2012年9月13日

9月13日「震災から1年半。気仙沼・漁業の今(1)」

宮城県気仙沼市・唐桑半島の付け根にある「舞根地区」で牡蠣の養殖などを営む、畠山信さん。
NPO法人「森は海の恋人」の副理事長も務めています。


昨年10月に気仙沼の現状を伺ったところ、当時はまだ、漁業の復旧には時間が掛かるというお話しでした。
さらに1年が経過した今、舞根地区の現状を伺いました。

◆漁師町の姿を取り戻しつつある
 牡蠣、ホタテは今年になって出荷できた。今は夏場なのでホタテの出荷がじゃんじゃん。去年秋から冬にかけ仕込んだものが半年でかなり成長。本当は1年半〜2年半かかるのだが、やはり津波のあとは成長が早い。プランクトンの量が多いので味はすごくいいと思う。


ホタテの出荷が終わると、今度は牡蠣の出荷も始まります。
これらの出荷は、この地区の漁師さんたちの支え合いによって行なわれています。

◆漁師の方々の居場所
 舞根地区の場合は、6〜7人くらいの家や船を失った色んな被災状況の人たちが協業で集まって、船と加工場をシェアして一緒に養殖業をしている。私の実家「水山養殖場」が生産・販売をしていたので、そこが母体となってアルバイトで雇う形を取って協業を薦めている。
 漁業者の家族を一緒に雇用しているので地元の母ちゃんにも加工場の仕事に声を掛けたところ、我も我もと手が上がり14人いる。これ以上の雇用は難しい。
 仮設住宅にも居場所はあるが、誰からも頼られない生活は苦痛。お願いしますというと嬉々として動いてくれる。人に頼られるというのは、田舎の方では重要なのではないか。居場所は重要だと思う。



◆漁業者と海
 海が好きな人、漁業者は海に出ていないと心に違和感が残る。漁業者はほとんどそう。息苦しくなる。なのでみんな意味もなく海に行ったり、釣れもしない魚を釣りに行ったり。魚を釣るわけではないが船でとりあえず沖に出てみるとか。僕もその一人。



ホタテなど貝類は流通を立て直すのが比較的簡単なので「復旧も早かった」と畠山さんは話しています。
その一方、魚類は水産加工場の復旧が必要で、こちらは地盤沈下した土地のかさ上げも絡むため、今も課題となっています。



【NPO法人 森は海の恋人 Official Website】

2012年9月12日

9月12日「震災から1年半。南三陸『大雄寺』の存在」

宮城県南三陸町・志津川地区の「あさひ幼稚園」は、昨年3月の津波で建物を失いました。
しかし園舎は、地元のお寺の津波で枯れてしまった杉の木を使って再建されました。

そのお寺の名前は「大雄寺」と言います。
800年前に藤原氏によって建設されたとされ、その後、450年前から志津川の小高い丘の上で、この土地を守り続けてきた由緒あるお寺です。
その19代目の住職が、小島孝尋住職。
あさひ幼稚園の園長でもあり、この土地を代々見守り続けてきました。

◆1年半経った想い
 震災から1年半が経つので、うちを流された方々は「いつ家を建てられるのか」という漠然とした不安がある。仮設にいる方は「ここで何年過ごすのか」と考えているみたい。
 津波で流されて、結局見つかっていない方もいる。今ごろどこにいるのか、早く家に戻してあげたいという想いでいる。来年3回忌、丸2年が経つ。落ち着いてきたから、逆に将来を楽観視できないという考え方の人は結構いるのではないか。



高台にある大雄寺にもあと1.2mの高さにまで津波が迫ったそうです。
津波がわずかに届かない高さにお寺があったのは、先人たちの知識だったのではないかと小島住職は仰っています。

◆地域にとっての「大雄寺」という存在
 風景が一変してしまったので、みなさん「何故なのか」と言っている。お寺の目印だった参道の杉並木も無くなってしまったので、早く植え直してお寺の景観を昔に戻してあげたいと思う。
 お寺がこのまま残っているので、他の地域に行った方は「田舎に帰ってきたんだな」と思うと言う。来れば昔からのものがそのまま残っている。おじいさんが孫に見せた地獄絵図がある。じっちゃんが小さい頃おっかねえと思った地獄絵図は、寺子屋時代から続いている、道徳・戒めのためのもの。悪いことをするとここ(地獄)に行っちゃうんだぞと。親も、その親から教わり、その親もそのまた親から言われた話。それがきちんと残っている。こうしたものを残すのが私たちお寺の勤めだと思う。
 お寺が流されてしまったら、昔から続く風景は全て無くなってしまう。故郷の自分の家が無くなっても、ご先祖を守るお寺が残っていて良かった。
 家は流されてしまったが、ここだけは変わらないと言われるのが私は嬉しい。よくぞ残ってくれたと思う。




<写真:大雄寺で生き残った杉の木>


<写真:ユニセフを通じてあさひ幼稚園に寄付金支援したサッカー日本代表MF長谷部誠選手のサイン>



<南三陸の現状。未だ瓦礫は仮置きされた状態が続き、一方、津波で住民がいなくなった川沿いに処理施設が建設されつつある>

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パーソナリティ 鈴村健一

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