「GUEST講師:松任谷由実 先生・恋愛ソングを書けない山口一郎の『恋愛ソング相談』(2)」

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「実は僕、恋愛ソングが書けないんです。」

そんな相談をもちかけた、先週の松任谷由実先生と山口一郎先生の対談授業。実は授業のオンエア時間が終わったあとも、二人のトークはひたすら続いていたので、今回はその「オフ授業トーク」をオンエアしていきます!

山口「先週、ユーミン先生をお迎えしていましたが、あのトークは授業の後も長く長く続いておりました。それをサカナLOCKS!の職員はこっそり録音していたのよ。それを今回は流しちゃうからな(笑)。ミュージシャン対ミュージシャンのオフレコ的な会話を聞いてもらおうと思います。」




山口「え……いろいろ……恋愛の話もそうなんですけど、聞きたいことがいっぱいあるので、今度飲みに連れていってください。」

松任谷「もちろん。差し当たって番号を交換してね。ショートメールとかで。」

山口「ぜひ!」

松任谷「もう、ショートメール打たせたら、右に並ぶものはいないよ。俳諧の世界だから(笑)。」

山口「メールを送るのが怖いですね(笑)。」

松任谷「読まれそうで?大喜利みたいな?(笑) なんだこいつ、つまんないなーとか判断しそう?……そんなことないですよ(笑)。音楽というものがあるじゃないですか、一郎くんの音楽は分かっているわけじゃないですか。」

山口「そうですよね。じゃあ、僕、この『ユーミンからの、恋のうた。』を聴いて、恋愛の歌についてのリサーチをした上で、今度飲みの席でお話を聞いていただければ……」

松任谷「はい、もちろん……って言いながら、自分の話だけしているんだよね(笑)。」

山口「う……(笑)。」

松任谷「でもね、そういう人、得意よ。聞き上手なのね。だから結局、自分の栄養にしているわけ。だって、自分の話は自分で知っているから、いいじゃない。」

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山口「ユーミンさんは、キーボーディストで……当時から一緒にレコーディングをしてきたパートナーである松任谷正隆さんと結婚されたわけじゃないですか。結婚する前とした後では、変わりましたか?作るものって。

松任谷「うーん……変わって聴こえたかもしれない。名前も変えたし。半分冗談で変えたんだけどね。」

山口「そうなんですか?」

松任谷でも、名前って大きいから、そういう印象で人は聴く。変わったなって。それが感染したというか、人が何か違う風に捉えているって感じて、それに呼応して変わってきたかも。」

山口「でも、家に帰ったらいるわけですよね、旦那さん。」

松任谷「そうだよね(笑)。」

山口「それまでは一人で部屋で曲を作ったりしていたんですよね?そこに誰かがいるのって影響しますか?」

松任谷「それはしていると思います。でも、本当に作っている時、集中している時は、ひとりぼっちだよね。皆、そうでしょう?」

山口「そうですよね。僕……同じ家に誰かいるとダメなんですよね。全く。」

松任谷「あー……じゃあ、結婚はないね。」

山口「(苦笑) そうなんですよ。」

松任谷「でも、通い婚みたいなのもいいなと思いますよ。」

山口「そう!で、やっぱり二世帯住宅みたいなのもいいかなと思ったんです。二世帯住宅って入り口がバラバラじゃないですか。」

松任谷「あー……遠距離婚は?」

山口「えっと……単身赴任みたいな?」

松任谷「そうね。」

山口「遠距離で結婚するなら、別に結婚しなくていいですよね?多分……"付き合う"でいいかなって。」

松任谷「違うと思うなー。」

山口「え……」

松任谷「なぜなら、別れられないから。結婚すると、結婚の50倍くらい別れるのに手間がかかる。だから、よっぽど嫌いになる……憎むとか、そういう風にしないと離婚できないので……死別じゃなければね。大抵のことは我慢するっていう方向になると思うんですよ。だけど、そこの我慢にステップアップがあるんだなー。」

山口「ほー……」

松任谷「いつでも切れると同じことの繰り返しになると思うのよ。だからね、逆に事実婚みたいな人を尊敬する。いつ切れてもおかしくないのに、婚姻関係を続けている人はすごいなーと思う。何人かいるけど、私の友達にも。」

山口「はー……」

松任谷「……一郎くんには難しいのかな?この話が。」

山口「いや、難しくない……どうなんですかね?(笑)」

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山口「ただ、ずっと一人でいることに慣れてきていて……」

松任谷「そうね。だから、何も結婚することはない、勧めているわけではなくて。」

山口「お風呂に入っていて、何か考え事をしていて、ふとメロディーが浮かんだ時に、別にパンツも履かずに裸でギターを弾いて歌うってこともあるんですよ。多分そこに誰かがいたらそうならないじゃないですか。変なやつじゃないですか、そんなことしていたら。だから、バスタオルで体を拭いて、パンツ履いて、あわよくばパジャマまで着ちゃうわけですよね。」

松任谷「そうだね。」

山口「で、ギター持った時って多分、裸でギターを持った時の自分とパジャマを着た時の自分が作った曲って違うんだろうなって(笑)」

松任谷「そうだね。でもね、そのまた違いっていうのは新しい領域かもしれない。」

山口「なるほど……」

松任谷「だからね、勧めているわけじゃないって、全然。違う世界は、そういう日常にあるかもね。」

山口実際に結婚されて、その違いみたいなのは……結婚しようと思ったのはなんでだったんですか?

松任谷「タイミングかな……あと、やっぱり大恋愛だった。今思えば。」

山口「へー!……何かそういう曲はあるんですか?」

松任谷「中央フリーウェイ」は、かなり近いかも。ドライブしている歌だから。送ってもらって、車で一緒に走っている……そうすると、そういう心情で中央高速を見るとさ、料金を取るのにフリーウェイに思えるし、滑走路に思えるし……みたいな。」

山口「そっか。えー……どうしようかな……」

松任谷「(笑)」

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山口「この間『Yuming Chord』に出させていただいた時に[2018年4月27日の放送]、ここから先は、違う自分を作っていかなきゃいけないっていうか、新しい領域っていう意味で、自分はやっぱり文学から音楽に入っていった人なので、言葉っていうものの意味だったり、リズムだったり、どのタイミングで意味を感じさせるかとか、そういうことばっかり遊んできた人だから……もうちょっと、心情というか、人情というか……」

松任谷「メンタルっていうか?」

山口「はい。そっちの方にいってみるっていうのもありかなーとは思って……。」

松任谷「いいじゃん!さっきの、「こいつー!」って!(笑) それいいよ!」

山口「なんか、長渕剛さんみたいですね。」

松任谷「そうならない、ならない。声がそうじゃないもの。」

山口「そうですか。」

松任谷「不思議なものでね、もし同じメロディーを書いたとしても、声が違うっていうのは……テクスチャーが違うと全然ちがう。」

山口「楽興提供もされていますよね?原田知世さんの。」

松任谷「松田聖子さんとか……」

山口「あ、「赤いスイートピー」。あれって、歌詞があってじゃなく、曲から?」

松任谷「曲先(※楽曲制作で、先に曲を作って、後からそのメロディに歌詞をつけていくこと)で、松本隆さんの詞だけど。やっぱり自分に作るのとは違うね。」

山口「違います?」

松任谷「その人の一番スイートスポットというか、こう……魅力的に聞こえるレンジとかを探りますね。」

山口「へー……」

松任谷「で、セルフカバーしたことはしたけど、そういうものでもなくて。人に作る時は、その人のものっていう感じで。」

山口「嫌じゃないんですか?自分で作った曲を他の人が歌うっていう感じは。」

松任谷「全然。嬉しい。ありがたい。」

山口「へー……」

松任谷「薬師丸ひろ子さんの「Woman “Wの悲劇”より」っていう曲があるんですけど、同じコンビなんだけど、松本隆さんと。それは人に書いた中でも神曲だと思ってる。」

山口「え、聴きたい!(※番組職員に向かって) 音源あります?」

松任谷「すごい曲なんだよ。私が言うのも何なんだけど。」

山口「それはどういう意味ですごいんですか?」

松任谷「あー……もう、冥界から聞こえてくるかのような……彼女の声と相まって。」

山口「へー……」

松任谷「やっぱり歌手ありきですよね。クリスタルボイス……なんか、クリスタルシップに乗っているかのような。曲も、自分でも信じられない転調をしていますし。でも、きっちりナンバー1ヒットになっている。」


♪ Woman "Wの悲劇"より / 薬師丸ひろ子


山口「あ……知ってます。」

松任谷「これもね、ひろ子ちゃんが、歌っている時の自分のメンタルを思い切りぶっこんだろうね(笑)。」

山口「ははは(笑)。わー……すごい。」

松任谷「これは全編聴いてもらわないとそのスケール感が分からないんだけどね。さらにいろんなところに持って行って差し上げますよって感じ。」

山口「はー……」

松任谷「この曲、最後がすごいんですよ。」

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松任谷「アレンジは松任谷正隆ですけど、音質の選び方とかもすごいなって思います。今はいくらでも音があるじゃない。」

山口「はい、ソフトウェアがありますね。」

松任谷「だからね、10種類くらい聴いて、よくなっちゃうんだよね、みんな。」

山口「あー……」

松任谷「でも昔は、この音を出したい……っていうまで探るし、機械的にそんなに種類はないので……あと、それを出せるミュージシャンもいた。」

山口「細野(晴臣)さんとかすごいですよね。やっぱりベースの音もそうですけど、ギターの音もすごい良いですよね。」




……このような感じで、オフ授業のトークは、まだまだ続くのですが、今回の授業もそろそろ終了の時間になってしまいました。

山口「デビュー10周年のサカナクションの山口一郎と、デビュー45周年の松任谷由美先生……ユーミン先生ね、この2人のオフレコをね全国でどばっと流しちゃいましたけど(笑)。いかがでしたでしょうか。やっぱりユーミン先生って、みんなも思っていると思うけど、やっぱり天才なんですよ。ミュージシャン目線で……僕も作曲する人間なので、悩むところがあるわけです。そこをどうクリアしていくかっていう方法をいくつも持っているんだけど、やっぱりユーミン先生は、僕が思いっきりジャンプしなきゃ届かないところを、背伸びもせずぱっと触っているような……余裕がある感じがしましたよね。それって、磨くことじゃなくて先天的なものだと思うんですよ。背伸びをしてパッと触るのか、ジャンプしなきゃ触れないのか……触ったことで生まれてくるものが良いか悪いかっていうのはあると思うし、どっちがいいかとかはないと思うんだけど、ユーミン先生からはこれからもいっぱい学べるなって。あと、先生、電話番号を交換しちゃったのよ。ユーミン先生と。これ……メールするんだぜ?(笑) でも、こういう先生たちが影響を受けてきたミュージシャンのことを生徒諸君にも深く知ってもらえるっていうのはすごく嬉しいなと思います。」

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