第163回 徐行

2018/05/10
今回のテーマは「徐行」。
国語辞典で調べてみると その意味はこうあります。
『車や自転車などが速力を落としてゆっくり進むこと』。

多くの方は「それは説明されなくてもわかるよ」と思うでしょう。
では 車を運転する方は徐行すべき場所できちんとしていますか?



 
     
東京 麹町 みらい総合法律事務所 吉田太郎弁護士によると
徐行は道路交通法2条1項20号で定められていること。
車両などが直ちに停止することができる速度で進むことと定められています。

この「直ちに停止することができるような速度」は
判例では「時速10 km/h 以下で」と述べたものもありますが
具体的なスピードが決められているわけではありません。

車の種類や車の荷物の積載量 道路状況などによって
「直ちに停止することができるような速度」は変わるからです。

時速10 km/h 未満を基準にしつつ
具体的な状況の元で判断していくということになります。

「徐行」の道路標識は逆三角形に縁が赤く、白地に青く「徐行」の文字。





道路にペイントされている場合もあります。
吉田弁護士によると 他に「徐行」義務のある場面は

▶︎ 道路の曲がり角付近 / 上り坂の頂上付近 / 勾配の急な下り坂を通行する時

▶︎ 左右の見通しがきかない交差点に入ろうとする時
  交差点内で左右の見通しがきかない部分を通行しようとする時

▶︎ 交差点に入る段階で左右の見通しがきかない時
  交差点の中に入って左右の見通しがきかない時

▶︎ 横断歩道の前
   車が横断歩道に接近する場合には
  横断しようという歩行者や自転車ないことが明らかな場合を除いては
  横断歩道の直前で停止することができる様な速度で進行しなければいけない





「徐行」義務があるのは車やオートバイだけではありません。
自転車の運転手も「徐行」の義務を負っています。
時に歩道の中央を飛ばして走る自転車を見かけますが やってはいけない行為。

自転車が本来走るべき道は車道。
場合によっては歩道を走ることもできますが、
中央から車道よりの部分を徐行しなければいけません。

徐行義務違反の罰則もあります。
「3ヶ月以下の懲役 または 5万円以下の罰金」。

「徐行」を求めらるのは 交通安全上 そこが危険な場面だから。   
「自分は大丈夫」と根拠なく思い 徐行義務を怠った運転は危険です。

交通事故を起こせば、必ずやそれまでの事を後悔するはず。
「徐行」すべきところでは すぐに止まれるように車を走らせましょう。


車を運転するキャリアが長く 頻繁にハンドルを握っている。
それでも 交通事故には縁のないドライバーには 理由があります。
その1つが「予測する力」です。




  
運転行動には 3つの要素があります。
『認知』『判断』『動作』。

この3つの過程に「ミス」があると交通事故が起こります。
中でも最もミスが多いのは「認知」の段階。

「認知」を間違えれば 多くの場合「判断」も間違ったものになる。
これを未然に防ぐのが「危険予知」です。

JAF 東京支部 事業課 交通環境係 高木孝さんによると
認知エラーを防ぐために大切なのが危険予知をする力。
       
例えば歩道にいる歩行者がどういう状態なのか。
年齢はどのくらいで何に注意を向けているのか。

「スマホをいじっている」「ヘッドホンして音楽を聴いている」
そういう人物なら車道側のことには全く気づいてないかも知れない。
不用意な横断をするということも考えられます。





おしゃべりに夢中になっている歩行者たちも
車道側に広がってくるということが考えられます。





運転席から周囲の状況を観察して 
情報を正しく分析できる力が必要です。

運転中は「しないだろう」という楽観的予測はやめましょう。
「するかもしれない」という疑う気持ちが危険察知に繋がります。

例えば「前方を走る車」の走行にも注意を払いましょう。
左のウインカーが出たら 次の交差点で左折と思うかもしれません。
でも 交差点の手前で曲がることもあります。
そのため きちんと車間距離をあけて
前の車の動きに注意する姿勢が必要です。





いま挙げたのは たった2つの例にすぎません。
刻一刻と変わる運転状況。
常に危険予知のアンテナを立てておくことが事故を未然に防ぎます。

「認知ミス」と「判断ミス」をなくせば
交通事故の9割がなくなると言われています。

JAFの調査によると
ドライバーは歩行者や車の動きを予測することで
反応時間が最大0.75秒 早くなることがわかっています。

高木さんによると 危険予知力を高めることは感受性を高める。

隣の車線が渋滞している時。
なぜか 一箇所だけ妙に車間距離が空いている。
このことに気づくドライバーと気づかないドライバーがいます。
隣の車線だから関係ないという意識のドライバーは違和感に気づきません。

また 気づくドライバーにも2通りいます。
気づいたけども そのまま通行してしまう人。
気づいて そこから何か出てくるのではないかと考えるドライバー。
おや?と気づき 警戒する それが危険の予知に繋がります。



善良なドライバーにとって、
「煽り運転」の危険と恐怖は常にあったことでしょう。

それが悲劇的な事態になってしまったのが昨年11月
ニュースでも頻繁に取り上げられた東名高速道路での事故です。

パーキングエリアで駐車の位置を注意された容疑者。
腹を立てて 注意した方の一家が乗るワゴン車を時速100キロで追走。
幅寄せを繰り返し 危険な運転をして停車させました。

そこへ大型トラックが追突。
注意した側に死亡者が出た悲劇的な出来事。

交通心理学が専門の九州大学大学院 
システム科学研究院 志堂寺和則教授によると
「煽り運転」は相手を威嚇して嫌がらせをする行為です。





『車間を詰めて異常に近づく』

『割り込みをしてすぐに急ブレーキをかける』

『クラクションを必要以上に鳴らすk』

『幅寄せをする』

『パッシングをする』





2016年のデータでは
車を運転中に前方の車をあおるなど、
道路交通法違反の車間距離不保持摘発は全国で7,625件。

そのうち高速道路での違反が9割近く。
全てが「煽り運転」ではありませんが 
かなり大きな割合が「煽り運転」でしょう。
       
我々はどうして「煽り運転」をしてしまうのか?
志堂寺教授によると 車内は匿名性が高いことが1つの理由です。

顔が見えない。バレにくい。
密閉された空間にいて安心感がある。強気になる。
まずいことになりそうな時にもすぐにやめて逃げられる。
そんなことから心のハードルが低くなるのではないかと推測しています。

「煽り運転」をしないために大切なのは
ふだんの生活でストレスやフラストレーションをためないこと。
生活ストレスが煽りに繋がってしまうことが考えられるからです。

性格的にカッとなりやすい人もやりがち。
あとはちょっとした違反を繰り返す人も煽り運転をする傾向にあります。

今週末からGW。
混雑する運転にイライラすることもあるかもしれません。
でも、そんな時にこそ心に余裕を!

ネガティブな感情や行動は 
それに接した人のネガティブな感情や行動に繋がって
「負」のスパイラルに陥ります。

「煽り運転」がない ゆとりと譲り合い精神の交通社会を
日本に築きたいと、思いませんか?


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