「10代で突発性難聴を患ったという生徒と話しました。」

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聴取期限 2023年3月24日(金)PM 10:00まで




音を学ぶ"音学"の授業、サカナLOCKS!。
今回は授業が始まる前に、一郎先生、初の著書『ことば〜僕自身の訓練のためのノート〜』発売についてのお話がありました。


山口「いよいよ今月末、私の本が発売されるんですよ。『ことば〜僕自身の訓練のためのノート〜』っていうね。」

職員(カヲル先生)「1回出てたのは、あれは何だったんですか?」

山口「あれはね、初回限定版というか、スペシャル版みたいな感じなんですけど。こっちは通常版。書店に並ぶ用のやつが出るんですよ。」

職員「おー、並ぶんだ。」

山口「並びますよ、ついに。僕が20代前半からずっと書き溜めてきてた訓練用の詩集があるんすよ。訓練のために書いてきた言葉を、父親が抜粋してまとめて勝手に出した本なんですけど(笑)。僕ノータッチなんですけど。」

職員「ふふふ(笑)。それは何、小樽の実家にそのノートが置いてあったの?」

山口「いや、ノートもあるんですけど……僕ら20歳前後にインターネット普及してきたじゃないすか。あの当初に "魔法のiらんど" っていうガラケーのブログみたいのが流行ったんすよ。」

職員「あったねー。」

山口「その魔法のiらんどに、毎日僕詩を載せてたんですよ。」

職員「マジで!」

山口「そうそう。最初は、サカナクションの前のバンドのブログで、メンバーが日替わりで日記を載せていきましょうみたいな、ホームページみたいな使い方してたんですけど、メンバーが書かなくなっていって僕だけがずっと毎日書いていくみたくなってたんすよ。そこに、それを誰も見てないから、僕は自分の訓練用に毎日毎晩詩を載せるっていうのをやって、何年もやってたんですよね。それで人生初のサイン会までやるんすよ。」

職員「マジで!?」

山口「著者としてのサイン会やるんすよ。全国各地でやるんですけど、とりあえず東京は決まっていて。東京の代官山蔦屋店とGYLEっていう表参道にあるデパートのCIBONEっていう家具屋さんがあるんですよ。家具、雑貨を売っている。その2店舗で。サカナクションのホームページとか見ていただければ詳しく載ってるしSNSにも載ってるんで、ぜひ来ていただけたらと思うんですけど。」

職員「一般発売日みたいなのはいつなの?」

山口「3月31日ですね。珍しくプロモーションですよ、サカナLOCKS!で(笑)。」

職員「本当ですね。」

山口「こんなにもプロモーションのない講師、SCHOOL OF LOCK!の講師にいないですよ。久々のプロモーションなんでね、ぜひ皆さん応援していただける気持ちを持って、購入していただけたらと思います。」

■3月31日発売『ことば〜僕自身の訓練のためのノート〜』
特設ページ[→コチラ!]



それでは授業をはじめます。
今回はサカナLOCKS!の掲示板に書き込みをくれた、10代で突発性難聴を患ったという生徒と話をしていきます。


山口「まずは書き込みを紹介します。」


突発性難聴を患ってしまいました。
日に日に耳が聞こえなくなっているのを感じ、耳鳴りもすごいです。
一郎先生が患っていたのは知っていたので、病名はもちろん知っていましたがまさか自分がなるなんて思いませんでした。

私は今軽音楽部で部長をしていて、オリジナル曲を作ったり、大会に出場してみたりと、高校生なりに精いっぱい活動していました。これから先このような活動ができなくなるのではないかと本当に不安でいっぱいです。
一郎先生は病気を患ったとききっと不安だったと思いますが、どのようにして乗り越えましたか?
また患った状態で出るライブと、以前のライブなど違いを大きく感じますか?できればお話を聞きたいです。

いとこのイソギンチャク
大阪府/17歳/女性


山口「では、お話をしていきましょう。サカナクションの山口一郎です。」

いとこのイソギンチャク(以下、いとこ)「いとこのイソギンチャクです。」

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山口「いとこのイソギンチャク、書き込み見ましたけど、症状が現れたのはいつごろなの?」

いとこ「今で言うと、ちょうど1ヶ月くらい前です。」

山口「そんな最近なんだ。最初どんな感じだったの?症状としては。」

いとこ「最初、閉鎖感からきて、耳が詰まってて。なんか聞こえが悪いなと思って耳掃除とかしたりして。過去に中耳炎にかかったことがあったんで、とりあえず耳鼻科行ったんですよ。そしたら、最初に突発性難聴って言われて、え……って。薬をもらって。一郎さんが患ってらっしゃったの知ってたんで、ちょっとびっくりして。その後病院に行ってみたら、次はメニエール病って言われて。今とりあえずメニエール病ってことで薬もらったりしてます。」

山口「あー。めまいは?」

いとこ「めまいもあります。」

山口「今もある?」

いとこ「今はちょっとよく症状がよくなったんで、ないんですけど。ひどいときは、半分ぐらい学校行けない状況になって大変でした。」

山口「めっちゃぐるぐるぐるぐる回るよね。」

いとこ「そうそう。」

山口「僕も最初、耳が詰まったみたくなって……同じだわ。片耳が段々聞こえなくなってきて、何か調子悪いなと思ってるうちにめまいが始まって、それがツアーの1ヶ月前ぐらいだったんだよね。『kikUUiki』っていう4枚目のアルバムを出して、武道館公演も決まってて……今休むとサカナクションが終わっちゃうって思うタイミングだったんだよね。だから僕は、病院行かないでそのままやっちゃったの。」

いとこ「薬もなしで?」

山口「薬もなしで。めまいと耳が聞こえない状態でツアーやってたんだよね。」

いとこ「それもう本当に……ライブ中とか結構きつくないですか?」

山口「めちゃめちゃきつかった。だから、耳が聞こえない状態でライブやるっていうストレスと、めまいとで……しかもそれをみんなに隠してたんだよね。」

いとこ「隠したんですか?それはきつい……」

山口「そう、隠してたの。だからそれで他の場所が……腰が痛くなったりとか首が痛くなったりとか、別のところに症状がきたりとかして。その当時は……僕、ばかだったから、今乗り越えれば後で治療すれば治ると思ってたんだけど、突発性難聴って早期治療しないと治らないんだって。100%治るかどうかは、治療してもちょっと分かんないけど。症状がよくなんないみたいに言われちゃって。後から病院行ったらもう手遅れみたいになっちゃったけどね。」

いとこ「本当にもう、聴力はゼロに等しい感じなんですか?」

山口「当時、一番ひどかったときは、ほとんど聞こえなかった、片耳。」

いとこ「片耳……」

山口「僕は右耳だけだったんだけど。」

いとこ「私は、両耳の低音が聞こえなくなる感じで。」

山口「両耳いったの?」

いとこ「両耳でした。」

山口「へー。でも両耳がおかしいっていうのはちょっとメニエール病かもね。突発性難聴だと片耳になることが多いと思うから。」

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山口「でも、良くなってきてはいるんだ?」

いとこ「はい。」

山口「今、何が一番不安?」

いとこ「何でしょう……やっぱり、また前みたいにめまいとかきて……私、春から高3で受験期入るんですけど、そのときにめまいとかきたりして受験勉強に支障が出たりとか、もちろん軽音でもっと大事な引退ライブとか大会とかにそういうのがかぶったら怖いんで……いつ出るかも分からないんで、それが本当に不安ですね。」

山口「あのぐるぐる病やばいもんね。」

いとこ「本当に(苦笑)。」

山口「僕はぐるぐる病って呼んでいたけど。本当にきついもんね。立ってらんないもんね。」

いとこ「そうなんですよ。」


山口「でも僕は、この病気を経験して失ったものもいっぱいあるんだけど……例えば、イヤホンとかヘッドホンとかでリスニングがちゃんとできなくなったりとか。音楽を作る上でミックスっていう作業があるんだけど……バンドやってるから分かると思うけど、ボーカルとドラムがセンターにあって、ベースがあって、ギターが左にあって、キーボードが右にあって……っていうふうにミックスをして音楽を作っていたりするんだけど、定位が分からなくなるから……要するにモノラルになるからさ、耳の中が。それってプロにとってすごい致命的だったんだけど。今まではそういうのを、神経質に全部自分1人で、自分の思い描いてるようにスケッチして、音をどこに配置して、EQも曲のどこでどういう風にするみたいな……すごく細かく神経質に自分でやってたのが、それが全くできなくなったことで、逆にメンバーに任せるようなったんだよね。だからメンバーに任せるっていうこと、信頼するっていうことを、僕は突発性難聴になって覚えたんだよね。だからきっと病気になったことで、逆に得るものも絶対いとこのイソギンチャクの中にあるはずだと思うんだよね。それを探すようにした方がいいと思う。マイナスばっかりじゃなくて、逆に良かったことを覚えた方がいいと思うけどね。」

いとこ「分かりました、ありがとうございます。」

山口「でも治療はすぐ行ったんでしょ?」

いとこ「そうですね。発症して3日くらいで。本当に一郎先生のおかげで突発性難聴かなって思ったんで、早く行っておかないとまずいってのは知ってたんですよ。調べたりして。なので、早く行こうと思って、早めに行きました。」

山口「うん。ただ無理はしない方がいいと思う。無理しなくて済むんだったら。僕みたく無茶するとやっぱり治らなくなっちゃうから。ちゃんと治療と勉強を両立できるように。今大事なことをどう優先できるか……自分にとって大事なことを守るために、どう治療するかっていうのを、親とか先生と相談して、やってったらいいんじゃないかなと思うけどね。」

いとこ「ありがとうございます。」

山口「でも、若いうちから不安だよな……かわいそうだな。」

いとこ「なんか……病名は知ってたんですけど、高校生の私がまさかなるとは思わなくて……本当にびっくりしました。なんかもっと、耳を酷使する仕事してる人とか、30代とか40代とかの年代の人になると思ってたら、まさか高校生の私がなるとは思わなくて。誰でもなるんだなと思って、本当にびっくりしました。」

山口「でも、大丈夫。治らなくても付き合っていけるから。幸せになれるよ、大丈夫だよ。」

いとこ「ありがとうございます。」

山口「なんとか乗り越えようよ。」

いとこ「そうですね。ありがとうございます。」

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山口「せっかくだから、こんな風に話す機会ないから、質問とかあれば何でも答えるよ。病気のことじゃなくても。」

いとこ「2つあるんですけど……1つ目は、「さよならはエモーション」のミュージックビデオで、コメントで"白黒なのは「ユリイカ」、"?"は「アイデンティティ」、リンゴは「アルクアラウンド」とか、そういう風に過去のミュージックビデオをモチーフにしてるんじゃないか"みたいな考察とかをよく見かけて。そうなのかなってそれってそうなんですか?」

山口「いやー……あれは、僕が映像ディレクションしてないから。田中監督に聞かないと分かんないよね。でも、その考察面白いね。確かにそういう意図を込めたりするような人だから、田中監督って。ちょっと聞いてみるわ。」

いとこ「ははは(笑)。ありがとうございます。」

山口「ふふふ(笑)。そんなのあるんだ。」





山口「他は?」

いとこ「えっと……ちょっと言いづらいんですけど……自分の音楽も作ってて。自分の作った音楽で、自分の描いた絵でミュージックビデオを高1のときに作ったんですけど、それを後でもいいのでぜひ聴いてほしいです!」

山口「聴く聴く。データあるんだったら、例えば今チャット欄に送ってくれたらすぐ見れるよ。」

いとこ「じゃあ……ちょっと待ってください。」

山口「これ、かけちゃうぞ?ラジオで。」

いとこ「ほんまに!?本当ですか?」

山口「ははは(笑)。」

いとこ「やばい……(笑)。」

山口「あ、きたきた。はい、見ますよ今から。」

いとこ「こわ!(笑)」

山口「うわ、すごいじゃん。」

いとこ「(ミュージックビデオのイラスト)描きました。」

山口「かっこいいじゃん、トライバルだね。」


♪ 共同幻想 / パパちゃんとしてよ。




山口「良いところと悪いところ、どっちから聞きたい?(笑)」

いとこ「えー(笑)。えーっと……じゃあ、良いところから(笑)。」

山口「良いところは、ダンスミュージックのトラックメイキングを採用して、アニメーションなミュージックビデオで、こういうリリックとメロディーを乗せていくっていうのは結構面白いなと思った。あとトライバルなグループでちょっと何かテクノポップの要素も感じたな。それはすごい新しい部分もあるなって感じはする。それは良い所。で、悪いところは、ダンスミュージックっていうフォーマットを使ってるんだから、もっとグループしっかりしなきゃだめだね。曲のグルーヴと、ボーカルのグループと、バンド演奏のグルーヴが全員、あっちこっち向いてるからアマチュアくさい。でも、声はいいね。」

いとこ「本当ですか?」

山口「声はいいけど、ノリが悪い。曲のノリに乗れてないよね。でも、冒頭、入りとか、途中の構成のフィルターかけたりする感じとか、ああいうポップスでは結構面白いなと思ったけどね。」

いとこ「ありがとうございます。」

山口「あと、決定的に良くないところは、聴かせどころがない。」

いとこ「あー、確かに……」

山口「どこを聴かせたいのっていう……ここを聴いてほしいんですっていう。多分、"共同幻想"っていう歌詞が入ってくるとこがサビなんだと思うけど。要するに、ここを聴いてっていうところが弱いから、我々はどこ聴いていいかが分かんなくなっちゃうんだよね。それをめちゃくちゃポジティブに捉えると、ダンスミュージックってフォーマットだからそれでいいのかなとも思うけど、17歳でポップカルチャーと音楽を融合するサウンドを作るとするならば、ちゃんとしたサビを作るべきだなと思う。しっかりとした、ハイレンジに入ってくる、ここサビです!っていうのがある方が、我々的には安心して聴けるかなと思う。才能を見いだしやすいっていうか。」

いとこ「ありがとうございます。」

山口「でもそれ以外はすごい良いなと思ったけど。……めちゃくちゃマジでレスするとこんな感じ(笑)。」

いとこ「ははは(笑)。本当にありがとうございます!貴重な……本当に……」

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山口「でもメンバーの子たちがちょっときつく感じたりするかな。」

いとこ「いや、私1人で作りました。」

山口「あ、歌は誰?」

いとこ「私です。」

山口「あ、そうなんだ!」

いとこ「バンドと関係なくて、本当に趣味で作っただけなんで。」

山口「へー、すごい良いじゃん。それ聞いて、いいわ。逆にいいわ。」

いとこ「本当ですか?」

山口「うん、いいと思う。声も良いなと思ったよ。」

いとこ「えー、嬉しい……!ありがとうございます。」

山口「閃光ライオット、応募した方がいいんじゃない?」

いとこ「もっと作り直して……」

山口「この曲の、今のコード進行のまま別のサビに切り替えてもいいんじゃない?」

いとこ「「夜の踊り子」のラスサビ的な感じですか?」

山口「そうそう。それとか、「アイデンティティ」とか、「ホーリーダンス」とか、そういうサビらしいサビがくると、すごい曲として締まると思うよ。」

いとこ「ありがとうございます、本当に。」




マイナビ 閃光ライオット2023 produced by SCHOOL OF LOCK!


山口「これで閃光ライオット応募して優勝とかしたら、ちょっと俺プロデュース料もらわなきゃいけなくなってくるからね(笑)。」

いとこ「ははは(笑)」

山口「『山口さんにいろいろプロデュースしてもらって、いろいろアドバイスいただきました!』ってちゃんと言えよ?有名になったら。」

いとこ「言います(笑)。」

山口「ふふふ(笑)。でも、病気のこともあるから無理せずに。受験勉強もあると思うし。頑張ってくださいね。」

いとこ「ありがとうございます。」

山口「うん。それではまた。さようなら、ばいばい。」

いとこ「さよなら。」

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そろそろ、今回の授業も終了の時間になりました。

山口「突発性難聴で苦しんでる人は他にもいっぱいいると思うんですけど、僕はさっきも言ったけど、難聴になったことで手に入れたこともたくさんあったんですよね。だから前向きにというか……それなったことでよかったことを見つけていく方が、僕はプラスかなと思うので。アドバイスになってるか分からないけど、参考にしてもらえたらなと思います。」

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