バチカンでの感動体験!冷めることのない音楽への情熱と今後の活動
バチカンからも高い評価を受け、毎年「バチカン国際音楽祭」に招聘されている西本さんに、サン・ピエトロ大聖堂での特別な演奏体験から、音楽との向き合い方、そして未来への思いについて語っていただきました 。
◆「音が降ってくる」サン・ピエトロ大聖堂での感動体験
西本さんは、カトリック教会の総本山であるサン・ピエトロ大聖堂のミサで演奏する機会に長年恵まれています 。初めてその場所で指揮をした際、コンサートホールとは全く異なる音の響きに大変驚き、感動したのだとか。
巨大なクーポラ(ドーム状の天井)を持つ大聖堂は、音楽ホールとして設計されているわけではないため、音を出してから天井に反射した音が「降って来る」までに非常に時間がかかるのだとか。直接耳に届く音と、時間差で様々な方向から響いてくる音が混ざり合い、まるで野外で演奏しているかのような、これまでに経験したことのない響きが生まれるそう 。
「最初の年は予測外の音響に難しさを感じましたが、不思議なもので人間は一度経験すると、その感覚を覚えています 。聴覚だけでなく、音の振動を皮膚で感じる感覚も含め、体全体で記憶しているのです 」と西本さんは語ります。
◆指揮者の役割、そしてオフの素顔
指揮者の役割を「繋げること」だと考えている西本さん。自身の視点を提示し、演奏者たちとやり取りを重ねて高みを目指す、その探求は人生と共にあると感じているそう 。
そんな、常に音楽と共にある生活を送る西本さんですが、オフの時間に心惹かれるのは意外な「音」・・・
特定の好きな曲を挙げるのは難しいとしながらも、昔から変わらず好きなのは「コオロギやひぐらしの音色」なのだとか。特にコロナ禍を経て、当たり前だった自然の音の豊かさを再認識したそう。
また、オフに聴く音楽は、ジャズやシューマンの歌曲など、自身が演奏する機会の少ないジャンルの音楽 。レストランで自身の指揮したクラシック曲が流れていると、つい体が反応してしまい落ち着かないんだとか。
◆未来へつなぐメッセージと活動
今後の活動として、西本さんはご自身の経験を次世代に伝えていきたいと考えているそう。
「自身の幼少期の経験も踏まえ、今の子供たちに『世界は広く、新しい可能性はたくさんある』ということを、音楽を通して直接伝えたい」と語ります 。
また、音楽を単なる芸術としてだけでなく、振動や音圧といった科学的な現象として捉えることで、物理や歴史など様々な分野への学びの扉を開くことができると言います。音楽とメロディーがあれば、言葉を覚えるのが容易になるように、人間には音を使って記憶し、吸収する力が備わっているのだとか。
◆これからの活動
2025年の大阪・関西万博では、バチカンとイタリアの2カ国のパビリオンでアンバサダーを務める西本さん 。「芸術は生命を再生する」(イタリア館)、「美は希望をもたらす」(バチカン館)というテーマのもと、音楽を通じて貢献できることを光栄に思っているのだとか。
10年後のご自身の姿については、「今考えている幸せとはまた違った、心の豊かさで満たされていたいですね」と、穏やかな笑顔でお話しくださいました。