2013年2月13日

2月13日 福島・浪江町 橘さん家族の今(3)

今週のこの時間は、東日本大震災から3年目を迎える、福島の家族の今をお伝えしています。

双葉郡浪江町の、立ち入り禁止区域にご自宅のある橘弦一郎さんは、9ヶ月のお子さんと奥さんと郡山市で避難生活を続けています。橘さんは元々、浪江町の不動産会社の社員で、現在は南相馬市にある支店まで、クルマで通勤しています。距離にして片道90キロ、往復5時間以上の道のりです。
また、橘さんは浪江町だけでなく、原町の商工会青年部にも参加していて、商工会の会合で夜遅くなることも多いようです。こうした生活を続けている理由を、橘さんは「復興のため」だと話します。

◆当事者としての責任
原町商工会議所青年部や、青年会議所にも入っている。なぜそんなにいっぱい入るのかというと、福島県に住む人じゃないと大変さは分からない。郡山から南相馬に通勤していることについても、なぜ?と聞かれる。特に東京の人は、「南相馬原町に家族で住めばいいじゃないか」「郡山で仕事を見つければいいじゃないか」という。でもそれが出来ないからやっている。家族がバラバラに暮らし父親だけが福島にいる人も、色んな思いや状況があってそこにいる。それは当事者じゃないと分からない。だから当事者である若い世代が集まって、俺たちでこういう街作りをしていくと話し合っている。色んな団体の青年たちと意見交換をしながら進んでいきたいから、色んな団体に入っている。
浪江町の商工会青年部に入った時、そんなものに入ってどうするのだという気持ちはあった。家族サービスが出来なくなったりボランティアの仕事が忙しくなるなら、どうでもいいのではと思った。そんな中、商工会青年部の先輩に言われたのが「家族サービスも大切だが、家族だけが良くなって幸せになっても地域や雇用が衰退したら、給料ももらえない。子どもの教育にも良くない。地域があって生活があるんだ」と言われ、地域おこしの大切さを知った。楽しく町おこしをして、子どもたちが福島県出身を誇れる街を目指している。それが復興のための第一歩なのではないか。


今回の取材は郡山市にある、ふくしまFMのスタジオで取材をしたのですが、橘さんはその日も、よる8時過ぎに取材を終えたあと、浪江町の商工会青年部の会合に向かっていきました。

橘さん自身、変えることの許されない新居のローンを払い続けている“当事者”です。当事者として復興の先を見据え、橘さんは今日も懸命に動き続けています。

明日も、浪江町から避難生活を続ける、橘弦一郎さん一家の、いまをお伝えします。


橘弦一郎さん(ふくしまFMにて)

2013年2月13日

2月12日 福島・浪江町 橘さん家族の今(2)

今週のこの時間は、東日本大震災から3年目を迎える、福島の家族の今をお伝えします。

橘弦一郎さん(39)は、震災後、自宅のある双葉郡浪江町(ふたばぐん・なみえまち)を離れ、9ヶ月のお子さんと奥さんの3人で、郡山市で避難生活を続けています。不動産会社に勤務している橘さんは浪江町民の、「少しでも地元に近い場所で暮らしたい」という要望に応えるため、そして福島の復興のために、県内で働く道を選んだと言います。

一方、奥さんの綾子さんも、橘さんを支えるため、一緒に郡山で暮らすことを選択しています。福島で働くこと、そしてご家族について橘さんの考えを伺いました。

◆家族の救い
子どもは避難地・郡山のアパートに住んでいる。震災直後の9月に台風15号による洪水があった。避難しろという防災無線があったが、すでに避難先にいる。どこへ避難したらいいか分からない。水かさが150cmまで上がり所有するクルマが2台水没した。東日本大震災で辛い目に合い、さらに辛い目を受けた時に、子どもが出来たという報告を妻から受けた。それが唯一の救いだった。妻の友人も県外に避難しており、福島にとどまることについて「大丈夫なのか」と心配してくる。でも妻は何も私には言わない。私の友人、仲間も、夫だけ福島に戻って仕事をしている人が多いが、それでも妻は福島についてきてくれた。ありがたい。放射能は目に見えないから、できれば福島から離れて暮らしたいのは本音。でもそれでは福島は復興していかない。ずっと福島で育ってきたのだから、子どもにも福島の素晴らしい部分を伝えていくためには、復興が最優先。私がここにとどまって頑張らなければ行けないと思っている。

  
こうして橘さんは現在も、勤め先のある南相馬市の不動産会社まで、郡山から毎日クルマで通勤しています。距離にして片道90キロ、往復5時間ちかい道のりです。

「復興のため」とはいえ、なぜこうした暮らしを選んだのでしょう。そこに、橘さん考える復興の意味、故郷に対する思いがあります。これについて詳しくは、明日のこの時間お伝えします。

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パーソナリティ 鈴村健一

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