2012年4月16日

4月16日「3.11に生まれた命(1)」

東日本大震災が発生したあの日に生まれた命と、その誕生を巡るエピソードをまとめた、一冊の本「ハッピーバースデイ 3.11」。
昨年3月11日に被災地で生まれた赤ちゃんの写真と、その両親の体験で構成された本です。
取材と文章を担当したのは、社会貢献プロジェクトを数多く手がけるコピーライターの並河進さん。

並河さんに、3月11日に生まれた子どもたちについて伺いました。

◆強い笑顔のインタビュー
 僕自身が最初、ボランティア活動のために宮城県に入っていた。南三陸町の仮設病院の先生に「3月11日に生まれた赤ちゃんがいる」という話を聞いた。
 その父母が仙台に避難していて、自宅に上がらせてもらったら「2011年3月11日 命名 春晴」とリビングに貼ってあった。その字を見た時に、3月11日に生まれた子どもたちを探して撮影したいと思った。
 佐藤春晴くんは南三陸町で生まれているのだが、父は慈恵園という老人介護施設にいた。慈恵園は津波にのまれ、多くの方が亡くなった。だからお父さんは慈恵園の遺体の確認や、助かった方の世話を南三陸町で続けていた。辛い体験をしているはずだが、ずっと笑顔を絶やさずインタビューを受けてくれた。
 そのとき「この子が笑っていると何もかも忘れられる。辛いことがこれからもあるが、僕たちが笑っていられれば子どもたちも笑っていられると思う」とおっしゃっていた。強い笑顔だった。


◆新しい命を繋ぐ本能
 川口陽生くんと、橋本栞ちゃんは、福島県福島市の明治病院で生まれている。
 二人とも震災が起きた後、病院の中には居られないということで、急きょ駐車場で車を分娩室にして生まれた。両方のクルマを産婦人科の先生が行き来していた。その揺れで病院も倒壊することを考えると避難したくなるところだが、助産師さんは、子どもは生まれるタイミングで生まないといけないと知っている。お母さんは、これは産めないんじゃないかと迷ったという。でも子どもは生まれてくる。それを支える先生方。仕事というのはあるが、仕事を超えて、「新しい命をつなげなければいけない」という本能がある。それを支える先生方は本当にすごい。



「ハッピーバースデイ 3.11  あの日、被災地で生まれた子どもたちと家族の物語」は、飛鳥新社より発売中です。
この本の印税は全額、被災地支援に寄付されます。


【ハッピーバースデイ 3.11 Official Website】

2012年4月13日

4月13日「福島県楢葉町・地域の将来を左右する問題」

福島第一原発20キロ圏内にあり、第二原発を抱える町、福島県双葉郡楢葉町の高原カネ子さん。
「ならは天神太鼓」の指導者である高原さんは現在、故郷を離れ、いわき市でご家族・親戚と避難生活を続けています。

高原さんの故郷・楢葉町をはじめ、原発周辺地域・双葉郡は、地域の将来を左右する大きな問題に直面しています。

◆故郷を奪われた意味
 中間貯蔵施設が無いことには除染が進まない。そう思ったときにその施設を受け入れた町村や場所は、誰が考えても線量は高くなるんじゃないか。だから我が町には作りたくないというところだろうが、私は原子力について厳しく批判もしなかった、無関心だった住民の一人だと思っている。そのことが孫たちから故郷を奪うことにつながったのは間違いないことで、そこに対する責任は感じている。
 私たちがもっと電力側から見てやかましい住民であるべきだったのではないかと、いま反省している。その罪の意識を感じるから、そこで出来た危険物は自分たちもある程度理解して、施設を作ることもある程度受け入れないといけない面があるんじゃないかという気がする。
 これは極論でどうなのかという発言だが、「原子力に頼りすぎて無関心で暮らしてきたらこうなるんですよ」「原子力の所在地のみなさん、こうなるから、双葉郡、福島県を見て下さい」っていう意味においても、故郷を奪われてしまうことに意味はあるのか。そういうメッセージとして出ていくしかなくなっちゃう。


◆原子力の町に住んでいた
 中学2年生の孫が避難の間にポロっと言った。「ねえ、人間の手で止められないもので電気を起こしていたんだね」って。そのとおり。その時から思った。この子たちは、生まれたときから原子力の町に住んでいた。我々はその時に何かが出来たのではないか。もっと事を起こせば良かった。これからは起こそうと強く思った。
 もっと大きい声で言おう。でも何をどうして、どこにぶつけたらいいの。私たちもあの時の津波のように押し寄せようかしら。でもどこに押し寄せればいいのか。
 罪滅ぼしではないか、何が出来るのかと考えると、楢葉町は町長選挙がある。しっかり選ばないと全国から笑われるよね、という声が全国からすごい。



政府は楢葉町などに汚染物質を保管する「中間貯蔵施設」の設置を要請。
しかし、楢葉町議会は先日、全会一致でこれに反対する意見書を提出しています。

15日(日)には、楢葉町の町長選挙の投開票が行なわれます。
2人の候補者は、自分の町で出た廃棄物をどうするのかなど、主張に違いがありますが、
中間貯蔵施設の建設には、ともに“反対”の姿勢です。
また、すでに一部で始まっている警戒区域などの見直しについては、楢葉町民の反対を受け、この町長選挙の結果が出るまで、延期となっています。
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パーソナリティ 鈴村健一

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