2013年2月5日

2月5日 被災地の医療の現状、放射線の影響〜南相馬市立総合病院・原澤慶太郎医師(2)

今週は、福島県・南相馬市から、被災地の医療の現状、そして放射線問題の今について、お伝えしています。

南相馬市立総合病院は、福島第一原発から23キロの位置にあり、原発事故以降、放射線被ばくに関する医療の最前線と言われています。実際この病院では、市民のための「放射線・健康カウンセリング外来」を無料で行っており、内部被ばくを検査するホールボディカウンターも、2台設置されています。

この病院で地域医療に携わる、医師の原澤慶太郎さんは、南相馬市民の放射線の影響、健康状態について、こう話しています。

◆内部被ばくの影響は
体の問題と心の問題、両方あり両方が密接に絡み合っている。東大医科研の坪倉先生を中心に、内部被ばくの検査については早い段階から調べており、市のホームページにも公開しているが、内部被ばくをしている人はどんどん減っている。今は3%前後が検出されるのみに留まっている。子どもはほとんど検出されていない。
そもそもセシウム自体は尿から出ていく。その減る時間は年齢と性別によって全然違う。代謝の活発な赤ちゃんであればあるほど早いし、お年寄りは減るのに時間がかかる。若い方は数か月で出ていくが、年配の方は半年から1年かかってやっと半分くらいになる。新規にセシウムを取り込んだり、食べるようなことをしなければ最終的には全部出ていく。これがセシウムの体の中での動き。南相馬の方々も、原発事故直後は(内部被ばく)が6割が検出されたが、食べ物に気を付けて定期的にホールボディカウンターを受けることでセシウムの検出量が減っていき、今は3%しか検出されないようになった。検出される人の食事を調べると、山菜を取って食べていたりする。何かしら食事に問題があることが分かってきた。そうした人には個別指導することで、被曝する人は減っている。内部被ばくに関しては、私たちは付き合い方が確立しつつあるのが南相馬の実情。その中で問題になっているのが、原発事故で仮設住宅に避難している70代〜80代のお年寄りが、今までは畑仕事をしていたが、東電からの補償金をもらい運動をせずに暮らしていること。当然、高血圧や糖尿病など慢性疾患が出てくる。実際に外来でもそうした薬の増量が必要になってきている人もいる。被爆の問題も精神的な意味でいろいろあるが、命に係わるのは高血圧や糖尿病の方が大きな影響があるかも知れない。


明日は、今日の話題に関連して避難住民の心の問題についてお伝えします。



2013年2月4日

2月4日 被災地の医療の現状、放射線の影響〜南相馬市立総合病院・原澤慶太郎医師(1)

今週は福島県・南相馬市から、被災地の医療の現状、放射線問題の今についてお伝えします。

南相馬市立 総合病院の医師・原澤慶太郎さんは、2011年11月に千葉県の病院から南相馬市立総合病院へ出向した。仮設住宅で暮らす2500世帯全てを訪問し、在宅医療科を設立するなど、南相馬市の地域医療に力を注いでいます。

◆南相馬を選んだ理由(南相馬市立総合病院・原澤慶太郎医師)
南相馬市立総合病院は、福島第一原発から23キロ、日本の総合病院では最も原発に近いところに位置する南相馬で一番大きな基幹病院。人口7万人が、現在4万人になっている。日本は超高齢化先進国と言われ、2025年には40万人〜50万人が介護難民化するという。その問題解決にあたりたいと考え、外科医から地域医療に転職。その中で震災が起きこの病院に赴任した。南相馬は原発事故で若い世代が流出、急激に街が高齢化した。これは日本の首都圏の高齢化の縮図。急速に高齢化する時、あらゆるインフラが追い付かず、医療や行政も変化に対応できなくなる。実際に南相馬市でも看護師が足りなくなり、ショートステイなど介護福祉関係のサービスも足りない状況が続いている。そうした変化をどう乗り越えていくかを考えるのは仕事としてやりがいがある。もう一つは原発事故の問題。被爆の現状と、我々がどうこの問題をどう乗り越えていくか、強く関わることができる。だから南相馬への出向を選んだ。



原澤医師は現在、病院勤務とは別に、仮設住宅の集会所で、避難者の健康状態をヒアリングする「お話会」という活動もしています。まだ30代の若いドクターですが、高齢化・看護師不足・放射線を抱える南相馬市での医療に携わることで、被災地だけでなく日本の医療が将来を考えています。

明日は、南相馬市の仮設住宅で暮らす避難者の方の健康問題、そして放射線の影響についてお伝えします。

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パーソナリティ 鈴村健一

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