2012年4月10日

4月10日「“悲嘆”のケア(2)」

震災で身近な方を失った方の心のケアについて、神戸赤十字病院の心療内科医/「災害グリーフ・サポートプロジェクト」の世話人・村上典子さんにお話しを伺いました。
震災による「グリーフ(悲嘆)」のケアを目的に、心療内科、精神科医、臨床心理士、大学教員、悲嘆の研究者が立ち上げたネットワークです。


◆元気に見えても、悲しみを乗り越えたとは限らない
 心の傷は目に見えない。本人が元気そうに、無理して振る舞っているのに「元気になったね」「元気そうね」という言葉は傷つけることもある。
 実際に心療で接してきた遺族がおっしゃるのは「人と会う時はつらくても我慢して、元気そうに振る舞っている。なのに元気そうねと言われるとツライ」という方が多い。その一面だけ見て元気そうだというのは、実は傷つけてしまう可能性があることを知って欲しい。
 人は泣いていたり悲しんでいると、「泣かないで」「悲しんでいたらだめ」と言いがち。喪失、それによる悲嘆は十分悲しむことに意味がある。悲しむべき時にしっかり悲しみ、涙を流し、辛い思いを吐露することが、回復へ向けての重要なプロセス。悲しんだり泣いたりしている人の想いをしっかり受け止めてあげる。
 「泣くな」ではなく、「悲しんでもいいんだよ」と認めてあげることを気を付けてほしい。



◆一人で抱え込まないこと
 想いを他人に話せる人は癒しがうまくいく。自分一人で抱え込まず、周りに助けてくれる人がいて、素直に出せる人。あとは同じ想いを持った人たちで支えあうことが出来ること。
 家族の中で、亡くなった方のことを話題にしたり、小学校の中で子どもを亡くしたお母さんたちが、お互いに想いを話し合う。遺族の分かち合いの会という活動も始まっている。そういうことも重要。


大切な人を亡くされた方同士の「わかちあいの会」は、「災害グリーフサポートプロジェクト」の関連団体が、宮城県内などで開催しています。

【災害グリーフサポートプロジェクト Official Website】

2012年4月9日

4月9日「“悲嘆”のケア(1)」

震災で身近な方を失った方の心のケアについて、神戸赤十字病院の心療内科医/「災害グリーフ・サポートプロジェクト」の世話人・村上典子さんにお話しを伺いました。
グリーフとは「悲嘆」、喪失による深い悲しみと、それが心と体に及ぼす影響のことです。
このプロジェクトは、悲嘆のケアに関する情報を共有するために、心療内科、精神科医、臨床心理士、大学教員、悲嘆の研究者が立ち上げたネットワークです。
村上さんは1995年の阪神淡路大震災から、被災者の心のケアに取り組んできました。

◆「悲嘆」の現状
 今回の大震災では死別による喪失以外に、家や仕事、街の風景やコミュニティ、人間関係など、様々な喪失体験が同時に起こっている。亡くなった人との別れだけではなく、多くの喪失が一緒に起こっている。特に今回はご遺体と対面できない、見つからないケースがある。
 対面してお葬式を上げてお別れしても、遺族は現実感がない、実感がないと話す。ましてやご遺体に対面できていない、お葬式が挙げられていないとなると、ますます現実感が持てない状態。
 そうした喪失は日本では経験がない。海外の研究者の情報(NY同時多発テロやスマトラ沖地震による津波)を集めて分析をしている。
 喪失した現実感を持てなくて、現実を観ないようにしたり心にフタをしている時は、後になって深い悲しみや様々な症状が出てくる。フタをするということが体の症状として、胸がドキドキしたり頭や胃が痛いなど、身体の症状として現されることもある。


NYの同時多発テロ以降、専門家の間では、亡くなった方と対面できず、実感が持てない心の状態のことを、「あいまいな喪失」と呼んでいます。
この「あいまいな喪失」は、個人差はありますが、悲嘆を長引かせる要因にもなっているそうです。
今回の震災では、未だ3000人以上の方が行方不明のままです。


まもなく震災から1年1か月となる4月11日を迎えますが、こうした“節目の日”が心に影響を及ぼすことがあります。

◆「記念日現象」
 記念日とは亡くなった方との間の特徴となる日を指す。多くの場合は命日。今回の場合は3月11日や、亡くなった方の誕生日や結婚記念日など。一旦落ち着いて回復に向かっていたかに見えたのに、当時に戻ってしまい、非常につらくなってしまうということを繰り返す。
 死別から5年〜10年経った方でも、その時期になると調子が悪くなるということを繰り返すことがある。阪神淡路大震災の被災者は、昨年の3月11日に記念日反応で調子が悪くなった人がいる。
 そうしたことを知っておく、心の準備をしておくことには意味がある。テレビで津波の映像が出たり、あの日を想い出すニュースでつらくなると思う方は、そういうところから離れること。安心できる人と過ごす、被災地から離れる。そういうふうに対処することが大事。



「災害グリーフサポートプロジェクト」は、ご遺族だけでなく、支援活動をしている方など、私たちも知っておくべき情報をウェブサイトで随時更新しています。

【災害グリーフサポートプロジェクト Official Website】
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パーソナリティ 鈴村健一

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