『生徒が山口一郎にインタビュー "人生に音楽は必要なのか?"(前編)』

SCHOOL OF LOCK!




RSR!
昨日のRSRお疲れ様でしたー!
サカナクションのライブは初めてだったんですが、音楽を聞いているだけで、勝手に体が動いてしまう不思議な感覚がありました!
もうほんとに死ぬほど踊れました!
最高でした!!!
ありがとうございましたー!!!
れんんんん
男性/14歳/北海道




山口「そうです。今年RISING SUN ROCK FESTIVALに出演いたしました。今年は20周年ということで、出演させていただいたんですけど……私は、デビューする前に、ライジングサンのイベントを主催しているウエスっていうイベント会社で6年くらいアルバイトしていたの。もっとかな?なので、ライジングサンのセットの設営とか、いろんなバンドの警備とか、もぎり(入場口でチケットの半券を受け取ること)とか、めちゃくちゃやっていたんですよ。ライジングサンでは、本番の前日に、テストバンドって言って、地元のアマチュアバンドが音出しさせてもらえるんですね。そこに僕らはアマチュアの時代に何度も立たせてもらって……やっぱりね、地元北海道でアルバイトしてきたフェスだから、スタッフの人とかもみんな知り合いなのよ。楽屋にいるよりも、スタッフのテントにいる方が楽しい……みたいな(笑)。こう……嚙みしめる独特な気分になりました。懐かしむような。ライジング、また出演させていただきたいです。」

「じゃあ、黒板書きます。」

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今回の授業は、普段インタビューを受ける側であるサカナクションの山口一郎先生が、この学校の10代の生徒からインタビューを受けます。
そのきっかけは、[サカナ掲示板]の書き込まれたこのメッセージでした。



いちろうせんせい!
私は卒業研究で『人生で音楽は必要なのか?』ということを研究することにしました!
その時に山口一郎さんにどうしてもお話を聞きたいと思っていて、なぜなら一郎さんは音楽というものに一番真摯に向き合っている人だと思うからです!
人が音楽を聴く意味という問いについての考えを聞きたいです。
一郎さんはグッドバイを書いている時にとても辛かった時期と言っていましたが、そんな時にも音楽から逃げなかった理由や、山口一郎さんにとって音楽とはどんなものなのかがどうしても聞きたいです。
音楽とは『コミュニケーション』なのか、『音』なのか、『娯楽』なのか
一郎さんの意見を聞かせて欲しいです!!
わたしは一郎さんのようなミュージシャンになりたい、と、ずっと思っています。
このことについてのお話を聞きたいです!!!
おねがいします!
びー子
女性/15歳/東京都




「なるほどねー。中学校の卒業研究ってあるんですね。僕らはそんなのなかったなー。今回は、生徒に直接インタビュアーになっていただいて、生徒にインタビューされるっていうのをやってみたいと思う。将来、インタビュアーやライターになりたい人……必聴!」

それでは、書き込みをくれた、愛知県17歳の女の子 RN:びー子による山口一郎インタビューです。

山口「もしもーし!」

びー子「もしもし!」

山口「サカナクションの山口一郎です。」

びー子「こんばんは!」

山口「早速だけど、中学卒業で、卒業研究っていうのがあるんだね。」

びー子「そうなんです。」

山口「全卒業生にあるの?」

びー子「全員あります。」

山口「それはもう、自分が好きなことを研究するの?」

びー子「はい。みんな全然バラバラで、好きなテーマを選んでやるって感じで。」

山口「それは論文とかを書くってこと?」

びー子「そうです。論文を書いて、パワーポイントを使って10分くらいみんなに説明するっていう。」

山口「え?中学生だよね?(笑)」

びー子「ふふふ(笑)」

山口「評価とかは先生がするの?」

びー子「みんなが投票して選ばれる……みたいな感じで。」

山口「じゃあ、特に試験に関わったり、内申書に影響するとかはないんだ?」

びー子「そういうのはなくて、ただ頑張る……みたいな。」

山口「そっか。なんで今回はこのテーマにしたの?"人生に音楽は必要なのか"って。」

びー子「自分が辛いときとかに、必ず音楽に助けられているなって思っていて。それと、沖縄の人たちって、辛いことがあっても、歌とか踊りとかで乗り越えているみたいな話を聞いたりとか、ロックって、辛かった人たちが歌い始めてできた……みたいなことも聞いて。調べたいなって思ってそれにしました。」

山口「なるほど。」

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山口「僕は日本でやっているミュージシャンで、バンド歴は11年。音楽歴でいうと……20年くらいかな。そんな僕でよければ、なんでも答えるので質問してください。どうぞ!」

びー子「ありがとうございます!じゃあ……5つくらい大きく質問があるんですけど。」

山口「いいよ。」

びー子「まず、音楽を聴く意味っていうのが知りたくて……その前に、音楽っていうものが何なのかっていう定義みたいなのをどう思っているのかが聞きたくて。クラスの子達にアンケートとかをして、"雨音"とか、"ピアノの音"とか、"虫の声"とかを紙に書いて、音楽って思うものに丸をしてもらったんですけど、そしたらみんなすごい考えがバラバラで……余計にわかんなくなっちゃって。"音"と"音楽"の違いっていうのを教えて欲しいです。」

山口"音"と"音楽"の違い……僕はね、音楽って何なんだろうって考えることはよくあるけど……子供の頃に、お母さんが子守唄を歌ってくれたりしたじゃん。だから、人間が最初に触れる文化が音楽だと思うんだよね。テレビとか、ファッションとか、いろんなエンターテイメントにおけるいろんな文化があるけど、無意識のうちから必ず最初に、強制的に……じゃないけど、自分に与えられる文化が音楽って気がしてて、それによって人間の感情が動くわけじゃん。例えば、泣いている時にお母さんが歌ってくれて、落ち着いて泣き止むとかさ。そういう人の感情を動かすものであれば、僕は音楽って定義していいのかなって思うんだよね。

びー子「はー……なるほど。」

山口「例えば、外にいて、雨が降ってきてさ……軒下で雨が止むまで雨宿りしていたとするでしょう?屋根に、雨がしとしと当たって……不規則なリズムが自分の頭の上で鳴るとするじゃん。でも、雨って不規則だからさ、そこで鳴っている音って全く同じ音は一生聞けないわけじゃん。自分はそこにいて、その雨の音を聞けてて、それは自分しか聞けないわけでしょ。でも、それは意識するとそう感じるけど、無意識だとただの雑音だったりするわけじゃん。だから、人の気持ちを動かすっていう……目で見えないけど感じているものが音楽なんじゃないかなって気がしているけどね。」

びー子「うん。」

山口「もちろん、音楽理論的な話をすると、音階があると音楽だとか、構成がどうとか……そういった理論的な話になると難しくなるけど、人間の感情を動かすっていう……自分の感情を動かした音っていうものは音楽って呼んでいいんじゃないのって思うし、それが作為的なのか、無作為なのか……。無作為なものを作為的に作り出すっていう音楽もあるし。アンビエントとかね。だから、僕は音楽と匂いって一緒だと思っているんですよ。音と匂い。

びー子「はー……、音と匂い……。」

山口「そう。真っ白いただの部屋にびー子が立っていたとするじゃない。そこにジャズが流れてきたらさ、ジャズの気分に自分がなるじゃん。音楽に自分の気持ちが引っ張られるでしょ?」

びー子「うん。」

山口「けど、例えばそこで、真っ白い部屋にびー子が立っていた時に、ラベンダーの香りがふわっとしたらさ、自分の気持ちがそのラベンダーの匂いに引っ張られるよね。」

びー子「あー……!」

山口「だから、目では見えないけど、その人の気分を作るもの。」

びー子「気分を作るもの……」

山口「うん。僕は音楽をそういう風に捉えていて、それが歌であれ、ただの音であれ、音楽って定義できるんじゃないかなって思うけどね。「それは音楽だ」「音楽じゃない」って分かれるのは、そういうことなんだと思う。自分の気分が動かされているのと動かされないものがあるっていうことで。」

びー子「あー……なるほど……!」

山口「音で記憶が蘇ってくるっていうものだったりするしね。」

びー子「わかりました!」

山口「大丈夫?(笑)」

びー子「いや……もう、すごすぎて……こんなにちゃんと話してくれると思わなかったから……」

山口「適当に話すわけにはいかないよね(笑)。」

びー子「すごい……感動してます。」

山口「でも、正解じゃないよ、これは。僕の意見だからね。僕なりのことを言っているだけだから。正解はないからね。」

びー子「はい。」

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山口「よし。じゃあ、次いってみよう。」

びー子「はい。人が音楽っていうのを聴く意味が知りたい。」

山口「意味……なんか、音楽に意味を求めて聴くことってあるかな?」

びー子「うーん……」

山口「例えばだけど、甘いものを食べたい時にチョコを食べるとかさ、今気分が悲しいから明るいものを聴こうとか、明るくなりたいから音楽に頼ろうとか……感情を増幅させたりする道具として聴く時もあるけど、何もない、自分の心の中と向き合っている時に、ふと入ってくるものとして音楽がある時もあるじゃん。だから、目的を持って聴く時と、目的がない時にふと入ってくるもので音楽って全然違うしさ。意味っていうものが存在するかは分からないけど、テクノロジーの進化っていうものもすごく影響すると思うよ。そうすると、音楽っていうものの意味っていうのも変わってくるんじゃないかと思うけど。」

びー子「あー……なるほど。」

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山口「次いってみようか?」

びー子「はい!次は、衣食住があれば生きていけるのに、こんなにも音楽がみんなに愛されているのはどうしてかっていうことが聞きたいです。」

山口「なんかこう……無駄なものがないとつまんなくない?」

びー子「うん、それは思う。」

山口「衣食住もさ、ただお腹を満たすだけだったら、別に……服も、ただあったまるだけだったらそんな服の色とかシルエットとかサイズとか気にしなくてもいいじゃん。住むところだって、別に眠るだけだったら洞窟でもいいじゃん。でも、なんかそこに快適さを求めたり美味しさを求めたり……自分らしさを求めたりしていくっていう感覚っていうか、無駄な部分っていうか……余白?その余白がないと本当に必要なものだけに囲まれていると、疲れてくるじゃんか。楽しくないっていうか。」

びー子「余白……」

山口「無駄なことに取り組んでいる時こそ、逆に充実している気持ちになったりもすると思うんだよね。音楽っていうのは、無駄な中で生まれた芸術っていうか……そんな気はする。」

びー子「なるほど。」

山口「でも、音楽だけに限らないと思う。エンターテイメントっていうのは何事も。」

びー子「うん、絵とか……」

山口「うん。絵もそうだと思うし、もちろん、そもそも機能はあったと思うけど。」

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山口「でな、いっぱい話しているんだけど……今週はここまでだわ(笑)。」

びー子「あー!(笑)」

山口「来週もう1回やろう。」

びー子「え……えー……!大丈夫なんですか?」

山口「やるからにはこっちも本気だから(笑)。」

びー子「わー……ありがとうございます!」

山口「とりあえず、参考になったでしょうか?」

びー子「本当に、こんなにちゃんとやってくれて……すごい嬉しいです。」

山口「勉強熱心だなって思えてすごく好感が持てました。」

びー子「ありがとうございます。ふふふ(笑)。」

山口「うん。じゃあ、おやすみ。」

びー子「はい、おやすみなさい。ありがとうございましたー。」

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ここで、今回の授業は終了の時間です。

山口「結構しっかりとびー子と話して、インタビューを受けていましたので、今週の授業は時間切れでここまでにしたいと思います。でもね、雑誌のインタビューとかって普通1時間とかかかりますから。びー子と話して長くなるのは当たり前です。ということで、来週もびー子と話していきたいと思います。」

次回も、RN:びー子の卒業研究『人生に音楽は必要なのか?』についての一郎先生へのインタビューをお送りしていきます。


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