『今夜は自習です。』

音で学ぶ、音を学ぶ、音に学ぶ、"音学(おんがく)" の授業、サカナLOCKS!。今回は一郎先生が、職員室から手ぶらで音学室に向かったらしいのですが───

SCHOOL OF LOCK!


SCHOOL OF LOCK!


山口「はい、席に着いてください。……先生はね、7月から8月にかけて夏フェスがずっとありまして、その前は春フェスっていうのもやっていました。その間もレコーディング……そして歌詞にひたすら取り掛かっているんだけど、この後もレコーディングがありますし、10月からはホールツアーでしょ。……先生もう全然休みがないんですよ。……休みないって言うのやめたほうがいいよ。忙しいアピールするのかっこ悪いよって友達に言われたけど(笑)。でもね、本当にないのよ!ということで今夜は……自習とします!はい、今日は自習ですからね。各自勉強しておくように。」


(教室がザワつく)


「……うるさいぞ、君たち。今、自習中、しっ!……先生、サカナLOCKS!でこういう風な話し方をしているけども、普段はもっと落ち着いた好青年なんだ(笑)。サカナLOCKS!で喋るときには、いつものテンションを200パーセント……界王拳2倍ぐらいのね(笑)。そんな気持ちでやっているからね。今日は自習ということで、皆さん音楽のことを各自勉強している裏でな、先生は自分のことをぽつりぽつりと考える……今後の人生ついて。」

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「先生、もう……38歳だ。38歳、独身。職業、自営業(笑)。……先生、テレビを見ないんだ。インターネットでニュースとかを確認するんだけど、ニュースの記事と記事の間に広告があるだろ?なんか知らないけど、あの広告のところに、"婚活" "パートナーを探そう"みたいなものがやけに出てくるような気がするのはなんでだ。目が行くようになっているのかな。今まであったけども、気になっていなかっただけだったのか……最近そういうのを目にするようになってきたぞ。」


「そういえば先生な、今年、春フェス夏フェスっていっぱい出たんだよ。フェスをいっぱいやって、フジロックにも出た。フジロックっていうのは洋楽のミュージシャンがいっぱい出るフェスであり、他のフェスとは一線を画していると。それはミュージシャンの中でもそう思っている人が多いと思う。特に先生たちの世代だったり、ちょっと下の世代で洋楽を聴いてきた世代からすると、やっぱり伝説のステージだと。今年はそこのヘッドライナー前のステージをつとめて、フジロックはYouTubeで配信していたの。生ライブ配信していたんだな。それの同時視聴者数No.1がサカナクションだったと。だから、そういう意味でも成功を収められたと思うんだけど……」

「……いろんなフェスに出て、日本のフェスシーンみたいなものをミュージシャン的観点からさらに深く感じ取ったんだけど、ひとつ思ったのは……ラインナップがいっしょだな。それは、都市型フェスもそうだけど、地方のフェスもそうだし、フェスごとに多少カラーはあれど、やっぱりラインナップが似ているから、会場で会うミュージシャンもほぼいっしょなんだよ。ちょっと大きいバンドは……例えば、[ALEXANDROS]先生とか、僕らとか、アジカン先生とか……ヘッドライナークラスだから(出演日を)散らされるので会わないんだけど、ヘッドライナー前とか若手とかだと被ってくるんだよね。フレデリックなんて今年、何回会ったか分からない。なんかその……フェスの課題はいろいろあると思うんだけど、地方のフェスはやっぱりなかなか同時にたくさんのミュージシャンを見られるチャンスがないから機会としてあっていいんだけど、いろんなフェスの中で先行していかなきゃいけないのは、ミュージシャンがたくさん住んでいる東京で行われる都市型フェスだね。その都市型フェスはこれから新しく進化していかなきゃいけないんじゃないかなと思いました。もう少しこう……カラーを出していかないと、若いお客さんがそのミュージシャンを聴いて好きになって、その先に聴いていく音楽があるわけだから。で、すごい感じるのは、僕ら世代や、もう少し上の世代の子供たちがライブに来始めているんですよ。だから、僕らが聴いてきた音楽を聴いてきた大人の子供が来ているわけ。音楽が本当に好きな人たちを作らないと、その子供たちも親の影響で音楽を聴くわけだから……長く考えると良くないんじゃないかと思ってくるし、フェスで何か事故があったときに、一気にフェス離れしてしまったら……フェス事業が閑散としてくると、もう音楽が出てくる場所がなくなってくるからね。これはちょっと、もう少し改革しなきゃいけないなって思う。音響や演出も含めて、もう少し楽しませるっていうことに投資してほしいなっていうのはミュージシャンとして思ったかな。」


(再び教室がザワつく)


「……ちょっと、お前ら。……しっ!自習中だぞ!こっちの話に注目しない!」

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「でね、これも最近、先生の中の問題なんだけど、先生ひたすら(作詞などの制作活動で)潜るときは潜り続けて電話も見ないしメールの返信もしなくなるから、倒れているんじゃないかって思うくらい音信不通になるわけだよ。だけど、最近はフェスもあるし、この授業もあるから、潜っても浮上してこなきゃいけない。今年は浮上率が高い!潜って、中層くらいで出てこなきゃいけない。潜り切る前に出てこなきゃいけないっていう、このダイナミクスが細かいから、なんかこう……あんまり良くないかなって思ったんだけど、逆にいいかもってちょっと思い始めてきている。気持ちが楽になるっていうか、塞ぎがちにならない分、良いのか悪いのかは、結果、作り上げたもので判断せざるを得ないんだが。ある種、ドライな気持ちで言葉に向き合えているから良いかなとは思うんだけども。」


「先生の集中方式っていうのがあるんですよ。これは至るところで話をしてきているんだけど、これは学生時代の受験勉強の時からそうなんだが、先生はどう頑張っても3時間しか集中できない。それが判明している。だから、3時間集中して1時間休んでっていう3時間サイクルを作っているの。で、どんなに集中して気持ちが乗っていても、3時間で止めるの、1回。そうすると、1時間あけて次やるときに、前の3時間のことを冷静に振り替えられるというか。ワクワクして次の3時間に臨めるというか。そういうサイクルでやるんだが、3時間やって1時間休んで、3時間やって1時間休んでってやっていくと、眠くなるタイミングが来るわけだな。で、お腹が膨れると眠くなるし、お腹が空くと疲れるんですよ。だから、お腹が空かない、お腹が膨れないっていうのを1日中ずーっと保つためにどうしたらいいかっていうので最近見つけた食べ物……これ、カルパスね!……カルパス知ってる?あのー、サラミだよ、短くなった鉛筆みたいな(笑)。それを定期的に食べてると、お腹が空かないし、お腹も膨れないっていう、けども集中は保てるっていう……先生の今の状況。」

「あと、メール返せないんだよ。だからね、メールを返さないことで、こいつ超失礼なやつっていう時代になってきているのは、より先生を孤立させてる(笑)。そういう時代に慣れていないね。あとSNSね。ニュースをよく見ていると、"Twitterでこういう発言がありました" みたいな「Twitterでの発言」っていうでしょ……あれ、おかしくないか。Twitterってつぶやくものでしょ。公式に公に発表する場所なの?……もうちょっと、「カルパス食べ過ぎてお腹の調子が悪い。」とか、そういうことをぱって言ったりする場所じゃないの?それがなんか、Twitterでの発言に重みが出すぎていて、SNS恐怖症の僕からすると下手につぶやけないのよ。」


(また教室がザワつく)


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「あっ、こないだな……ほら、みんな、静かにしろ。これから先生良い話するんだから(笑)。聞くんじゃない、聞くんじゃないよ、自習中なんだから。この間な、スピッツさんが「新宝島」をカバーしたっていう情報が入ってきたのよ……


(教室が一気にザワつく)


「……うるさい!ザワつくな!ここはザワつくところだと思うけどもザワつくな。先生、スピッツ大好きなのよ。……スピッツさんな、もうミュージシャンに "さん" をつけるのも面倒になってる(笑)、ベテランになってきたからだと思うんだけど(笑)。そのスピッツさんが、大阪の『ロックロックこんにちは!』っていうLIVEで、サカナクションの「新宝島」をカバーしたって本当ですか?ってインスタにきたのよ。で、本当かよって思ってTwitterで調べたら、"新宝島やってくれた、すごい。" みたいなのがあって、嬉しいと思ってマジかと思ってつぶやいたのよ、先生。」





「……これ良いでしょ、スピッツ大好きなんだから。そのスピッツが自分の作った曲をカバーしてくれた……嬉しいからつぶやくじゃん。そしたらな、「ネタバレやめてください。」みたいな。……え、ネタバレって何って思うと、大阪と東京で公演があったのよ。そういう風に言われたら嫌だから調べたけど、違う名前だったのよ、イベント名が。だから、違うもんだと思うじゃん。すると、大阪公演と東京公演は名前は違うんだけども、同じ括りのLIVEだったみたいなのよ。」

「先生は、嬉しかったわけ。……君たち、サカナクションになったと思いなさいよ。で、スピッツが自分の曲をカバーしてくれたって思いなさいよ。……嬉しくなるでしょう。僕には事前に連絡はなかったわけ。スタッフにも、事務所のトップにもやりましたって話は来ていないわけ。別に、みんなどんどんやって欲しいと思うんだけど、びっくりしちゃうじゃん。こっちはさ、曲を作っている真っ最中だしさ、ハッピーなニュースがほしい精神状態の中でね、スピッツが新宝島をやってくれたなんてもうハッピーじゃないの。」

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「あと、正直言うよ。これから先生はTwitterっていうものを見つめ直していこうかと思って。もう……ブログ始めようかなって(笑)。そのくらいもう世の中はTwitterに支配されているな……SNSに支配されているんだなと思っている。みんな、SNSも良いけど、SNSにしない自分の言葉と向き合う時間を持った方がいいと思う。全部が夜中に書いたラブレターでもいいじゃないの。誰かに向けて書くっていうのを、大勢に向けてじゃなく。誰かに届けるわけじゃなくて、自分の中で留めておくっていう感動を忘れて欲しくないと思う。だから、SNSはセンチメンタルを殺すんだよ。みんなそれを "中二病" で解決しちゃうじゃん。そうすると、石川啄木なんて今、生まれていたら、完全に中二病のメンヘラだって言われていたと思うよ。だから、文学者を生み出さなくなっちゃうぞって思うんですよね。それは先生すごく、悲しいなって思っています。」

「じゃあ、今日はこのまま自習にするのでね、しっかり勉強するように。……これは、独り言だから!いくら愚痴を言ったって構わないじゃないか。でも、スピッツが「新宝島」をやってくれたっていうのは……」

(♪「新宝島」のイントロが流れてくる)

「っほほい、スピッツーーーーーーーー!!!(笑)」


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サカナLOCKS! 放送後記

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