「サカナクションMV対談!江島啓一×森 義仁 (後編)」

SCHOOL OF LOCK!


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聴取期限 2022年8月26日(金)PM 10:00まで




音を学ぶ "音学" の授業、サカナLOCKS!。
お休み中の一郎先生に代わって、このクラスの副担任・サカナクションのドラム:江島啓一先生が授業を担当中です。

今回はゲスト講師に、映像作家の森義仁 監督をお迎えします。
前回につづいてのご登場です。サカナクションとはデビューの頃からのお付き合いで「三日月サンセット」「ナイトフィッシングイズグッド」などのミュージックビデオを担当。最近では、映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』も監督されています。今回は"映像作家" としてのお話を伺います。


江島「はい、授業を始めますから席に着いてください。Twitterを開いている生徒はTwitterを一度閉じなさい。Instagramを開いてる人は、サカナLOCKS!のインスタアカウント(@sakanalocks_official)をフォローしなさい。授業が始まりますよ。今週も副担任の僕がサカナLOCKS!をお届けしたいと思います。ということで、先週に引き続き、この方が来てくれました。映像作家の森義仁さんです。よろしくお願いします。」

森「よろしくお願いします、森です。」

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江島「森ちゃんと呼ばせていただきますけど……森ちゃんは、サカナクションの「三日月サンセット」「ナイトフィッシングイズグッド」などのミュージックビデオの監督をやってくれていると。」

森「撮りましたね。「ナイトフィッシングイズグッド」は一郎さんと2人で東京で飲んだ時に、ガチで釣りをするPVをちゃんとやっておきたい!……みたいな(笑)。1曲の中で魚を釣りたいみたいな。」

江島「アルバムのタイトルが『NIGHT FISHING』だからね。」

森「じゃあ、ガチで魚を釣るっていうだけのPVを作ろうって。」

江島「そこからスタートしたんだ。」

森「そこからスタート。あれも結構フットワーク軽く……12月くらいにその話を聞いて、どこかで釣りだけする映像を撮ろうってなって。確か、正月の……1月4日くらいに、岐阜の一郎さんの親戚の家に行って。僕、三重出身なんです、その足で実家に帰ればいいやって思っていて(笑)。で、カメラ一台だけ持って。」

江島「あれだもんね、一発撮りというか……」

森「そうそう、ワンカット。」

江島「ワンカットだもんね。」




江島「そういえばさ、(三日月サンセットの) ショートムービーあるじゃん、デビュー前に撮ってくれた (※先週の授業で話していたもの([2022年8月12日の授業])。あそこに出演してくれた松浦祐也さんって、「ナイトフィッシングイズグッド」に出てくるおじさんだよね?」

森「そうそう。一郎さんにみかんを渡す。」

江島「そうか、それ繋がりもあるんだね。あれにまっつん(松浦さん)が出てくれたの。」

森「食えない監督と食えない役者がよくつるんでて(笑)。」

江島「ふふふ(笑)。あるあるなの?」

森「あるある……なんかな?(笑) お互い仕事ないのに、飲んで映画とかPVの批評ばっかりするっていう。自分たち何もしていないのに(笑)。」

江島「文句ばっかり言ってた(笑)。」

森「そうそう(笑)。」

江島「そうやってさ、その後もたくさんのミュージックビデオを撮ってきて、今もそういう感じ?ミュージックビデオの撮り方というか、アーティストとの接し方というか。」

森「いや、そんな近いアーティストはサカナクション以外はいないけど(笑)。でも、撮り方とかも毎回違うから……アーティストの企画によっても違うし、アーティストの特性によっても違うから。」

江島「僕らの場合はさ、山口一郎っていうやりたいことが常に溢れかえっているやつがいて、こんなのやりたい、あんなのやりたいってばーって言われたやつを具現化するみたいな感じだったじゃん。サカナクションの場合。他の人たちは、0から1を森ちゃんが作るってこともある?」

森「でも、そっちの方が多いかもね。曲だけ聞いて、ゼロベースで大枠のこういう感じはどうですかっていう企画書を作って、これいいですねってなって……っていう感じかな。」

江島「それってさ、どういう感じで想像力を掻き立てるの?」

森「曲のインスピレーションはもちろんあるけど、ちょっとコンサルに近い……じゃないけど、ある程度、このアーティストがこういう風に見えたら面白いなとか、そっちをまず持っていって。それって変な話、曲聴く前からなんとなく持っていたりして。」

江島「アーティストに対するイメージを?」

森「うん。アーティストがこう映ったら面白いとか、この人がこういうことをしたら面白いんじゃないかとか、そういうことの意外性みたいなところに、意外と自分は重きを置いているかもしれないなって思って。もちろん、曲のメッセージ性も強いんやけど。その人の見たことない顔が見てみたいっていう感覚がちょっとあって。それがファンにも喜んでもらえる一面を見せられたらいいなっていう……最近はそういうイメージが強いかな。」

江島「映像チームというよりは、アーティストのプロデューサー的目線になって?」

森「うん、気持ちね。今は名前が変わっちゃったけど、欅坂46の「避雷針」っていう曲があって。何本か撮影させてもらったんだけど、それが僕が欅坂をやった1本目のやつで。自分が考えた企画で、その自分が考えた企画に寄り添った振り付けをPV用に作ってやるじゃないですか。東京ドームとかでライブを観たら、自分が考えたことをベースに振り付けが作られていたりするから……あの時考えてよかったなって。」

江島「え!あれの振り付けとかもやっているの?」

森「いや、振り付けはやってない。でも、振り付けのベースというか、こういう感じで撮りたいし、こういう世界観なので、こういうダンスをしてくださいっていうお願いを最初に振付師の人にする。」

江島「そのオーダーするのを森ちゃんがやってるんだ!」

森「うん。それはPV用にやることなんやけど、それが東京ドームとかで、自分の考えたPVの世界観っぽく再現されて、(ライブを観て)お客さんがわーって喜ぶじゃないですか。当たり前だけど(笑)。巡り巡って、こんなに喜んでもらえることをしているんだ……って思ってちょっと感動したりする。」

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江島「そんな森ちゃんなんですけど、ミュージックビデオをたくさん撮ってきた……それだけじゃなくて、CMとか、ドラマとか、最近では映画もやっていると。映像作家がMVもCMも映画もっていうのは結構普通のことなの?」

森「数からするとそんなにいっぱいいるわけじゃないと思うけど、そういう人もいるし、マインドとしては、世の中の監督がそうありたいって思っている人が多そうな気はなんとなくしますけど。」

江島「映像に関わるものなら何でも関わりたいっていう人?」

森「うん。そう思っている人が最近は多い気がする。僕らの世代は。あとちょっと下の……(山田)智和とかも多分。ごめん、勝手に話しとるけど(笑)。多分そう思っていると思うけど。かたや、映画は映画、CMはCMって職人的にやっている人もいて。」

江島「行き来することによってある意味いろんな世界を知るわけじゃん。それが良いこともあるだろうし……」

森「良いことは、まず、全てにおいてなんですけど、答えがないじゃないですか。正解がない。もちろんPVのいいところがあるし、CMのいいところがあるし……っていういいところを、映画を撮る時に、映画のいいところ以外で出せる部分っていうもあるなって思う。」

江島「フィードバックできるの?」

森「すごいフィードバックできるなって思う。」

江島「CMの経験とだったりミュージックビデオの経験を映画に持ってきたりもできるっていうこと?」

森「俺はできたと思う。」

江島「今回の映画(『ボクたちはみんな大人になれなかった』)で?でも、作法というか、CMはこうやらないといけないみたいな……結構違いがあるような気がするんだけど、素人目からして。」

森「違いはあるし、映像を作る文法みたいなのは違うけど……切り取り方というか。CMって時間が短いから、削ぎ落として本当に見せたいもの、言いたいことっていうのをしっかり言い切るっていうのがあって。映画でも、シーンによっては……特に冒頭とか。分かりやすいのでいうと、冒頭って、今の時代ってNetflixとか観ても10分くらい見てやめちゃえたりするじゃないですか。その脱落を防ぎたいじゃないですか。」

江島「ちゃんと最後まで見てほしいって。」

森「そう。最後までみてほしいから、最初のシーンは情報量を詰め込んで。飽きさせないというか、最初のドライブに乗せるというか……そういうのは特にCMとか、バズムービーってここ5年くらいで流行ったものがあって。僕、バズムービーっていうのをすごいいっぱい作っていたんですよ。僕がやったのは、それこそ広告でカンヌの賞をとったんやけど……」

江島「聞きました?皆さん。カンヌとってます、この人!」

森「そうなんです……最近あんまり褒めてくれないから自分で言うようにしているんですけど(笑)。それは、docomoのCMで、3秒でエビフライができるっていうギャグのくだらないやつだったんですけど、それがカンヌで評価されていろんな賞をもらったりしていたんですけど。それを作っているときに、本当に脱落させないっていう……5秒でスキップさせないとか、脱落させないみたいなのをすごい気にしてやっていたから。」

江島「最初の数秒が勝負?」

森「そうそう。尺は違うかもしれないけど、Netflixとかだと5分でやめれちゃうケースが多いから……映画館だといいんですけど。その感じはCMの脳みそ、バズムービーをいっぱい作っている時の脳みそは結構役に立った気がするけど。」

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江島「それこそ、サブスクなんて最近始まっているわけじゃん。Netflixだったり、Amazon Prime Videoだったり。それが始まる前って、映画業界じゃさ、映画って映画館で見たりDVDを借りて観るものだったから、頭の5分でやめるなんて人はあんまりいなかったから、割と最近にアジャストした手法なの?」

森「あと、悲しいかな、監督である僕自身が結構、これもういいや……って5分くらいみて止める。こんな見方はしてほしくない。自分で言うのもなんやけど(笑)。」

江島「それでそういうのが……いろんな仕事をやることによって、他の仕事にもフィードバックできているんだ。」

森「1回、『恋のツキ』っていうテレビ東京の連ドラをやったけど、次回をいかに引きつけたりとか……すっごいそういうことばっかり考えていましたね。"クリフハンガー"っていうんやけど、海外ドラマでよくある、明日早いけど連続して何話も見ちゃう……みたいなのあるじゃないですか。ああいう効果をいかに生み出せるかっていう。」

江島「それをクリフハンガーっていうの?」

森「クリフハンガーっていう。見たくさせるというか、引っ掛かりを作るというか。」

江島「へー!1時間だったら1時間の後半にちょっとした山場を持ってくるみたいなこと?」

森「うん。とか、3話〜4話くらいで、同じトーンが続いたら飽きちゃうから、ごろっとトーンを変えてみたりとか。飽きさせないっていう。ドラマとか映画をやるようになって、逆に、すごいCMっぽい脳みそを使うようになったというか。」

江島「じゃあいきてるんだね、CMの仕事もね。」

森「すごいいきていると思いますね。」



江島「最終的にさ、森ちゃんが元々やりたかったのは映画の道じゃん。それが『ボクたちはみんな大人になれなかった』という映画を初監督して……ちょっとね、ひとこと言いたいことがありまして。」

森「へへへ(笑)。前も聞いた気がする(笑)。」

江島「ふふふ(笑)。僕らもね、映画音楽をやったことがあるんですよ。アカデミー的なものももらったりして。結構付き合い長いじゃないですか、デビュー前からの付き合いで、デビュー曲のミュージックビデオを撮ってくれて。その森ちゃんが初監督作品を撮っているっていう話を聞いて……何でサカナクションに音楽を頼んでくれなかった問題っていうのが僕の中で……なんでなのかなって。」

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森「そうね……(笑)。真面目に、後で整理して考えると、(劇中で) 小沢健二さんの曲が使われて。」

江島「何回も使われていて、年代的にもそのくらいの話だもんね。」

森「そう。小沢健二の曲で出会った二人の物語だったので。割とサブカル的な要素もいっぱい出てきて……あそこにサカナクションはトゥーマッチだったかなって。言われてから考えて思ったら。」

江島「ははは(笑)。いや、主題歌をやらせてくれって言ってるわけじゃないんだ。」

森「なんかこう……劇伴は引っ込むべきなのかなって……いま思えば。」

江島「そう言ってくれば、そういう劇伴も作れると思うんだ。」

森「ははは(笑)。じゃあ……今度やろうよ!」

江島「ははは(笑)。でも、ミュージックビデオは違うけど、CMにしろテレビドラマにしろ映画にしろ、音楽って使われるわけじゃん。それのチョイスも監督がやるものなの?」

森「そう。人によって違うと思うけど、僕は結構自分のイメージがあってそういうのをお願いするケースが多いかもね。今回の映画は、小沢健二さんの曲を立てたいがゆえに、あんまり劇伴はあんまりメロディーがない音の方がいいなって思っていたので。アンビエントっぽい音楽を中心に考えたり……綺麗なピアノの音は後半からにしようとか、そういう設計を結構考えていたから。」

江島「そういうのってどこで培ったものなの?こんなシーンにはこんな音楽が合いそうだなとかっていうのは。」

森「蓄積でしかないんじゃないかな……今まで自分が観たものの。」

江島「それは過去に見た映画を参考にしているの?」

森「それは映画だけじゃなくて、PVとかも含めてだと思うんやけど。いざ映画を作ると、自分が高校の時とか、学生の時に観た映画のオマージュまでは行かないけど……すごい若い頃に見た映画のこのシーンのこの曲良かったよねとか……意外と最近のじゃなくて、結果、若い時に自分が観ていたもの。」

江島「へー。映像作家になってからの経験っていうよりも、それ以前の感じたり見たり聴いたりしたものの影響が色濃く出てくる?」

森「そうそう。作ってみてすごいそう思いました。」

江島「自然とそうなったってことだよね。それがベースになるんだね、やっぱり。」

森「僕の場合はですけど……どうなの?エジーとかが今音楽を作っているときに、インスパイアを受けるものって?」

江島「あー……確かにね……10代の頃に聴いたやつは、消えない。例えば、30代で初めて聴いたジャンルとかは、聴いている時はその影響を結構受けるんだけど、聴かなくなったらその影響がなくなっていくというか。でも、10代に聴いていた頃の音楽って、必ずどこかで入っちゃう。自然と。残っちゃうんだよね、きっと。それは映像もそうなんだ。」

森「うん。そうだなって、作ってみて。普段CMとかPVとかを作っている時は、もっと最先端のものを追いかけたりするけど。意外と映画を作ると昔の記憶をたぐり寄せる感じがあったなって。」

江島「へー、そうなんだね。実際1本映画を撮ったわけじゃん。これからも映画はやるんですか?」

森「是非、やりたいなって思って企画をしたり、脚本を書いたりしていますね。」

江島「今もしているんだ。じゃあ、やるってなったあかつきには……」

森「……お願いします。」

江島「あー、言わせた!(笑)」

森「いやいや(笑)。でも、やりたいね。」

江島「オファーお待ちしています!」

森「お願いします。」

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そろそろ、今回の授業も終了の時間になりました。

江島「今回は、映像作家の森義仁さんをお招きしてお話を伺いましたが、僕的には、森ちゃんの初監督映画の音楽をなぜサカナクションに頼まなかったんだ問題が解決してすっきりしました。」

森「あー、よかった(笑)。」

江島「是非是非、次回作は、僕たちにオファーしてくれることを願っています。」
森「……やりましょう。」

江島「……本当に?(笑)。」

森「うん、すげー楽しみ!」

江島「ふふふ(笑)。ちょっと夢でもあるじゃん。あの下北で何者にもなっていない時にうだうだやっていた2人が、大人になってちゃんと仕事でいいものを作るみたいなの……夢なんですよ。」

森「確かに。やりたい。あの時の自分に。」

江島「是非、お願いします。」

森「はい。よろしくお願いします。」


そしてお知らせです。8月16日から、山口一郎先生出演のサンテFX 新テレビCMが公開になりました。昨年に引き続き、楽曲にはサカナクションの「プラトー」が使われています。ぜひチェックしてみてください!

「サンテFX × 山口一郎」特設サイト

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