2012年5月8日

5月8日「南三陸町・住民の気持ちと高台移転」

東日本大震災でトラック運転手の仕事を失い、この春から漁協の臨時職員として働き始めた宮城県南三陸町の和泉博文さん。
自宅は津波で流され、母親と小学生から高校生まで3人のお子さんと一緒に、仮設住宅に暮らしています。

いま町の中で議論が続いているのが、高台移転の問題です。
和泉さんはこの高台移転について、行政の出してきた素案は、町民の主張とは隔たりがあると感じています。

◆住民の気持ちを受け止めてもらいたい
 地区の区長を交えて、今後の高台移転の意見交換をした。被災地のみんなはいろんなことを話したい、わかってもらいたい。でも県や町では受け止めてくれない。
 5年先、10年先の住まいだけでなく、子孫が住んでいく高台移転。今後を見据えて、自分たちの孫、子孫が住んでよかったという魅力的な町でないと意味がない。
 町としては、高台移転をするにしても、管理しやすいところに居てもらいたい。ベイサイドアリーナ(仮庁舎などがあるところ)などに集中すれば、管理しやすい。でも地元の人は自分が住んでいたところに帰りたいけど帰れない。だから少しでも近くの高台に住みたい。
 町としては土地取得の面など、うまくいかない。でも時間をかけて、そういった住民の気持ちをちゃんと受け止めて、手順を踏んでやれば、もっといい町になると思う。
 だからこそ、自分達の夢みたいな構想であっても、ちょっと耳を傾けて動けないか。


◆みんな真剣に悩んでいる
 先祖代々住んできた土地を離れていいものかと思うし、おふくろもいる。でも、もしかして別なところに住めば、別な人生を送れるのかなと思う。
 逃げた方が得。だからこそみんな悩んでいる。別のところに行くほうが楽。みんなポーンと忘れて別な町、隣町に行った方が楽。
 だけどそうでなくて、何にも無くなったこの町で、もう一回、何百年も住めるような家に、土地にしたいから、みんな悩んでいる。
 逃げるのは簡単。今まで何十年と築きあげてきた家や財産が、一瞬にして何にも無くなった。先祖代々で築き上げてきたものが一瞬にして無くなった。金では買えない。だからみんな真剣に悩んでいる。




昨年度の第三次補正予算で、高台移転の費用を全額、国が負担することが決まりました。
町による住民への説明会も行われていますが、同意を得ることはできないでいます。

2012年5月7日

5月7日「南三陸町・和泉博文さんが迎えた春」

震災でトラック運転手の仕事を失い、宮城県南三陸町の災害FMで臨時職員として働いてきた和泉博文さん。
小学生から高校生まで、3人の子供を抱えるシングルファーザーでもあります。
この春、和泉さんは災害FMの雇用期間期限を迎えました。

◆この春の状況
子供たちも進級してほっとしているし、自分も新しい仕事を初めて、春から新しいスタートを迎えた。町の状況も、平常時に向かって動こうとしているが、足りない事もいっぱいある。けれど被災地ということで、標準の生活でない、落ち着きが無い。
安定した職業を得ないと家族を養っていけない。地に足をついた職業にすればいいのかと思った。
いま漁協の臨時職員として雇われたが、雇用期間は1年。先は見えない。それでもこの町で一番大事なことは何かと考えると、やはり漁業や農業だろうと思った。自分が漁協に勤めることで何か開けていくんじゃないかと思った。


南三陸町の漁協では、震災後、約100人を臨時職員として雇用しました。和泉さんもその1人です。
パソコンで漁船登録の作業をするなど、これまでとは全く畑違いの仕事内容に、戸惑うことも多いといいます。

◆ストレスで眠れない
1年の雇用期間の後、どうなるのか。歳も歳だし、この後家族を養っていけるのか。先が見えない。行き当たりばったりの人生で、自分ひとりだったらいいけど、子供もいるし。今後どうしたらいいのか。
トラックの運転手で、去年3月頃まで全然違う仕事をして、全然違う人生を歩んできた。全然追いつかない。若い人はこんなに出来てるのに自分は出来ていないという負い目もある。自分の能力の無さと、今後の家族のことが不安でストレスは毎日感じている。
寝れない日もあるし、過食気味になったり酒を飲んだり。紛らわせている。家族に対して、不安な面もあるから、前より話しかけることがなくなった。それはイヤだな、と思っている。



仕事のこと、先の見通しが立たないことが一番気がかりだと話す和泉さん。
和泉さんと同じ想いで暮らす人がたくさんいるのが被災地の現状です。
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パーソナリティ 鈴村健一

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