映画を撮る上で大切にしていること

諏訪 敦彦さん(映画監督)×世武裕子/sébuhirokoさん(映画音楽作曲家、シンガー・ソングライター)

2018

01.21

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定型のシナリオを作らずに撮影される手法が、国内外で絶賛されている諏訪監督。三浦友和さんが主演した作品『M/OTHER』では、カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞されました。一方、世武さんは、NHK連続テレビ小説「べっぴんさん」など、数々のドラマや映画などの音楽を手掛けると同時に、ご自身もシンガーソングライターとして、作品を発表されています。

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意外な出会い



諏訪
おはようございます。

世武
おはようございます。よろしくおねがいします。

諏訪
お久しぶりです。そもそも、世武さんのことは、そうとう前から存じ上げていたのですけど。僕、最初は映像で見たんです。

世武
え!恐ろしい話じゃないですか。

諏訪
僕が前に東京造形大学で教えていた時に学生が作った映画の中に出演していたんです。

世武
(笑)

諏訪
だいたい大学の学生同士で撮っているんだけど、ひとり知らない人がいて、「この人誰って?」となって。最初は音楽どころか何をやっている人か知らないままでした。

世武
その時は映画音楽をやりたかったんですけど、とにかく映画を作っている人たちと触れ合いたいと思っていて、造形大にはおもしろい人が多くて、つるむようになったんです。尊敬している諏訪さんがいるから造形大で映画をやりたいという人が多くて、わたしもそういう話を聞いたりしました。

諏訪
吉田 光希君たちがいた頃で、その後、吉田くんは監督になり、世武さんはその映画の音楽をやられて・・・。

世武
その作品「家族X」が劇場公開している日本の映画の最初で、あれを観て、東宝の音楽プロデューサーの方に声かけてもらって、東宝で長編映画をやることになり、自分のキャリアがスタートしたところがあるので、造形の人たちと出会いは大きいですね。


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「わたしとあなた」の関係を大事にする


1月20日から公開になった諏訪監督最新作『ライオンは今夜死ぬ』は、ヌーヴェルバーグを代表する映画『大人は判ってくれない』などで知られる俳優、ジャン=ピエール・レオを主演に迎え、南仏を舞台に、かつて愛した人を捜して古い屋敷を訪れた俳優と映画撮影ごっこをする子どもたちの交流を描いています。

諏訪
 造形大学の学生たちと10年くらい一緒にやったかな。学生たちは、4年で出ていってしまうけど、彼らを観ていると自分にとっても、すごくよかったし、「わたしとあなた」という関係を大事にする。普通、学校で映画をやったりすると、「あなた、カメラマンね」とか「わたしは監督で」、「あなたはこの役割ね」と商業的なシステムを真似することが喜びだったりするんだけど、造形の子たちは、どんなにプロフェッショナルな仕事になっても「わたしとあなた」という関係ではないと信じられないというか、今回は、ジャン=ピエール・レオに出演してもらったけど、ジャン=ピエール・レオは映画を見ている人にとっては大きな存在で恐れを感じなくはないけど、目の前にいるこの人という圧倒的な現実があるんですよね。この人とやるほうが大事で、過去や神話を意識してしまったら撮れなかったかもしれないですね。昔、助監督をやっていた頃に、山本 政志監督がカメラマンを探していて、こだわりがあって、なかなか決まらなくて。ちょうどその頃『ストレンジャー・ザン・パラダイス』が公開されていて、「あれはよかったね」という話になって、「それなら、あのカメラマンに頼んでみたら?」と半分冗談で話したわけですよ。居酒屋で。「いいなそれ」となって、トム・ディチロという撮影監督にたどり着いて結局、やってもらえることになったの。

世武
えー!

諏訪
日本に来て、現場は大変なことになったんですが、でも言ってみるもんだなぁって。彼も山本監督作をN.Yで見ていたし、映画って繋がるものだなぁ。日本にいるとジャームッシュとかゴダールとか神格化されがちですが、一緒に働いてみよう。だって今この時代を一緒に生きていて、映画をやっているんだからと思うようになった。そのハードルがぐんと下がるようになって、言ってみればなんとかなるんじゃないかというところがありますね。


諏訪敦彦監督最新作『ライオンは今夜死ぬ』は、1月20日より、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて全国順次公開。

世武裕子さんが音楽を手掛けた映画『リバーズ・エッジ』は、
2月16日よりTOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー。

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