わかったフリのアーティスト用語 『 EQ 』 (W/江島啓一) (2)



■新曲
え!あのリズムはサンバ!?いったいどうなってるんだ〜早くフルが聞きたいです!!!!!!!!!
swoon
女/13/東京都




山口「そうですね〜。あのリズムはサンバ……かな?ちょっと意識したところはありますね。でも、あれはCM用のMIXだからね!ちゃんと声が聴こえるように、インパクトを残せるように、バランスを変えているから。だから、曲になったらどうなるか分かんないよ。……っていうところも言っておこうかな。その辺りの授業も後々やっていこうと思っているので、お楽しみに。新曲解禁は、悪徳企業ビクター次第っていうところなので(笑)、ちょっと待っていて下さいね。」


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今回も先週に引き続き、EQ(Equalizer)・イコライザーの授業です。前回は、EQとはどんなものなのか、曲を聴きながら、山口先生と江島先生が説明してくれました。今回はiTunesに入っているイコライザの機能を使って、プリセットの設定が、どのような設定になっているのかをみていきます。

山口「今週も、この方と一緒にお届けしていきます。」

江島「サカナクションのドラム、副担任の江島先生です。」

山口「……なんかお前、鼻詰まってない?」

江島「いや、これ年中なんだ(笑)。」

山口「EQ? その鼻詰まり。」

江島「これは……、HIGH(高い音域)が落ちている感じだね〜(笑)。」

山口「先週は、EQを触ると、どう音が変わるかっていうのをやっていったんですけど、分かりやすかったですよね。」

江島「うん。低い音がドンドン鳴り始めたり。」

山口「そうだね。イコライザの左側のバーを上げていくと、低い音がドンドン出始めて、逆に右側のバーを上げていくと、シャリシャリした音に聴こえました。つまり、EQを触ると音の成分が変わっていきます。料理でいうと、味付けが変わっていきますよ、という話をしていましたね。」

江島「うん。」

山口「今週は、iTunesのイコライザの中にあるプリセット、Acoustic、Rock、Pop、Jazz……などに変えることによって、どう音が変化するか、イコライザの設定を見ながら、僕たちなりに解説していきます。これは「設定」
というだけで、Rockが好きな人はRockのイコライザの設定にしなければならないというわけではないんです。Acousticの音楽を聴くときは、Acousticっていう設定にしなければならないわけでもないんです。ただ、そのジャンルを聴くのに適しているんじゃないかと、iTunesを作った人が設定しているということなんですね。」


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江島「はいはい。「Rockを聴くときは、イコライザをRockに設定してみると、気持ちいい感じになるよ〜。」
っていう提案ですね。」

山口「「俺は、そう思うよ〜。」
って、iTunesの人が言っている感じ。それに、Rock好きだから、Rockをセレクトして設定されるEQのまま、Electronica聴いてやる!っていうのもアリだと思うしね。」

江島「おぉ〜!それもRockだね〜。」

山口「そう。つまり、EQっていうのは、その人の好きな音の雰囲気を作る物なので、自分の基準を見つけていく上で、良い物になるのではないかと思います。そのために、良い授業になったら良いな、と思います。」


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それでは、ここからは、iTunesのメニューバーにある「ウインドウ」
の中の「イコライザ」
を見ながら進めていきます。皆さんもパソコンの中にiTunesが入っていたら参考にして下さい。まず、"Pop"のイコライザを選択してみましょう。


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山口「Popのイコライザは、全体的に、左側の低音域と、右側の高音域は真ん中よりも下がっていて、中域がちょっと立っている……山のようになっていますね。……これは、なんでですかね?」

江島「これはね、多分、Popは歌が中心になった音楽だということかな。」

山口「歌をより聴かせるために、歌の成分が一番含まれている中音域だから、その部分を誇張しているイコライジングがPopだと、iTunesを作っている人が解釈しているわけですね。つまり、歌が好きな人は、このイコライザで聴くと、より歌が聴こえる。」

江島「そうだね。」


次は、"Rock"のプリセットを選択します。


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山口「……おっと、これはまた、極端ですね。」

江島「逆ですね、さっきと。」

山口「Rockの場合は、左側の低音域と、右側の高音域がフラット(真ん中)の値よりも高くて、中音域に向かって、下がっていく感じ。つまり、カモメが飛んでいるような感じの、V字になっていますね。」

江島「うん、なっていますね。これは、楽器を優先的に聴いて欲しいってことかな。」

山口「そうですね。ギターの激しい歪んだ(ひずんだ)音だったり、ドラムがドンドン叩いている音が前に出て、歌は自然と入ってくるっていう……Rockの場合は、そういう主張をしているんじゃないのかと解釈されて、こういうイコライジングになっているんじゃないですかね。」

江島「そうですね、きっと。」


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次は、"Jazz"を選択します。


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山口「次は、ちょっと難しいJazz!……これは微妙な変化ですね〜(笑)。」

江島「わ、何だこれは……。」

山口「基本的に、Rockと似てる。だけど、真ん中よりもちょっと低い部分、"250"のバーがちょっと上がっているんですね。……これ、なんででしょうね。」

江島「なんででしょうね〜……。何だろう。」

山口「僕ね、この理由は、ベースラインだと思う。」

江島「ベースが重要ってこと?」

山口「そう。Jazzって、フレットレスって言って、フレットが無いベースを弾くじゃないですか。ボン、ボン、ボボンって。」

江島「大きなやつね、コントラバスかな?縦にして弾いているやつ。」

山口「そうそう。その、指のタッチを聴かせるため……?」

江島「おぉ〜……!それが、この"250"辺りにあるんだ、と!(笑)」

山口「そんな気がする……!(笑) あと、ベースの"胴鳴り"感!コントラバスって、大きな楽器だから、それ自体の音の鳴り方、アンプを通していない、生音で、楽器自体が鳴っている胴鳴りの音が重要なんだよ。」

江島「弦だけが鳴っているわけじゃないよね、あれは。」

山口「そうそう。その、楽器自体が出している音を出すために、この"250"辺り……真ん中よりもちょっと低いところが高くなってるんだよ。」

江島「なるほど〜!」

山口「……いや、これ、読みね!(笑) 予想、予想!」

江島「いや、でも、当たってるかもしれないね!」


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次は、"Electronic"を設定してみましょう。


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山口「じゃあ、次。Jazzは、生音を重視している物だと考えているとして、Electronic!……あら!」

江島「お、これも、さっきと上がっている部分が違いますね。」

山口「基本的には、Rockと同じような形で、今度はJazzの逆、中音域の高い方である、"1K"が上がっていますね。……これはなんでだろう?」

江島「なんででしょうね……。でも、Electronicは、歌があんまりない音楽だから、(聴かせたい要素は)歌じゃないんだよね、多分。……これは、シンセだ!」

山口「そう! ……多分(笑)。」

江島「多分……!(笑)」


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山口「シンセとか、ハットとか、打ち込みのドラムだね。そのリズムとか、シンセをちゃんと聴かせたり、打ち込まれた音のリズムやグルーヴをちゃんと聴かせるために、"1K"の部分をあげているんじゃないかな。」

江島「あ、なるほどね〜……。アタックって言われているところかな。」

山口「それで、注意してみてもらいたいところは、Rockよりも、低い部分の"32"だったり、高い部分の"16K"も上がっているんですよ。だから、より、カモメが羽ばたいている、羽がグイッと、肩甲骨がぐっと上がっている形になってるよね!(笑)」

江島「あはは! (笑) 肩甲骨、あるのかな、カモメに。」

山口「……みたいな感じ(笑)。高い部分や低い部分も誇張しつつ、一部分だけクイっと上げているっていう……予想ね。これはあくまでも、全部予想だけどね!」

江島「良いんですか、山口先生、予想で授業やっちゃって。」

山口「まあ、でも、音っていうのは目で見えないわけだし、手で触れないものなので、聴いた感覚なわけですからね。」

江島「そうですね〜。」


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山口「じゃあ、完全に生音っていうEQ、行ってみましょうよ。」


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山口「……あら!これは何だ……?」

江島「お!これは、Jazzで上がっていたところ(250)が、フラットになっていて、あとは全部上がっているよね。」

山口「ちょっと待てよ……。Jazzで生っぽさを聴かせるために上げるって言っていた部分が、今回は下がっている……。あれぇ〜?(笑)」

江島「うーん……(笑)。」

山口「ちょっと、解釈が難しいね……。」


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山口「でも、EQって何が大事かと言うと、みんなが持っているイヤフォンやヘッドフォンは、既にEQされているんですよね。」

江島「されています。」

山口「だから、物によって、個性がそれぞれにあるわけですよ。すごく低い部分が出るイヤフォンもあるし、高い部分が出るイヤフォンもある。物によって、EQされているのに対して、自分の好きなように自分の好きな音楽の聴こえ方に設定するっていう、自分の好きな音を作る事ができる、ひとつのツールなんですね。」

江島「なるほど〜。ちなみにですよ、僕たちがLIVEする時に、前にあるでっかいスピーカーから出ている音をEQしているのは、サニーさん(佐々木幸生さん/Acoustic)っていう、PA(音響の技術者)さんですね。」

山口「そう!これはすごい事なんですよ。LIVEのスピーカーで、どんな音を鳴らすか、サカナクションのLIVEの音を、どんな風に聴かせるのか、その音を作っている人は、PAの人だという事ですね。PAの人の技術が長けていないと、安いイヤフォンで聴くような感じになってしまうわけです。……つまり、バンドの音っていうのは、バンドそのものが発信している音ではないわけです。生音は、後ろの人には聴こえないわけだからね。それをマイクで拾って、バラバラにもらって、どこに配置して、どれくらいのレベルで出すかっていうのを決めているということは、指揮者みたいなものなんですね。クラシックで例えると。」

江島「うん。そうですね。」

山口「この人がいないと、LIVEが成立しないっていうことも、EQから分かってくるということですね。……EQ、面白いね〜。」

江島「EQ、深いね〜。」


そろそろ、今回の授業も終了の時間になりました。

山口「EQ、説明は難しいけど、深いんだよね〜。」

江島「深いんだよね〜。是非、触ってもらいたいよね。」

山口「ずっと触っていたら、分かる瞬間があるよね。音って、立体的なんだなって。僕は、最初、EQって何やねんって思ってました。とりあえずドスドス聴きたい!って思ってたのね。」

江島「低音重視だったんだね。」

山口「そう。あと、シンセがパキっと抜けるところが欲しいって思って聴いていたけど、色々と試行錯誤していくうちに、音が図に見えてきたんだよね。音が、形になって見えてくるというか……。」

江島「映像みたいな感じか。」

山口「うん。自分の好きな "いびつさ" というか……。それを見つける事ができた瞬間に、音が形として見えて、音を記憶する事ができるようになってきましたね。」

江島「音を記憶するってことは、音を覚えているってこと?」

山口「そう。一回聞いた音だったり、好きな音の感覚を覚えられるというか……。だから、生楽器の音と生じゃない音があるわけじゃないですか。ローズ(Rhodes)って楽器も、生で弾くのと打ち込みでは音が違うわけだし。その生と偽物の違いを聴き分ける事ができるようになってくるとかね。そういう力もついてくるようになるのではないかなと思います。」

江島「はい。」


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山口「副担任の江島先生、今回は3週に渡って登場してくれましたね。」

江島「早かったです。あっという間。」

山口「ラジオ、聴いた?」

江島「……聴いたよ!」

山口「……聴いてないな、お前(笑)。聴けよ! 自分が授業やってるんだからさ!」

江島「うん。録音する!」

山口「録音して、EQするんでしょ(笑)。」

江島「うん!録音して、自分の声が聴きやすいようにする(笑)。鼻詰まりが治っているようにする!」

山口「ははは(笑)。そういうこともできるかもしれないね。ちなみに、サカナクションは今どんな状況ですか?」

江島「今は、レコーディング中です。」

山口「ずっと、レコーディング中ですよ。」

江島「年中やってますね〜。」

山口「見て、この髭(笑)。」

江島「あ、生えてる〜。」

山口「験担ぎなんですけどね。」

江島「あ、それ、わざとなの?」

山口「そう。ミュージックの歌詞ができたときも、伸びていたんですよ。」

江島「伸びてたね。」

山口「歌詞ができたら剃るって決めていてね。今回は、今CMになっている曲ができたときに、この髭も剃ろうと思っていたんですけど、剃ろうと思っていたその日に、ビクターから、次の曲の話が来てね。」

江島「また作れ、と。」

山口「そう。スケジュールが詰められて、剃る暇が無かったんですよ。そして、2曲目に突入してますから。」

江島「じゃあ、今は2曲分の髭の長さってことか!(笑)」

山口「ひょっとしたら、次に会うときには亀仙人みたいになってるかもしれない(笑)。」

江島「なってるかもしれないね〜! その頃には何曲できているんだってことですね。」

山口「……とまあ、こんな風に、ビクターdisを軽く挟んだところでね(笑)。サカナクションは、また1月からツアーが始まりますけど、頑張っていきたいと思っています!……ということで、今回の授業はここまで!音で学ぶ、音を学ぶ、音に学ぶ、音学の授業、サカナクションの山口一郎と、」

江島「副担任の、江島啓一でした。」

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