仕事をしていく中で知った大きな気づき

大宮エリーさん(脚本家)×鈴木杏さん(女優)

2016

07.03


 
作家/演出家/画家など活躍の幅を広げている大宮エリーさんと女優の鈴木杏さん。表現者として、変化や成長し続けているおふたりが、仕事をしていく中の知った大きな気づきとは?


ターニングポイントは30歳





大宮
今いくつだっけ?

鈴木
29歳になりました。

大宮
まだ、土俵際いっぱい20代なんだね。うらやましい。私40歳になっちゃって。

鈴木
20代後半は、どよよんと、鬱屈しているよね?

大宮
私は、30歳で会社辞めたから。

鈴木
やっぱり30ってみんな何かあるのかな?結婚したり、仕事を変えたり、30歳の区切りは大きい気がする。

大宮
みんな30歳手前で悩むよね。私は23歳で会社に入って、27、28歳の時に、このまま会社員でいいのかな?とか悩んでいて、ホワイトボードに行き先を書いたり、出張申請書を出すのがイヤだった。事務的なことがダメ。上司に組織に向いていないと言われた時に、ほんだ!と気づいて、辞めようと思ったのが30歳の時。

鈴木
今、40歳だから、ちょうど10年くらいか。

大宮
辞めてからは、無我夢中だったね。ドラマとか演劇とかいろいろやらせてもらって。

鈴木
エリーさんのお仕事は、垣根がない感じがする。

大宮
そうだね。ドラマをやりたい人でも演劇をやりたいっていう人でもないから、その場にいた人たちとフィーリングで、その場に合ったものを作る。ただ出口が違うだけで、自分にとってはいろいろやっている感覚はないんだよね。

鈴木
出し方の違いで、ひるんじゃう人が多いと思うんですよ。でもエリーさんは、飛び込んでいけるのがすごいといつも思う。

大宮
飛び込んでないけど、そうせざるを得ない。私が望んでいるわけではなくて仕事が降ってくる。その時に辞めるという手もあるけど、そこに意味があるとか、やったことで見えてくる世界があるのかな?とか大きな勉強のチャンスを棒に振っていいのか?とも思う。とはいえ、やることでバッシングされることもある。でも、わかっている人だけがやればいいの?となると、そうではないし、わかってない人がやることが表現ではないのかな。そういう人がいることで、おもしろくなっていけばいいのかなと感じるので、私は、切り崩していく役だと思う。


蜷川幸雄さんの言葉



鈴木杏さんが、女優としてステップアップしてこられたその裏側には、先日、惜しくも亡くなられた演出家、蜷川幸雄さんの存在がありました。「ロミオとジュリエット」、「ムサシ」、「海辺のカフカ」といった数々の作品でタッグを組んで、一緒に舞台を作り上げてきた蜷川さんと鈴木さん。大切なエピソードを語ってくれました。



大宮
蜷川さんってどんな方だったんですか?

鈴木
すごい戦っている人で、厳しいイメージが先行しているけど、優しい人だった。役者にあえて悔しい思いをさせるとご自身もおっしゃっていて、悔しさをバネにしないと芝居はうまくならない。だから、悔しさを与えるために怒ったりする。

大宮
そういうのへこむ!悔しいと思う心のバネあるかな?

鈴木
人によるけど、蜷川さんの側に集まる人は、悔しいと思う人が多かったんだと思う。

大宮
違う違うと言われて、それ!って言われたら嬉しいよね。

鈴木
だから、みんなが蜷川さんからよかったと言われるのを目指している。蜷川さんの笑顔を見たいがために。スタッフさんもそうだった。蜷川さんが一言いうと、ないものが5分後に出来上がるんですよ。そういう飴と鞭の塩梅が絶妙だった。

大宮
蜷川さんの言葉に育てられたとかある?

鈴木
近年では、「杏ちゃん、勉強しすぎだから勉強するな」と。それまでは、よっぽど才能ないと芝居なんか勉強しないと出来ないとおっしゃっていて、私は、舞台見るのが好きだったから、「頭でっかちになるから芝居は、見るな。頭でっかちになるとふくよかな芝居が出来なくなる。芝居を見に行ったどこかの劇場で会ったら首締めるぞ」と言われた。だから見るのを減らして。まだ、その本質とか、言わんとしていることがなんとなくしか自分の中でわかってないから、後からフィットしていく言葉がたくさんあると思う。

大宮
杏ちゃんにしか出来ない役があるよね。

鈴木
そうなのかな?年々、お芝居って何なんだろう。よくわからなくなってきている。何がよくて何が悪いのかもわからないし、それは、見た人が決めることだから。
蜷川さんに怒られたことがあって、「杏ちゃんよかったよ」と言われて、「ありがとうございます」といったら「本気の気持ちで言っているんだから、礼儀で返すんじゃない」と言われた。そういう時は、「あ、よかった」と言えばいいいんだよ。と、そういうお芝居以外のことも教えてもらっていたんです。





大宮エリーさんの個展
「シンシアリー・ユアーズ ー 親愛なるあなたの 大宮エリーより」
:公式ホームページ
期間: 2016年5月28日(土)〜2016年9月25日(日)
会場:十和田市現代美術館


鈴木杏さんご出演の舞台
「母と惑星について、および自転する女たちの記録」
:公式ホームページ
公演日程: 2016年7月7日 (木) 〜 2016年7月31日 (日)
会場: パルコ劇場


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