リマスタリングとハイレゾ (w/サカナクション ディレクター 遠藤大輔)

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山口「はい、授業を始めますから席に着いて下さい。マンガを読んでいる生徒は、マンガをしまいなさい。Twitterを開いている生徒は、Twitterを閉じなさい。授業が始まりますよ。……先生な、歌詞が書けなさ過ぎて、ついにそのタイアップの中枢の人とタイマンで飲んだぞ(笑)。中枢の人とタイマンで飲んで話したら、その脚本を書くのも半年くらい締め切りを延ばして書いたらしいから、『一郎君も書けない理由が分かるよ』ってすごい優しい言葉をかけてくれたので、ちょっと気持ちが楽になりました。だけど、なんか一郎先生が鬱病になったとか(笑)、っていう噂が飛び交っているらしいぞ。そんな事ないから、みんな安心しろよ。……先生、鬱病って言われてショックだったぞ(笑)。引きこもっているから、まあ…でも、まあ、どうなんだろうなー。いろんなところから、『一郎君、大丈夫?』みたいなメールがきていたのは、多分そのせいだな。」

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■ リリリ
リミックスとリマスタリングの違いが分かりません。アルバム発売もありますし、教えて!一郎先生!!
さいとうちゃん
女/17/新潟県




「このアルバムっていうのは、どちらの事を言っているんでしょうかね?以前、この授業の中でも紹介した、サカナクションの過去のアルバム6作品のハイレゾ音源が昨日から発売されています。『GO TO THE FUTURE』、『NIGHT FISHING』、『シンシロ』、『kikUUiki』、『Documentaly』、『sakanaction』の全6品。こちらは、オリジナルマスターを元に、リマスタリングが行なわれています。そして、3月25日には、『GO TO THE FUTURE』『NIGHT FISHING』『シンシロ』のアナログ盤……つまりレコード。それと、初期作品を持っていないリスナーのために、値段の安い、スペシャルプライス盤のCDがリリースされます。こちらも共に、レコード用とスペシャルプライス盤用にリマスタリングが行なわれています。今日は、その辺の所を説明していきたいと思います。」

サカナクションの過去6作品のハイレゾ音源化、アナログ盤、スペシャルプライス盤に関しての情報は[⇒コチラ]

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山口「さて、リマスタリングですが、簡単に言うと、マスタリングをやり直す事で、“リマスタリング(remastering)”と言います。以前、サカナLOCKS!でも軽く話した事はあったかもしれないんですけど。今回は、臨時講師として、サカナクションのディレクターであります……遠藤ちゃん(笑)。遠藤ちゃんと一緒にお話していきたいと思います。遠藤ちゃん、よろしくお願いします。」

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遠藤「よろしくお願いします。こんばんは、ビクターエンターテイメントの遠藤と申します。」

山口「あのね……緊張し過ぎ(笑)。ハハハ!」

遠藤「初登場ですよ、だって!」

山口「堅過ぎ。」

遠藤「今日はもう、ラジオなのに勉強してきましたもん。更に。」

山口「真面目すぎるわー(笑)。」

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ということで、今回はサカナクションのディレクターである、遠藤大輔さんを迎えての授業です。遠藤さんは、サカナクション4代目のディレクター。「グッドバイ」からディレクターを担当。音楽制作における “ディレクター” という仕事は、CDリリースまでの制作スケジュールの管理や、ジャケットのデザインをデザイナーとミュージシャンの間に入ってやり取りしたり、スタジオの予約を取ったり、楽曲を作る行程で様々なことを担当します。

山口「さて、サカナクションの過去6作品のハイレゾ音源が配信開始となりましたが。リマスタリング……じゃあ、まず、マスタリングって何なんですか?」

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遠藤「マスタリングっていうのは、例えば、アルバムを作る時。ミュージシャンがレコーディングした音源は、1曲ずつ作って行くので、その1曲1曲は微妙に音量も違うし、その作品になるまでには曲順も決まっていないし、曲間も決まってないし……それをまとめていって、最後に音量や音質、音圧だったりっていうのを最終調整していく作業が、オーソドックスなマスタリング作業になるかなと。」

山口「なるほど。要するに、作られたものを製品版としてまとめあげる作業がマスタリングってことですね。じゃあ、今回ハイレゾ音源が配信開始になって、リマスタリングを行なったと。さいとうちゃんっていう生徒が、えんどうちゃんに(笑)、リマスタリングって何なの?って聞いてるんですよ。これはどういう事かちょっと教えてください。」

遠藤「今回は、ハイレゾっていう、CDとは別の商品を作る上で、マスタリングをする前の段階の音の素材があるんですけど……」

山口「レコーディングしっぱなしってやつね。」

遠藤「はい。その、レコーディングしっぱなしの音源。これを、最終的にCDに収録するのではなく、配信で、ハイレゾと言われるCDよりもいっぱい情報量が入るものに仕上げていくために調整したっていうのが今回のリマスタリングかなと。」

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山口「つまり、作りっぱなしの音源だと、CDには入りきらないんだよね。例えば、CDっていうコップに、作ったままのジュースを入れても、溢れちゃうと。だから、僕らの場合は、作りっぱなしのジュースをCDっていうコップに入れるために濃縮するんだよね。そして入れるんだけど、今回のハイレゾ音源っていうのは、コップが大きいんだよね。」

遠藤「そうです。コップがもの凄く大きくなります。」

山口「そのコップがすごく大きいので、作ったまま入れられると。だけど、作ったまま入れると、何か支障が出る。なので、その作ったままのものを出せるように、更に加工すると。それをリマスタリングっていうことなんですね。」

遠藤「はい。」

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山口「じゃあ、CDにするためにマスタリングしているのとは、ちょっと違ったことをしたわけですね?」

遠藤「CDよりも、更に粒が細かくなっているので、CDだとちょっとザラザラと角が出るような所を、滑らかに聞こえるような形でいろいろと作業を加えました。」

山口「なるほどね。作ったままの状態だと、CDにも入らないくらい情報量があるのに、CDにするのはもったいないと。1回質を落とすのはもったいないから、ハイレゾっていうものでそのまま情報量が全部入っているもので出すっていう動きがあって。今回は、それに合うためにいろいろと音を滑らかにしたりとか、情報量が多いなりによく聞こえるような加工をマスタリングで施したのがリマスタリングっていう。」

遠藤「そうですね。過去の音源を、より違う解釈で再発見するというテーマを元に、商品を増やしてみようと。」

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山口「でも、みんなそうしているってことだよね?メーカーの動きとして、CDが売れなくなってきたと。だけど、そこでもう一個商品を増やそうというところでハイレゾっていうものの動きができているってことだよね。」

遠藤「そうですね。」

山口「商品を増やす事で、メーカーの生き残り戦略と(笑)。……っていうことにしているわけですね。」

遠藤「そうですねー、はい。」

山口「でも、先生からすると、そのハイレゾ音源っていうのは情報量が多いから音が良いしさ、作ったままで聞いてもらえるのは良いと思うんだけど、ハイレゾを聴くための再生プレーヤーと、ヘッドホンが必要だったりするわけじゃん。……それは問題だな。」

遠藤「そうなんですよ。まだまだそこは、発展途上な所がハイレゾの業界にはあって。まだ、大人なオーディオが好きな方だったりとか、より良い音で聴きたいっていうお客さんが多いんですけど。サカナクションがハイレゾ配信する事で、少しでも興味を持って……圧縮音源を聴きたいってお客さんがいれば、そこで手に入れてもらえばいいし、少しでも良い音で聴きたいなっていう人は、ハイレゾの音を買って聴いてもらえたらなと。」

山口「まあ、用意しておく事が大事ってことでしょう?」

遠藤「そうですね。」

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山口「なるほどね。生徒諸君はBlu-rayで映画を見たりしているでしょ?もともと、生徒諸君は知らないかもしれないけど、先生たちの時代はVHSでしたからね。」

遠藤「ビデオテープでしたね。」

山口「だから、そういう風に時代はテクノロジーの進化によって、聴かれ方や見られ方が変わっていく中で、ハイレゾっていうのは未来のひとつのフォーマットになるのかもしれないということで。」

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山口「そして、お求めやすい価格のスペシャルプライスCD。こちらもCDという形で、リリース形態は過去といっしょだけども、リマスタリングしていると。」

遠藤「はい。スペシャルプライス盤は、もうCDとしては変わらないフォーマットというか……」

山口「(音源を入れる形態の)箱の大きさは同じなので。」

遠藤「はい。箱の大きさは同じなので、これをどういう風に新しいものとして提案できるかなっていうことで、新しいクリエイターの方とコラボレーションするっていう。」

山口「なるほどね、“箱に詰める人を変える” っていう。今まで詰めていた人ではなくて、そこにまた更に違った形で詰め直してくれる人が入れたんですよっていうのがリマスタリングだね。」

遠藤「はい。っていうのだと、今回リリースする意味合いっていうのか、新しい発見に繋がるんじゃないかと。」

山口「ちなみに、どなたが今回はリマスタリングしてくれたの?」

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遠藤「アメリカの超有名なマスタリングエンジニアで。マドンナ、グリーン・デイ、ノラ・ジョーンズだったりっていう大物を手がけている、テッド・ジェンセン (Ted Jensen)っていう有名なマスタリングエンジニアの方にお願いして。基本的には、テッド・ジェンセンの思うままに生まれ変わった初期の3作品のスペシャルプライス盤です。」

山口「じゃあ、あれだね。過去の3作品を持っている人も、更に聞き応えのあるスペシャルプライス盤ってことですね。」

遠藤「そうですね。」

山口「つまり、さいとうちゃんが疑問に思っていたリマスタリングっていうのは、音を詰める箱を変える時にする作業。それがリマスタリング。で、リミックスは、元々ある曲を参考に、違う曲を作る。っていうのがリミックスだね。っていうところで、さいとうちゃんの疑問は晴れたと。」

遠藤「……はい。」

山口「……大丈夫か、遠藤ちゃん(笑)。」

遠藤「はい(笑)。」

山口「遠藤ちゃんね、なんか、説明カタいわ!(笑)『提案させていただく……』とか、ちょっと。生徒諸君はガチってなっちゃうよ(笑)」

遠藤「あー。硬くなりますよね。」

ということで今回の授業は、そろそろ終了の時間です。

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山口「こういう風に、リミックスとかリマスタリングとか、こういったものを生徒諸君が知っていたら他の友達に説明できるような業界用語を、遠藤ちゃんといっしょに説明できたかなと思います。これから先生とかが新しい音楽を発売する時には、『マスタリングは〜〜が行ないました』とか『ミックスは誰がしました』とか、そういうところも音楽を楽しむ要素の一つとして捉えてもらえるようになったら、先生は嬉しいなと思っております。ということで、臨時講師の遠藤先生、ありがとうございました。」

遠藤「はい、ありがとうございました。」

山口「そして、The SALOVERSが活動休止ということで。……先生、ちょっとびっくりしましたけど。新しいアルバムも本当に素晴らしいし。……もっと、先生、続けて欲しかったな。でも、音楽から離れるわけじゃないだろうしね。……っていうか、今度飲みに行きたい。古館君とは連絡先を交換したんで、ちょっと連絡する。メールするわ。カメラマンの奥山君。ジャケットとかやっている、奥山君とも知り合ったので。3人で飲みに行きましょう。」

(最後は、この日の生放送教室に登場していたThe SALOVERSのメンバーに向けた、一郎先生からのメッセージでした。)

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