「捨てる」行為

夏木マリさん(歌手・俳優・演出家)×地曳いく子さん(スタイリスト)

2016

07.24


 
「歌手・俳優・演出家・・・など幅広くご活躍する夏木マリさんは、その独自のファッションスタイルでも女性たちの憧れの存在として、知られています。一方、キャリア30年超のスタイリスト、地曳いく子さん。彼女が書かれた『服を買うなら、捨てなさい』、『着かた、生きかた』は累計40万部突破するベストセラーとなり、30〜50代を中心に多くの女性たちから支持を集めています。

洋服は男と同じ



夏木
ライブ終わった後に、Q&Aをやっていて、よく生き方の質問が多いんだけど、ボーイフレンドとうまくいかないという質問の時に、”恋人なんて捨てちゃえばいい”とか言っているのにもかかわらず、洋服になると私は捨てることができないんです。本当は、生き方とリンクしないといけないのに。

地曳
私たちは、戦中、戦後の親に育てられ、おばあちゃんに「洋服を捨てるのは罪人」くらいに言われりしませんでした?

夏木
ごはんは残さず食べなさいと一緒ですね。

地曳
そうそう!でもまた洋服を買ってしまう。買った時には表裏一体で。いつかとか誰か着てくれるとかは、誰かに委ねているだけで、もし、わたしが今日、急死したら、誰かが捨てないといけない。

夏木
私もこの頃そう思います。

地曳
そうそう。買ってしまったんだから罪悪感は仕方ない。捨てるとセットにすればいいいんですよ。

夏木
だから、服と付き合っている時に愛してあげればいいんですね。愛しきれない、だからごめんなさいと。

地曳
新しい服がきたら、ごめんね、前の人みたいな。新しい服も失敗するじゃないですか、こんなはずじゃなかったとか。その時は、とっとと早くリサイクルに出すとかして、それは勉強代だと思うしかない。新しく付き合った男がだめだったら捨てればいいのと同じ。

夏木
それは、言ってるんですよ。洋服との付き合い方が雑だと思って。急に別れる時に別れたくないって足掻く女みたいになってる。

地曳
やっぱり好きだったのに〜みたいな。

夏木
あなたのいいところをもう一回見つめてあげるみたいな。

地曳
そうそう!服はそういうところがあるんですよ。あの時、あんなにかわいかったのにとか。でも昔の元カレにSNSで見つけられて、ランチとかすると、やっぱり、ここがキライだったら別れたんだとか思い出したりして。

夏木
それは絶対ダメ!

地曳
だから、服も一緒。取っておいてもう一度着ると、昔、着心地悪かったとかイヤだった思い出が蘇るんですよ。

夏木
男と同じに思えばいいんですね。だから付き合っている時にいっぱい愛してあげる。全力で付き合って、すっきり別れる。

地曳
新しいモノを買ったら、それに全力でいい。

夏木
モノが多すぎるからみんなを愛せないんだ。数を減らして、愛して賢く別れる。

地曳
そんなに面倒を見ることができないんですよ。だから、クリーニング出すのを迷った服は捨てちゃう。

夏木
地曳さんの本に書いてあったけど、朝一回着て、”あれよくない”と思った服は捨てなさいって、それはすごい思い切りですね。

地曳
一回着て、ちょっと違うと思ったのは、ダメ。よくテレビとかでベルトを使うとまた着られるとかやっているけど、その能力とそんな暇はない。朝、着て、きつかったタイツとかはそのままゴミ箱いきでいい。

夏木
なるほど。この思い切りはリスナーのみなさんと共有したい。

地曳
でも、そんなこと言いながら、家に服がいっぱいあるんです。すみません(笑)






スターの愛人になったつもりで捨てる



夏木
どうしたら捨てる勇気がついて、バサバサっと捨てられるんですか?

地曳
実は、私は捨てられない女なんですよ。だから、自分でどうしようかなと思って、本を書いたんです。逆に捨てられて、ミニマムな人だったら、こんなこと考えられないですし、捨てられない人の気持ちがわからない。では、どういう風に捨てるのかなと思った時に、いくつかメソッドがあるんですけど、まず、自分がブスに見える服は全部捨てる。足を引っ張るから。昔、かわいくしてくれたワンピースも今の生活スタイルでは着ないぞという時は捨てる。

夏木
それが、ハイブランドだったらどうします?

地曳
ハイブランドでもゴミはゴミなんです。ブスはブス。もうひとつは、私がロックスターの愛人だったらメソッド。これ着るかなとか?こんな伸びたパンツ履いているかな?とか妄想で捨てられる。

夏木
じゃ、私が世界一のロックシンガーだったらということで、今日、帰ってクローゼット見たら、いらないものいっぱいある。今、思いつくだけでもいっぱいある!

地曳
そういう風にすると意外にいけるんですよ。まだ、私の家も途上なんだけど、何回リセットしてもなくならないですよね?

夏木
そうそう。

地曳
生きている限り増えていきますよね。

夏木
買わないと決めて、旅でもそうとう買わなくなったけどだけど、なんで増えて帰ってくるんですかね?

地曳
そうなんですよ。1枚か2枚しか買ってないけど、昔、あまりに買っていたからで、 1枚も2枚もうっすら増えているんですよ。

夏木
うっすらね。

地曳
お掃除と同じで、うっすら埃が溜まって、それが、どんどん溜まっていくんですよ。


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