2013年9月24日

9月24日 被災地の心のケア4

東日本大震災から2年半が経過した今、必要な心のケアについてお伝えします。東北国際医療会 ゆりあげクリニックのドクター、心療内科医の桑山紀彦さんのインタビューです。



地震や津波の記憶を、「思い出して形にして、乗り越える」。この方法で、桑山さんは被災地の人たちの心のケアを続けています。そして、自分の記憶を素直に形にできる子どもに比べて、震災後、気持ちが張りつめたままの 大人のほうが問題は根深い…と言います。震災から2年半。大人たちに対する心のケアは、今も続いています。

◆語る方法を持たないお父さんたち
今行われている大人たちのケアの中では、編み物集団『閖上アミーズ』という組織がある。とにかく編む。編み続ける。そうすると会話が始まる。『ねえねえ最近家の跡見に行った?」とか「これからどうするつもりなの」とか。会話がどんどん生まれていく。中には娘さんを目の前で失ったお母さんもいるが、
「やっぱり最近、娘のことを思い出すのよね」という言葉が出てくる。しめしめと思いながら黙々と編んでもらった。それを1年半以上続けているが、みなさん非常に表情が明るくなってきてなんでも語れる。「最近は津波の映像を見られるようになった」なんてことも言う。女性たちはそういう手芸を通じて心を開く場所を得た。

対して男性が方法を失っている。お父さんたちは働き続けている。被災直後から、お金が大事ということもあるので働き続けている。抱えたままずっと黙々と働き続けて2年半というお父さんがいかに多いか。正直、僕らは方法を失っている。語って欲しいが語る方法を持っていない。語って下さいと言っても「いまさらいいよ」と思っちゃう。

こうした中、桑山さんが代表を務める『NPO法人 地球のステージ』では、被災された方が、感情と記憶を整理するための、施設を設置もしています。


◆『閖上の記憶』
私たちが置いている『閖上の記憶」というのは津波復興記念資料館のようなもの。視聴覚室も作り、津波の日のことをきっちり全世界の人たちにわかってほしいという資料館。
それは同時に、被災したみなさんに、いつかここに来てもらって、自分の津波の物語を語りだして欲しい、という心のケアのために作ったものでもある。でも、多くの被災されたみなさんが、「残さないで欲しい、見たくない、潰して欲しい」という意見を持ち始めている。それは良くないと思う。心にフタをしてしまうと病気になる。残すべきものは残して次の世代につなぎ、まだ語っていない人はそれを刺激にして語っていただきたい。それが心の復活の全てだと思っている。

この『閖上の記憶』という施設は、慰霊碑の社務所の役割、立ち寄った方がくつろげるスペース、そして、閖上の写真集や、津波に関する記録データの展示をしています。
また、定期的に「語り部の会」なども行われています。桑山さんは『多くの被災地がこういった動きに賛同して、 感情と記憶の整理に向き合って復興への意欲を取り戻せますように』と、この施設に込めた願いを、メッセージしています。
(※地球のステージ サイト「閖上の記憶」より)

2013年9月23日

9月23日 被災地の心のケア3

東日本大震災から2年半が経過した今、必要な心のケアについてお伝えしています。



東北国際医療会 ゆりあげクリニックのドクターで、心療内科医の桑山紀彦さん。紛争地域や難民キャンプの医療支援に長年携わり、東日本大震災でも、被災された方の心のケアを続けています。

先週は、宮城県 名取市 閖上(ゆりあげ)の子どもたちを対象にした、「津波の記憶を、絵や音楽で表現させる」という心のケアのお話でした。そして桑山さんは、このケアが必要なのは、子どもたちだけではないと言います。

◆語ることができない大人たち
思い出して形にして乗り越えていく。それが心のケア。僕達がどうしようと思っている(懸念している)のは大人たち。大人たちは被災経験をなんとか乗り越えようと思うがあまり、仕事を一生懸命やりすぎたり、「日常、日常」と言いすぎて向き合うきっかけを失ってきた。
子どものほうがあの日のことを素直に表現できた。大人は色んなことを頑張らなきゃいけないから、いつまでもあの日のことにとらわれていてはダメだとすぐに思っちゃう。本当はあの日を表現しなければならないのに、大丈夫、俺はもう立ち直ったからと、立ち直っていないのに言ってしまう。その頑張り具合が大きな障害になったと思っている。
今でも大人の中には、悪い夢を見たり、フラッシュバックしたりする人がたくさんいる。そういう方が今後も、「辛いことがあるけれども、なんとか普通の日常を過ごせば忘れられるさ」と思いつづけているから、問題が起きている。
夕方4時くらいになるとなぜか不安定になる人や3月が近づくと胸がわさわさする人とか、みんなあの日のことを忘れようとしても忘れられないでいるから起きる症状。そんな大人のみなさんに、これからどう語っていただくか。僕の外来にも40代〜50代の働き盛りのお父さんがたくさん来ている。それはやはり津波で家を失い、家族を失い、それでも直後から黙々と働き続けているお父さんたち。
一生懸命話を聞いて、いまさらだが泣いて頂き外来を終えているが、泣くことで人間はどれほど心の重荷をおろせるか。今まで被災以降800人以上の方にお話を聴いたが、涙が全て。
人間は感情を吐露することが大切。だから究極でいえば夜の海に向かって、「津波の馬鹿野郎!」と叫んで欲しい。「俺の家族を返せ!」と。それを叫べないからずっと苦しんでいる。人間はそうやって、心の奥底から叫び、心を軽くしていける生き物だと思います。

明日も、東北医療会 ゆりあげクリニック 桑山紀彦さんのお話です。
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パーソナリティ 鈴村健一

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