ふたりの”今”

大宮エリーさん(脚本家)×鈴木杏さん(女優)

2016

06.26


 
作家/演出家/画家など活躍の幅を広げている大宮エリーさんと女優の鈴木杏さん。おふたりは、お互いに時を重ねていく中で、それぞれの興味や表現の幅はどう広がっているのでしょうか。


同じ空間と同じ時間を共有する



おふたりの出会いは、8年前。大宮さんが演出、脚本を手がけたドラマ「ルームオブキング」で鈴木杏さんは主演を務めました。
その後も、鈴木さんは、数々の舞台に立ち、女優としての経験を深め、現在は、29歳。
一方、大宮さんは、ジャンルを飛び越えて活動していく中で、近年は、画家・アーティストとしての新たなチャレンジがスタートしています。ミュージシャンの生演奏とともに、ライブペインティングをするなど、独特な表現方法は、大宮エリーさんならではです。



大宮
手ごたえがあったのは、原田郁子ちゃんとやった時に、彼女が、海の歌を歌って、私は、みんなの心に浮かんでいるようなことを感じ取って描くので、海を描いたの。打ち合わせなしで場の雰囲気を読んで、郁子ちゃんが弾くのを聞いてから描くから。「海」と思ったから、そう描いたら、お客さんたちも、「そうそう」ってなったの。その後、なんだか、不安だなぁと思ったので、灰色の空を描いたの。そして、振り返ったら”キレイな海に青空じゃないの?”とみんな不安そうになってしまっていて。次、明るくなってきたから、不安感を払拭するために、虹をかけて、エメラルドグリーンの雨を降らしたの。そして、後ろを振り返ったら、お客さん、みんな泣いていた。それがライブだと思った。これは、本でも映像でも映画でもできないことで、一緒に場を共有する。私は、役者ではないからお芝居で共有することできないけど、杏ちゃんがやっていることは、こういうことなのかなぁと思ったりして。

鈴木
同じ空間と同じ時間を共有するっていうだけですごいことだなと思う。毎回違うしね。不思議ですね。


なぜ絵を描くのか?



現在、大宮さんは、「画家」として、青森県の「十和田市現代美術館」で、「シンシアリー・ ユアーズ ― 親愛なるあなたの 大宮エリーより」 展を開催中です。



大宮
是非、来てよ、十和田に。

鈴木
行きたい!

大宮
美術館としても好きで、まさかわたしがやらしてもらえると思わなかったからびっくりして。でも、これには、試練があって、美術館には年間14万人ものお客さんたちが来るんだけど、周りはシャッター商店街なの。その格差が問題になっていて、そこで、この前、空き店舗の中で絵を描いてきたの。空き店舗4つを借りて、それを大宮エリーの商店街美術館にするという。せっかくだから、十和田で生まれる絵にしたくて。最初に行った時は冬で、これからの春、夏のエネルギーを感じたの。

鈴木
全部冬に閉じ困っているんだ。中でうずまいているみたいな。

大宮
冬に一番エネルギーがあると思ったから。冬の十和田という絵を描いたの。そこにクレパスでいろんな光の粒を打ち付けた。私、お酒を飲んで描いたりするんだけど、シャーマン的な書き方をすると言われたことがあった。人払いをして描くんだけど、歌を歌い、泣きながら描いて。自然からエネルギーをもらうから自然ってすごいなぁ。感動しちゃって。いろんな仕事をしてきたけど、それは、絵でしかないんだよね。文章の仕事で全部伝えてきたのに、絵は言葉がないのに伝わるんだなと思って。

鈴木
私、ずっと「ほぼ日手帳」を使っているんだけど、日記が続かないから、今年の頭から一日一枚絵を描くようになったら、その作業が心地よくなってきていて。ただ線を描くのが好きなんですよ。線を描いていって、見えていったものを形づけする。言葉よりも絵のほうが余分のものが削ぎ落とされて伝わる気がして、絵のほうに寄り掛かっているんですよ。

大宮
ほんとに?タイミングが一緒だったね。





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