにお話を伺っていきます。

第2回目の旅先は「ハンガリー」です。


ー 僕の中で”夢のような、悪夢のような光景”になっていって、『透明な迷宮』という小説を思いつきました ー



干場「今日は、ハンガリーの話をうかがいたいと思います。ハンガリーはどこに行かれたんですか?」

平野「ハンガリーは、ブタペストに何回か行きました。そこから車で行くペーチという古い街があって、初期キリスト教の立派な遺跡がのこっていて、世界遺産にも登録されているんです。去年、そこに2週間滞在しました」

干場「それは、2014年に出版された、小説『透明な迷宮』の舞台となった場所ですかよね」

平野「何回か前にブタペストに行った印象が強烈で、それを元に描いた小説ですね」

干場「ブタペストはどんな印象でしたか?」

平野「ヨーロッパの古い街はいろいろ見たけど、ブタペストは本当に綺麗で。19世紀後半から、20世紀初頭にかけての建物が充実していて、ネオゴシックの建物から、アールヌーボーの独特の様式の建物があって、すごく綺麗なんです。ドナウ川を挟んで『王宮の丘』というのがあって、そこが見どころですね。
社会主義時代がありましたから、街中に社会主義時代の秘密警察の建物が博物館になったりしてるんですよ」

干場「そうなんですね!」

平野「ファシズム時代に、ここにナチスの本部が置かれて、そのあと秘密警察の建物になって…みたいな場所なんですけど」

干場「ちょっと暗さが残っているんですか?」

平野「悲惨な歴史を見て、街並みの美しさを見て、僕の中で”夢のような、悪夢のような光景”になっていって、『透明な迷宮』という小説を思いつきました」

干場「ライター・イン・レジデンスのご招待で行かれたということですが、どういう制度なんですか?」

平野「ペーチ市が作家を招いて、2週間滞在してもらいながら、創作活動をしてもらうっていうプログラムですね。
ヨーロッパ各国の作家が、僕の前にもずっと滞在していて。提供してくれるアパートに住んで、文章を書いたりしてました」

干場「ハンガリーのペーチに来たから、『ペーチのことを書いてね』ということなんですか?」

平野「基本的にはそうですね。そんなに大作を求められませんでしたけど、街の印象とか、いろいろ書きましたね。
すごくコンパクトな街で、本当に美しくて、ちょっと丘になっているので立体的なんです。
風景が変化に富んでいて、街の真ん中には大きなショッピングモールがあるので、古い街並みと便利さ、両方があるんですよ。
あと、いまハンガリーの医学部に日本の学生が留学するのが、ちょっとしたブームなんですね」

干場「なぜですか?」

平野「ハンガリーは大学の医学部の水準が高くて、授業は英語だし、そこで勉強すると、ヨーロッパでどこでもお医者さんになれるライセンスを取る資格があるんです。学費が安かったり、いろいろな理由で日本からも留学生が来ていて、ペーチも、その中での重要な大学のひとつが存在していて、日本人の留学生も来てました」

干場「ヨーロッパ然とした、古い街並みという感じなんですか?」

平野「そうですね。キリスト教の初期の建物があると同時に、オスマントルコの影響もあったので。
モスクの古い建物が、時にはキリスト教徒に利用されたり、ひとつの建物でも歴史があったりしますね。でも、みんな親切で食べ物も美味しいですし、いい滞在でしたね」


「クルーズ船で働く人たちの様子を見学できるツアーはありますか?」

保木「船内見学はできますけど、クルーの暮らしだとか生活の場を見るっていうのは、セキュリティの問題もありますので、実施している船はないですね。
船によっては、綺麗に整えられてるバックやードを見ることは、たまにあります」

だいたい、従業員の方は制服を5着も、6着も持っていて。
いろんなことを受け持ちながら、世界を回っているのは楽しい空間だと思います。
一度船に乗られて、バックヤードとか、キッチンのツアーがあれば、ぜひ参加していただきたいと思います」